この記事をまとめると
■最近のクルマにおいて極端なローパワー車は少ない
■実用面で困るクルマは少ないが主に加速時に不満が目立つ
■ローパワーで困る場面をピックアップした
ローパワーすぎるのも問題
市販車のエンジンというのはハイパワー過ぎても使いどころがないため(公道ではアクセルをほとんど踏めないため)イマイチなのだが、逆にローパワー過ぎても、それはそれで何かと不便であるゆえ、やはりイマイチではある。
とはいえ最近のローパワー車界(?)には、ふた昔前の軽自動車のような「……上り坂では30km/hぐらしか出ません!」みたいな車種はない。
そのため、ローパワーな車であってもさほど決定的な不便は感じないはずだが、以下のような限定されたシチュエーションにおいては、やはり「不便だ……もうちょいパワーのあるクルマにしとけばよかった」と痛感することもあるはず。
以下、そんな痛感シチュエーションをいくつか挙げてみよう。
●シチュエーション1:長い上り坂で、たまたま背後にヤカラ系ドライバーが来た
拙宅から某高速道路の入口へと向かう場合、途中でけっこう長く急な上り坂を走る必要がある。その際にも最近のローパワー車は、前述したとおり「30km/hぐらしか出ない!」なんてことはないため、まあまあ普通に坂を上ることはできる。
だがローパワーゆえに若干速度が落ちてしまうことは否めず、そしてその際にたまたま、おでこに「輩(ヤカラ)」と書いてありそうなタイプのドライバーがぴたりと付いていたら?
もちろん額に「輩」と刻印されているドライバーの全員が「オラオラ!」と前方の遅いクルマを煽るわけではない(人を見た目で判断してはいけません)。だが経験上、輩っぽいビジュアルをもつドライバーの1割から2割ぐらいは「オラオラー!」という類の運転をしがちだとはいえる。
そしてその日、たまたま後ろに付いた輩ビジュアルなドライバーが「1割から2割ぐらいのタイプ」であったら、やや遅めの速度で坂をひいこら上っているローパワー車はパッシングをくらい、なんなら背後で蛇行運転をしながらクラクションを鳴らされ、思いっきり車間距離を詰められることになるだろう。
まぁだからといって具体的な暴力を振るわれる可能性は低いため、どうでもいいっちゃいい話ではあるのだが、やはり気分は悪い。「もうちょいエンジンパワーがほしい……」と痛感する瞬間である。
●シチュエーション2:高速道路やバイパスの本線などに合流する
近隣の一般道坂道をクリアし、その後しばしクネクネと走ると、某高速道路の入口が見えてくる。で、ローパワー車は料金所(ETCゲート)へ向かう上り坂でも少々のかったるさは感じるわけだが、そこはまあいい。大した問題ではない。
問題はその先の「本線への合流」だ。
本線がガラ空きであればローパワー車でも難なく合流できるし、逆に激混みであっても、誰かが普通に入れてくれるだろう。だが「ほどほどの交通量でビュンビュン流れている本線」にローパワー車で合流するのは、ときに困難である。
たまたまいい感じでラクに合流できるタイミングも多いわけだが、逆に「たまたま絶妙にややこしい位置関係で、本線上のクルマが迫ってくる」というのもよくある話だ。
そんなとき普通パワー車またはハイパワー車であれば「減速してタイミングを合わせる」という選択技のほかに、「逆に増速することで安全な合流を果たす」という第2の道も用意されている。
だがローパワー車の場合は「逆に増速することで安全な合流を果たす」ということが事実上不可能である。つまり「有効な選択肢のうちの1つがハナから存在していない」ということになるため、安全な合流を果たしづらくなるわけだ。これもまた、「もうちょいエンジンパワーがほしい……」と痛感する瞬間である。
●シチュエーション3:高速道路の登坂路線から大型車を追い越したい
ふた昔前の軽自動車では高速道路上での追い越し自体がやや困難な部分もあったが、最近の軽自動車やローパワー車であっても、そして上り坂でなければ、追い越しもごく普通に行える。ややかったるい部分もあるが、そこは許容範囲とするべきだろう。
またローパワー車が高速道路を走る際はむやみやたらと追い越し車線には出ていかず、一番左の走行車線を90~100km/hぐらいでのんびり走るのが、安全という名の大勝利への近道となる。そのため、そもそも「ローパワー車による追い越しウンヌン」を考えること自体が不毛だとも言えるだろう。低出力車は、走行車線または登坂車線を普通に走ればいいだけの話なのだ。
だがまれに、そんなローパワー車であっても「ここは追い越しをしないと堪らん……」となるシチュエーションも発生する。たとえば、高速道路の長~い登坂車線を走行中に、荷台に大型建設重機を載せている超大型車に追いついてしまったときだ。
そういった「荷台に大型建設重機を載せている超大型車」は多くの場合、高速道路の登坂車線においてはウルトラ低スピードに陥ってしまう。場合にもよるが、40~50km/hぐらいまで速度が低下するケースもあるだろう。
そして登坂車線が数百mとか、せいぜい1kmぐらいで終わるのであれば、「まあ仕方ないな、お互い様だし」みたいな感じで、こちらもその後ろを粛々とロースピードで走ればいい。
だが、もしも登坂車線が数kmにわたって続く区間であったなら?
……さすがに超絶ロースピードで走り続けるのは苦痛であり、約束の時間に遅れそうでもある。なんなら次のSA/PAでウ●チをしなくちゃ漏れると感じていたタイミングかもしれない。そうであったなら、前を行く大型重機搭載の大型車を追い越すしかない。
だがこちらの速度はあいにく50km/hほどであり、右側の車線には100km/hぐらいで走るクルマが次々と現れ、そしてこちらのエンジンパワーはきわめて低いため、シュッと右に出てバッと追い越しを完了させるという、普通パワー車またはハイパワー車であればたやすいはずのアクションが、なかなかできない。それでいてウン●は漏れる5分前……みたいなシチュエーションにおいて、人は「もうちょいエンジンパワーがほしい……」と痛感することになるだろう。
現代のクルマであれば、ローパワーに起因する不便はせいぜいこのぐらいであるため、無視することもできなくはない。とはいえ「合流時の安全性」は看過したくない問題であり、また●ンチについても、楽観は許されないはずだ。
そういった意味で──必ずしもハイパワー車を選ぶ必要はないと思うが、「ローパワーすぎるクルマ」は、やはり少々考えものではないかと思っている。