タイヤはクルマの命綱なだけに見た目で選ぶのはダメ! とりわけ選択肢の多いクロカン4WD車のタイヤ選びの正解とは

2024.11.06 10:00
この記事をまとめると
■クロカン4WDには走る路面に合わせたタイヤがいくつか用意されている
■1980年代にはクロカン4WDを街なかで走らせたいユーザーが増えた
■用途に応じたタイプのタイヤをセレクトすることが肝要だ
大径でゴツいブロックパターンのタイヤだけじゃない
  セダン型、あるいはミニバン型の乗用車を所有している人はあまり知らない、気にしていないかもしれないが、クロスカントリー(以下クロカン)型4WDのタイヤには、じつはいくつかのタイプがある。注意して見たことはないと思うが、だいたいどれも大径でごついブロックパターンのタイヤ、というような印象をおもちではないかと思う。
  実際には、クロカン4WDのタイヤも、通常の乗用車用タイヤと同じように、主に走る路面のタイプに合わせ、オールテレーン、マッドテレーン、ハイウェイテレーンとわけられている。ちなみに「テレーン=Terrain」とは、直訳すると「地形」のことで、4WDタイヤの場合には、路面の状態を指している、と考えてよい。
  ところで、本来は不整地路走行を主眼に作られたクロカン4WDを、あえて街なかでふだんの足に使うという風潮が1980年代に生まれていた。ワイルドな雰囲気のクロカン4WDを街なかで走らせることがカッコいい、という価値観だ。
  発端は三菱パジェロ。もともとは商業ナンバー仕様の質素な4WDとして企画されたモデルだったが、ワイルドな雰囲気のクロカン4WDを日常の足として使うところにファッション性を見いだした人たちが、「アーバン4WD」という新たな使い方を確立させた。
  いいかえれば、本質的には荒れた不整地を難なく走破できるように作られたクルマを、平坦で滑らかな舗装路面を主体に走らせたい、使いたいというユーザー層の誕生である。
  ところが、実際こうした使い方をしてみると、車両の各部に少なからずミスマッチングが生じていた。細かくいえば、エンジンの特性、ミッションのギヤリング、ストロークも含めたサスペンションセッティング、タイヤの適合性などで、本来は低速走行で不整地を走破することを目的としたクロカン4WDが、高速走行で平坦な舗装路面を主体に使われるわけだから、不都合が生じるのは当然のことだった。
使用状況に合わせたタイヤのチョイスが望ましい
  こうしたミスマッチングの要素のなかで、もっとも簡単に修正できる要素が装着タイヤの変更だった。クロカン4WDは、荒れた不整地を走破するのに適したタイヤが装着されるケースが多い。こうした路面に対しては、トレッドブロックのゴツゴツした不整地用のパターンをもつタイヤが適している(初代パジェロは、小型トラックなどで使われるリブラグパターンのタイヤを装着)。
  もちろん、舗装路も走れるが、舗装路主体、あるいは高速道路走行まで考えると、ゴツゴツしたトレッドブロックのタイヤより、路面との設地面積が大きく平坦なトレッド面、排水性能を考慮した縦方向の溝、というパターンが合っている。舗装路では、こうしたパターンのほうが、乗り心地がフラットで静か、舗装路を安定して走ることができるからだ。
  クロカン4WD用のタイヤとして、舗装路、それも高速道路での使用を主体に作られたものがハイウェイテレーンと呼ばれる仕様だ。舗装路のなかでも、連続した高速走行を主眼に置いたタイヤ作りになっている。逆に、不整地、あるいは泥濘路での走破性に主眼を置いた仕様がマッドテレーンだ。
  ハイウェイテレーンが不整地や泥濘路、マッドテレーンが舗装路や高速道路をまったく走れないわけではなく、どちらもそれなりに走破することはできるが、適合路面の向き、不向きでいえば、その性格は明らかだ。
  一方、せっかくのクロカン4WD、高速道路から荒れた不整地までまんべんなく走れる性能のタイヤがほしい、というユーザーに応えた仕様がオールテレーンだ。どの路面コンディションでもそれなりに走ることはできるが、逆にいえば、ピタリと適した路面コンディションはなく、とりあえずどんな路面でも無難に走ることができる、というオールラウンダータイプだ。
  ユーザーとしては、自分の用途に応じたタイプを選ぶことが最善の選択肢だが、その前に、装着するクルマがクロカン4WDということを再認識しよう。クロカン4WDは、荒れた不整地や泥濘路を走り抜けるために作られた車両で、本来の駆動パターンはパートタイム4WD方式だ。
  この方式は、ふだん(負荷の低い路面、平坦な舗装路など)の走行では2WD(ほぼFR方式)を選択し、タイヤの接地状態が不安定な不整地、あるいは路面μが低くなる泥濘路や積雪路で、安定した走破力を得るため4WDに切り替える方式だ。4WDは前後直結の駆動方式となり、4WD方式のなかでも最大の駆動力を発揮する。
  それだけに「走る」だけなら、路面状態にかかわらず「力業」で走り抜けることも可能だが、一歩間違えるとアクシデントにつながる可能性が高い。「走る」は4WDのトラクション性能によってなんとかなるが、「曲がる」「止まる」はタイヤの性能に依存するからだ。タイヤ選びの際に、このことを忘れないでほしい。

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