超貴重なクルマがオークションに登場! イズデラ・インペレーター108iは実質300SLの後継車だった

2024.09.13 17:30
この記事をまとめると
■アメリカのモントレーカーウィークにイズデラ・インペレーター108iが出品された
■メルセデス・ベンツのコンセプトカー「CW311」をベースに生み出されたモデル
■残念ながら今回オークションでは落札する人物は現れなかった
2024年のモントレー・カー・ウィークに激レア車降臨
  毎年8月中旬に開催される世界的なクラシックカーの祭典といえば、それはアメリカのカリフォルニア州モントレーを中心に、いくつものイベントが行われる、モントレー・カー・ウィークだ。
  このモントレー・カー・ウイークでの楽しみのひとつが、大手のオークショネアが主催するオークション。各車ともに話題性に富む出品車を用意して、そのオークションは盛況のなかで終了したが、ここではRMサザビーズが出品した一台の希少モデルを紹介することにしよう。
  それを開発、そして生産したのはドイツのイズデラ社。かつて日本にも正規輸入代理店があったイズデラだが、その事実を知る者も現在では少なくなった。
  イズデラとは、ドイツ語で「Ingenieurbüro für Styling, DEsign und Racing」、スタイリング、デザイン、そしてレーシングのためのエンジニアリング・オフィスを意味する社名である。
  創始者であるエーベルハルト・シュルツは、エンジニア、またデザイナーとしてのキャリアをポルシェでスタートし、その後メルセデス・ベンツへと移籍。ここで300SLの後継車プロジェクトを立ち上げるものの、それはキャンセルされ、結果的にシュルツはライナー・ブッフマンが率いるbb社へと移籍。そこでCW311と呼ばれるコンセプトカーを生み出すことになったのだ。
  イズデラ社は、このCW311を市販することを目的に、1982年に設立された会社だ。ここでCW311のコンセプトをベースに誕生したのが、今回のRMサザビーズのモントレー・オークションに出品された「インペレーター108i」。
  当時としてはきわめて斬新なデザインのボディは、優秀なエアロダイナミクスのみならず、その素材にグラスファイバーを使用することで軽量化にも積極的な取り組みを見せたもの。ガルウイング式のドアは、いかにもそれが往年の300SLからの血統を受け継ぐモデルであるかのような印象を見る者に与えてくれた。
  ちなみにこのインペラター108iはトータルで30台が生産されているが、ボディデザインのディテールの違いで、それはシリーズ1とシリーズ2にわけられる。
かつて長らく日本にて保管されていた
  今回出品されたのは13台が生産されたシリーズ2で、その特徴はポップアップ式のヘッドライト(シリーズ1では固定式が採用されていた)を始め、フロントグリルの開口部がさらに拡大されたこと。フロントホイールアーチには通気孔が、ボンネット上にもNACAダクトがオフセットして採用されたことなどがある。
  エキゾーストのツインテールパイプも、右ホイールアーチ前方にそのレイアウトが変更されているが、これはプロトタイプのCW311と共通するフィニッシュになる。
  鋼管製のスペースフレームを構造体とするインペラター108iのミッドには、メルセデス・ベンツ製のM117型5リッターV型8気筒、M119型5LリッターV型8気筒、AMG製の6リッターV型8気筒などさまざまなパワーユニットが組み合わされたが、出品車に搭載されていたのは最高出力で約300馬力を発揮する、M119型。
  これに5速のZF製MTが組み合わされ後輪を駆動するのがパワートレインの概要だ。サスペンションは前後ともダブルウイッシュボーン形式となる。ブレーキももちろん4輪ディスク式だ。
  この車両は、1991年にイズデラから出荷されたあと、日本のカスタマーへと納車される。ドイツ車らしく魅力的な色合いを見せるシルバーのボディカラーに、リッチなブラックレザーの組み合わせは現在でもその魅力は大きく、長年日本に存在したあと、2016年にはイギリスで登録。さらにすぐにドイツの企業に売却されることになる。このときには部分的なレストアも行われ、さらにコンディションを高めた。
  現在のオーナーの手に収まったのは2021年のことで、同年9月にはさらにエアコンやブレーキなどの整備も行われた記録が残されている。参考までに現在までの走行距離はわずかに1912km。RMサザビーズは80万~100万ドルの予想落札価格を掲げオークションはスタートしたが、残念ながら今回はこのインペラター108iを落札する人物は現れなかった。
  0-100km/h加速で5秒フラット、最高速では283km/hをスペックシートに掲げた、このきわめて野心的なスーパースポーツ。その希少性を考えれば、その価値はこれからますます高まる傾向にあるのは間違いのないところだろう。

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