この記事をまとめると
■ランボルギーニ・レヴエルトのコーンズ第1号車納車式が「THE MAGARIGAWA CLUB」にて開催
■ハイブリッドによるフラットトルクでどこを走っても速く楽しめるクルマに仕上げられている
■16歳の春雲アイレ選手によるとレヴエルトはパワーも凄いけど乗りやすくて「最高」だとか
純白のランボルギーニ・レヴエルトがマガリガワを走る
2024年9月3日、千葉県・南房総の会員制プライベートドライビングクラブ、「THE MAGARIGAWA CLUB」で、純白のランボルギーニ・レヴエルト、コーンズ取り扱い1号車の納車式が実施された。オーナーはハーレーダビッドソン用バックギヤやトライサイクルユニットの製造を営む有限会社萬羽の代表取締役、萬羽一郎氏、62歳である。
普段はハーレーやそれを取り巻くライダーたちをこよなく愛する萬羽氏だが、プライベートではスーパーカー、とりわけランボルギーニの大ファンで、すでにランボルギーニばかり9台乗り継いでいる愛車家だ。しかもクルマを速く走らせることにかける情熱も半端ではない。最近もドライビングテクニック向上のためにFIA-F4を購入して、富士スピードウェイや、THE MAGARIGAWA CLUBで積極的に走り込んでいるという。
納車式当日はあいにくの雨模様ではあったが、納車式が終わると同時に待ちきれなかった愛車との対面を終え、颯爽とコースインしていく萬羽氏と、目を輝かせながらレヴエルトの走りを見守る16歳の現役レーサー、春雲(ハルウン)アイレ選手の姿があった。
春雲アイレ選手は日本生まれスペイン育ちのクォーターで、現在は欧州カートレースを中心に世界各国を飛びまわりつつ、F1という将来の夢に向けて、フォーミュラーカーで練習走行を繰り返す若者だ。頭のなかは常にモータースポーツ一色というほど、オンボードカメラ映像やレース動画を見続け、フィジカルトレーニングやシミュレーターに励む好青年だ。
萬羽氏とアイレ選手は、たまたま富士スピードウェイのピットで知り合っただけの関係ではあったが、同じFIA-F4で走るアイレ選手の飛び抜けた才能を、2輪レースの世界にも詳しい萬羽氏は見逃さなかった。
「今度、MAGARIGAWAで一緒に練習しないかい?」と萬羽氏のほうからアイレ選手に声をかけ、会員制クラブのゲストとして招待したのだという。
ランボルギーニ・レヴエルトは、ランボルギーニ社最新のフラッグシップ車両として注目を集める1台で、プラグイン・ハイブリッド化で大胆な電動化に成功している12気筒マシンだ。すでに多くの自動車専門誌でジャーナリストたちのインプレッションが掲載されているので、車両の詳細なスペックはそちらをご参考頂くとして、萬羽氏の国内登録1号車をドライブしたTHE MAGARIGAWA CLUBのドライビングインストラクター、渋谷 崇氏のファーストインプレッションをお届けしよう。
「レヴエルトはランボルギーニのフラッグシップとしては初のスポーツハイブリッドということで、V12+モーターで1000馬力オーバーを発揮するというところが特長のひとつです。それでいながら今回はあえてEVモードでも走ってみましたが、コースを丸々1周一般道以上のペースで走ることができました。パフォーマンスがありながら、家を出るときや帰宅時にモーターで静かに走れるのは大きな魅力となる方も多いと思います」
「乗ってみた印象としては、アヴェンタドールから続くカーボンモノコックの剛性の高さ、しっかりと足まわりが動く乗り心地のよさ、DCTとなったシフトフィールのよさが印象的でした。タイヤがサーキットスペックというより街乗りもこなせるスポーツタイヤを装着していますので、絶対的なグリップ力というよりは、こういう雨のなかでも安心して長距離が楽しめるようなGTカーの要素も含まれていますので、どんな天候でも安心して速く快適に走れるクルマだという印象がありました」
「やはりハイブリッドなので、モーターのトルクが低速からグッと出てくるところがエンジン回転を補っている部分もあり、逆にいうとフラットトルクで、どこからアクセルを踏み込んでいっても力強く走れるところは道を選ばないですし、高速の合流、山道やサーキット等のアップダウンの激しいところでもストレスなく加速していけるパフォーマンスがありますね」
「タイヤに関していうと、サーキットに特化した仕様のタイヤですと、ドライグリップは非常に高いのですが、雨の日はどうしても滑りやすくなるし、ピーキーな部分が出たりすることを考えると、このタイヤのキャラクターはコントロール性も高く、とても乗りやすいですね」
「リヤはエンジンの駆動で、フロントがモーターによる駆動という住み分けをしているのですが、このコースを走った印象でいうと、リヤが滑ってもフロントがしっかりと加速で引っ張ってくれるし、逆にこんな355の幅広タイヤなのに、リヤが滑っても挙動がすごく穏やかで、アクセルコントロールもしやすい印象がありました」
「もちろんバッテリーを搭載しているから車重も重いのでサーキットで1番を獲るという速さを求めるより、どこを走っても速く楽しめる、そういったクルマだなという印象がありました」
こういったハイパフォーマンス車両を走らせる場合、公道では十分にパフォーマンスを引き出して楽しむことは難しいので、クローズドコースでアクセルを踏み込んだ際の伸びのある加速やモーターアシスト、最高速度やブレーキング時の安定感を含め、サーキットのように周囲の目やプレッシャーを気にすることなくマイペースで走らせられる楽しみも、会員制コースの魅力として選択肢のひとつだと思います」
もちろんまだ慣らし運転のため、全開インプレッションというわけではないことを付け加えておこう。
16歳のドライブでマガリガワを躍動するレヴエルト
渋谷インストラクターがレヴエルトでの走行を終えてピットに戻ってくると、FIA-F4車両で練習していたアイレ選手に向かって、おもむろに萬羽氏が「乗りたいでしょう? 走ってきていいよ」と声をかけた!「え、本当ですか!?」と驚くアイレ選手。
16歳レーサーが1015馬力のランボルギーニ・レヴエルト(ちなみに、車両本体価格6543万円!)を駆ってサーキットを走る姿が見られるとは思いもよらなかったが、アイレ選手の才能を信じて、「これも経験のひとつでしょう」と萬羽氏がチャンスを与えてくれたのだ。(※その模様は映像でご覧ください)
「私にとってハーレーは乗るだけではなく仲間づくり。ハーレーに携わるオートバイ屋さんもあるし、カスタム屋さんや修理屋さんもあるし、いろいろな方々とお付き合いさせて頂くなかで、人間関係を築いていく、楽しめる道具がハーレーで、まさにハーレーという存在は自分を表現する道具ですよね」
「じつは17歳のときに事故ったバイクを買って修理して、上野で売ってたんですよ(笑)。父親がハーレーを買って、試行錯誤しながら直していて、同じ屋根の下で自分は400ccのバイクを直して……。熱帯魚屋を営んでいた父親と一緒に、新たにハーレー屋を始めたのは自然な流れでしたね。ハーレーが好きだったからね。でも父親が商売下手で行き詰まってしまい、自分が跡を継いだのですが、いろいろ親子の葛藤もあって、私が独立してバックギヤの部品販売業に専念し、いまに至っております。
「ランボルギーニに乗ろうと思ったきっかけは、通勤路の環七に、ランボルギーニ江戸川さんがあったんです。そこを毎日のように通っていたのですが、やはりどうしても欲しくなって、買っちゃいました。ガヤルドのクーペ。それからガヤルド・スパイダー、ウラカン、アヴェンタドール・ピレリエディション、アヴェンタドールのS、SVJと乗り継いで、ウラカンSTO、そして今回のレヴエルトですね。ずっと浮気せずランボルギーニです」
「カミさんには、萬羽の名のごとく、萬の羽でお金が飛んでっちゃうよね! と笑われています。ランボルギーニは販売体制が変わり、本当にユーザーのケアが素晴らしく、お客さんの心をくすぐるようなケアが、自分の商売にも役に立っていますね」
「フォーミュラはマガリガワの会員さんがもっていたF3に座らせてもらったのが最初ですが、その瞬間にこれだ! と思って購入しました。でもインストラクターの先生から、いきなりF3は危ないからせめてF4にしなさいとアドバイスされ、いまは自分なりにその意味が理解できました」
「たまたまフォーミュラの練習でアイレ君に出逢ったのですが、彼の魅力や人間性、そしてお父さんの人間性が素晴らしく、アイレ君の才能にも驚かされました。走りが別格ですよね。これからも彼の将来を見続けたいので、何かのきっかけになるのかなという想いでレヴエルトにも乗せてみました。まるで息子のような存在で、いろいろ成長ぶりが楽しみです」と眼鏡の奥の優しい瞳を見せながら、萬羽さんは語ってくれた。
THE MAGARIGAWA CLUBを1000馬力オーバーのレヴェルトを駆って走ったアイレ選手だが、4輪車両の運転は13歳の頃からスペインのサーキットで教わっていたので、車両感覚等の問題はなく、ドライビングに関しては渋谷インストラクターのお墨付きだ(ただ傍らで見守る父親の気持ちは、雨の中、超高額車両、しかも新車のクラッシュだけは避けて欲しいと祈っていたに違いない)。
そんな父親の心配をよそに、無事にコースを走り終えたアイレ選手は、走行前よりも生き生きとした表情で頬を紅潮させながら「萬羽さん、ありがとうございました!このクルマ、最高でした! パワーも凄いけど乗りやすいし、限界の手前でちゃんと自制してしっかりブレーキを踏んでセーフティマージンをもって走らせましたが、人生にこんな楽しい、素晴らしいクルマがあるなんて! THE MAGARIGAWA CLUBさんにも大感謝です!」と笑顔で語った。
■春雲アイレ選手のプロフィール:2008年2月5日生まれ(16歳)。身長178cm、体重65kg、日本で産まれ3歳でレンタルカートを体験し、11歳で本格的にカートレースへデビュー。スペインと日本を行き来しながらレースに参戦し、スペインでのレース実績が認められ4輪の国際C級ライセンスを取得。今年11月にはカートレースの締めくくりとして世界カート選手権ワールドファイナルに参戦を予定。
■渋谷 崇インストラクターのプロフィール:1974年12月28日生まれ、レーシングドライバー兼インストラクター。1998年にFJ1600でレースデビュー。JAF-F4や海外フォーミュラ・ルノーでチャンピオンを獲得するなど活躍後、スーパー耐久シリーズに参戦。その豊富なレース経験を生かした論理的な指導を特長とし、THE MAGARIGAWA CLUBのドライビングインストラクターを務めるほか、多数のイベントの企画・運営も手がける。