この記事をまとめると
■愛車の整備を自分でしてみようという流れは愛車を深く知るよい機会なので推奨したい
■オイル交換・バッテリー交換・ホイール脱着はセルフメンテの初歩だが注意点もある
■初めてセルフメンテに挑戦するときは経験者の指導のもとで行うのが間違いない
セルフメンテナンスにブームの兆し?
不況が囁かれる昨今、少しでもおこづかいの減少を抑えるため、自分で愛車のメンテナンスをしてみようかな、なんて思い立ったという人も少なくないでしょう。
昨今はYouTubeなどの動画配信サービスで初心者向けのメンテナンス講座や、初心者によるやってみた系の動画が多く観られるようになったので、その傾向に拍車がかかっているようにも見受けられます。
自分でメンテナンスをしてみようという流れは、愛車のことを深く知るよい機会なので、大いに推奨したいと思います。
ただ、クルマのメンテナンスには、安易に考えて不用意にやってしまうと、ちょっとイタい勉強代を支払わなくてはならない可能性があるので注意が必要です。
ここでは、不用意にセルフメンテを行って、思わぬダメージを受けてしまわないように注意すべきポイントをいくつか紹介していきますので、メンテナンスの際の参考にしてください。
●オイル交換に潜む悲劇の例
オイル交換はセルフメンテのなかではトライしてみようと思う人がもっとも多い作業ではないでしょうか。
そのため、カー用品店や動画配信サービスでも活発に作業を勧めているのをよく見かけます。その影響でビギナーにもできるイージーな作業という印象を持って挑戦するケースが多いように感じますが、相手はエンジンという機械なので、間違った方法で作業をすると、エンジンを壊す原因になるとともに怪我を招くこともあるので注意が必要です。
もっとも多いダメージは火傷でしょうか。
エンジンオイルは粘度が高い液体なので、キッチリ抜き取るために暖機をしましょうとガイドするケースが多いと思います。ちょっとした暖機でエンジン内部は100度以上になり、オイルもそれよりちょっと低いくらいの温度になっています。
エンジンの底のオイルドレンボルトを緩めてオイルを抜き取りますが、オイルがどんな具合に流れ出るかをしっかり把握できずにボルトを抜き取ると、まだボルトを持った手が真下にあるときに100度近いオイルがジャバッと噴きかかります。
このときに軍手で作業していると、熱いオイルが軍手に含まれて火傷は避けられないでしょう。
もしそうなった場合は、すぐに軍手を外して冷たい水で冷やしましょう。
また、副次的なトラブルとして、オイルが吹き出る方向が真下だと想定して小さめの容器で受けようとしているケースも少なくないと思いますが、流れ出るオイルというのは意外と強い勢いで出てくるので、少し斜めに出てくることがあり、床にオイルをブチ撒けてしまうという惨事もよく聞きます。
ちなみにエンジンを壊しかねない間違いというのは、注入時にキリがいいからと規定量よりも多く入れてしまうケースです。量にもよりますが、入れすぎはエンジン内部の圧力異常を招き、部品を破損させてしまう恐れがあるので注意してください。極端な話、入れ過ぎより足りないほうがマシだという見解が多いです。
●バッテリー交換に潜む悲劇の例
バッテリー交換を自身で行うというケースは、ひと昔前まではそれほど多くはないという認識でしたが、性能のいい新しいタイプのバッテリーが出てきたことや、動画主導でDIYを勧める流れの増加などで、以前より自分で行うというケースが増えている印象です。
そのため、以前より交換時のトラブルも増えていると感じます。具体的にはやはりショートによるダメージです。
乗用車のバッテリー電圧は12V前後が主流です。家庭用の100Vからすると「大したことない」と楽観視している人も少なくないと思いますが、ショート時の威力というのは放電能力によります。
クルマ用の鉛バッテリーの放電能力はかなり高いのです。いまどきは鉛バッテリーを使った金属の溶接をやってみたという動画が多く配信されているので、その威力のほどは想像できるでしょう。
ショートでよくあるケースは、端子のナットやボルトをスパナで緩めようとして、うっかり反対側の電極に触れてしまうパターンでしょう。
パチッとショックを感じてすぐ分断できればまだマシですが、触れたまま放置するとスパナやバッテリーが熱を持って危険な状態になってしまいます。最悪、火災を招くので、すぐに分断しましょう。
ちなみにパチッで済んだ場合はそれほどバッテリーのダメージは大きくないので、そのまま使って差し支えないと思います。
走行に関わる部分だけに最新の注意をはらいたいホイールの脱着
●ホイール脱着に潜む悲劇の例
ホイールの脱着時にも、いろいろ気をつけていただきたいポイントがありますが、ここではよくあるトラブルのケースを紹介します。
その1)あわやクルマの下敷きに!
ホイールの脱着をする場合はタイヤを浮かすためにジャッキアップが必須です。このジャッキアップのやり方がまずいと思わぬトラブルを招くので注意してください。
初めてジャッキアップを行うときに迷うのがどの場所をもち上げたらいいかということだと思います。この場所選びをを失敗すると、ジャッキが外れて車体が落下してしまい、大怪我を招いてしまうことがあるんです。
その場所については各車両ごとに異なるので、ここでは省きますが、車体を揺すっても確実に脱落しないポイントを見極めることが重要です。そして、車体に力が掛かるような作業をする場合は、ジャッキだけでなく必ず「ウマ」という台で支えるようにしましょう。
その2)ハブボルトが折れてホイールが脱落!?
ホイール脱着で起こり得るトラブルをもうひとつ紹介しておきます。それは交換後の走行でそのホイールが脱落してしまうケースです。正直、めったに起こることではありませんが、起こってしまったら大きな事故に繋がる可能性が高いので、交換を行うときには意識してほしい内容です。
ホイールが脱落してしまう原因は、ホイールナットの締め込み方が合っていないというのが多くを占めると思います。ホイールナットは緩くても締め込みすぎてもダメです。
締め込みが緩いと走行の荷重や振動で緩みが進み、最終的に外れてしまいます。一方で、締め込みすぎるとハブボルトが伸びてしまいます。伸びた状態で走行による力が加わると、破断する可能性があります。
「外れたのが一本だけならまだ3(または4)本あるから大丈夫でしょ」という考えがあるかもしれませんが、4本で支えていたところ1本が外れると、中心がズレた三角形で支える状態になります。そうなるとホイールに微妙なガタつきが生じ、それによってほかのナットが徐々に緩む可能性がグッと高くなってしまいます。すぐに脱落はしませんが、振動が出たりして、放置すると最後には脱落してしまいます。
高速道路でそれが生じると、車体のコントロールができなくなって事故を起こしてしまう可能性が高いでしょう。外れた車輪でほかの車両や道路の設備に損害を与える可能性も考えられます。
速度が遅いとダメージは少ないと考えがちですが、状況によっては歩行者に損害を与えかねません。
そうならないようにホイールナットを適正なトルクで締め込むにはどうするかですが、自力で行いたいならトルクレンチという、締め込むトルクを教えてくれる工具を使いましょう。
わざわざ専用工具を購入したくないということなら、締め込みすぎないように注意して自分で締め込んでから、なるべく近くのガソリンスタンドやタイヤ専門店など、整備のプロがいるところで締め込みだけお願いしましょう。
自信がない場合は最初からショップに任せたほうがいいかもしれません。
以上、DIYでの整備で起こり得るトラブルについて紹介しました。クルマの整備は方法を間違うと事故を招く恐れがあるため、注意喚起的な内容になってしまいましたが、自身で整備を行うと愛車の状態や構造を知ることができるので、その面ではぜひ行ってほしいとも思っています。
初めて整備に挑戦するときは、経験者の指導のもとで行うのが間違いないでしょう。