ハイテクなぶん普通の旧車より難しい! NISMOが頑張る「第二世代GT-R」でさえ乗り続けることが難しい時代がきていた

2024.10.19 17:20
この記事をまとめると
■第2世代GT-Rの一部パーツは復刻され再販されている
■すべてのパーツはカバーできておらず経年劣化による故障も目立っている
■パーツの問題や維持管理の観点からクルマとの向き合い方を考えるフェーズになっている
第2世代GT-Rに乗り続けることは次第に困難になっている
NISMOヘリテージによって長く維持するための体制は強化されたが……
  日本の自動車メーカーが直接リビルト・リフレッシュ事業を手がける数少ない車種が第2世代GT-R(R32/R33/R34型スカイラインGT-R)だ。2017年12月、日産/NISMO/ニスモカーズの協業による純正部品の再供給「NISMOヘリテージ」がその始まりで、2024年現在までに350点以上におよぶ部品が復刻された。さらに、リプレイス品(日産純正部品の図面をもとに限りなく純正に近い状態で再生産したもの)の開発・販売、一部部品の修理などその枠も広がっている。復刻部品以外で今手に入る純正部品についてもNISMOがサプライヤーに継続生産を懇願するなど、長く乗り続けるための環境改善は年々進み、1990年代に製造された同年代他車種と比べるとそのサポート体制はかなり恵まれている。
「じゃあ、これからも第2世代GT-Rに安心して乗り続けることができますね!」と問われたら、「どちらともいえない」と答える。その理由は3つある。
  まずひとつめはヘリテージパーツを含む純正部品のたび重なる高騰。供給が続いていることに感謝はすべきだが、その価格は目玉が飛び出るほど高いものが多い。10年前なら庶民でもなんとか維持できたが、いまではかなりの経済的な余裕が必要だ。そのため、多くのオーナーが保管モードに移行しているのも無理はない。また、リフレッシュ作業をするなら今が一番安上がりだ。
すべての純正部品を復刻することが難しい理由とは
  ふたつめは、すべての部品が補われているわけではない点だ。「だったら、どんどん復刻すればいいじゃないか」といいたくなる気もちもわかるが、現実はそれほど簡単ではない。製造数は現行車として継続生産されていた当時と比べて当然少なくなるし、一度製造廃止された部品を復刻する場合、ひとつでも構成部品が変われば部品番号が新しくなり、その場合は、日産社内基準に基づく試験を受ける必要がある。これにより製造コストが大きく上昇し、やむなく再販を諦めざるを得ないケースもある。
  経年劣化により樹脂のタンクにクラックが入り、ガソリン漏れを起こす個体が増加しているR32GT-Rのガソリンタンクを例に挙げると、復刻するには型を作るだけでなく衝突安全基準のテストを受ける必要があるため、手が届く販売価格に抑えられないのが理由だ。現在は複数のショップが独自に補修して対処しているが、修理依頼が多すぎて追いつかない状況だという。
高価な修理をしても完全に蘇る可能性は高くない
経年劣化による電装系部品のトラブルがこれから続発する可能性大
  3つ目は、1980年代以降のクルマのすべてに起こりうる電装系の不具合だ。それ以前のキャブレター車では、電気系統はキーシリンダー、ヘッドライト、テールランプ、バッテリーケーブル、メーター程度で、配線は現代のクルマに比べると少なかった。そのため、配線の引き直しも思ったほど手間はかからなかった。
  しかし、1980年代以降はコンピューター制御のオンパレード。皆さんご存じのとおり、機械物の寿命は永遠ではなく、経年劣化は避けられない。車内は気温や湿度などの変化も大きく電子製品にとっては劣悪な環境だ。第2世代GT-Rも、発売から20年以上経過しているため、いつ壊れてもおかしくない状況にある。
  実際、各ユニットの基板部分にトラブルが発生し、突如機能が停止したり、動くのだけど何となく調子が悪いというケースが激増している。しかも、電気系の傷みは目に見えないため、トラブルシューティングに時間がかかるのが厄介な点だ。ただし、そうした基板の修復には専門業者が存在し、リペアできる可能性は残されている。
  第2世代GT-Rの電子デバイスのなかでもユーザーから不安視されているのが、R33/R34に採用されたアクティブLSDだ。これは、ドライバーの操作や走行条件に合わせて左右の駆動バランスを最適化し、従来の機械式LSDのような癖もなくどんな場面でもスムースな走りを実現するシステム。
  しかし、経年劣化によりそのバリアブルな機能が低下し、トラクションを得る役割を果たせなくなっているものが増えている。
本来の性能をフルに発揮できる個体はほぼないため楽しみ方も変化
  一般道を普通に走るだけなら大きな問題はないが、スポーツ走行を楽しむオーナーにとって深刻な問題だ。しかも、構成部品はベアリングを除き製造廃止。標準モデルのデフへの交換もできるが、新品はなく、中古も価格高騰の影響もあり、部品単体で出てくることは皆無だ。荒業としてタマ数の豊富なR32用のデフを流用することも不可能ではないが、施工は一部ショップに限られるため一般的ではない。
  もうひとつのR33/R34特有の電動デバイスである電動スーパーハイキャスも不具合が出始めている。R34については昨年までは新品の本体ユニットが購入可能だったが、その価格は80万円を超える金額だった。しかし、このシステムを放置すると予期せぬ動きをして危険なため、安価なハイキャスレスを選択する人が多いという。
  こうした問題を踏まえると、第2世代GT-Rに乗り続けることは現状なんとか可能だが、本来の性能をフルに引き出すのは困難になってきている。また、一般的なディーラーでは修理対応が困難になっているのは否めない。それでも、GT-Rを所有することの満足度は高い。長く乗り続けたいなら、クルマと過ごす時間を楽しむスタイルがこれからの正しい付き合い方だろう。GT-Rへの愛が、試されている。

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