FFなんてロータスじゃない! 最後は韓国車になったんでしょ? 乗ればめちゃくちゃロータスっぷりを味わえるのに正当評価が得られなかった「2代目エラン」の悲劇

2024.09.11 17:20
この記事をまとめると
■2代目のロータス・エランはFF駆動いすゞエンジン搭載などその評価がわかれる
■エランの構想モデルであるプロトタイプX100には4A-GEエンジンが搭載された
■ロータス・エランは韓国のキアからビガートという車名でも販売された
2代目のエランはロータスの自信作だった
  ロータス・エランはコーリン・チャップマンによる優れたコンパクトスポーツとして、いまだに賞賛の止まないモデルですが、2代目エランについては意見がわかれているようです。FFのロータスなんて認めないとか、いすゞエンジンなんてノーサンキュー、あるいは「最終的に韓国で作ったとか草」と、わりかしディスられていることが少なくありません。
  が、筆者を含めて一度でもドライブしてみた方ならそうした意見がまったくの見当違いであること、よくご存じかと。なにしろ、ロータスのエンジニアリングチームは、当時「おそらくロータス史上最速のクルマだ」とさえコメントしているのですから。
  2代目のエランがデビューしたのは1990年のことですが、1986年にロータスはGMグループに取り込まれていました。したがって、開発についてGMの意見が強く反映されるのは致し方ないところかもしれません。なお、買収される以前の1976年から2代目エランの構想は存在し、当時提携関係にあったトヨタのエンジンを前提とした4A-GEエンジンを搭載したプロトタイプ「X100」が作られたこともありました。
  しかし、グループが変わって4A-GEが使えない以上、ロータスはGMグループ企業のなかからエンジンを選ぶことに。そこで、コンペティションが行われて、最終的に三菱ミラージュのサイボーグユニットといすゞジェミニの4XE1が候補として残りました。ここでいすゞがレースファンにはお馴染みの小山ガレージにチューニングを依頼するという奥の手を発揮し、またロータスといすゞの蜜月期間と重なったことから、エンジンは4XE1に決定。
  自然吸気ユニットが130馬力/7200rpm、ターボ付きで165馬力/6600rpmと、車重997kg(ターボ付きは1020kg)には十分なパワーだったといえるでしょう。
  ちなみに、小山ガレージのチューニングに加え、ツインカムヘッドについてはロータス自身が製作したという情報もあり、いずれにしてもよくまわる元気のいいユニットだったことは間違いありません。
  そして、ロータスといえば初代エランをはじめX字型バックボーンフレームがデフォルト。2代目でも同様のシャシーが選ばれたのですが、当然ながら初代からは大幅な進化が遂げられています。まず、初代やエスプリの四角断面から、八角形へと変更され、フロント セクションは「ロンジロン」と呼ばれる縦方向のメンバーで構成。駆動系とフロントサスペンションを支える強力なボックス形状のフロントセクションと結合されています。
足まわりはロータスの名に恥じない秀逸さ
  一方で、リヤセクションはコイルオーバー型のダンパー上端部をふたつのブラケットで固定されています。このシャシーのねじり剛性は6600lb·ft/deg(8948Nm/deg)にもおよび、オープンカーとしては現代でも通用する高い数値といえるでしょう。
  これほどのシャシーを作り上げたのは、ロータスがFFスポーツの究極を目指したからにほかなりません。当時のロータスは、GMグループにいたとはいえ他社からの開発オーダーも重要な売り上げを占めており、「ウチはFFも得意なんです」というアピールをしたかったのだとされています。無論、いすゞのエンジンや駆動系がFFベースだったことをはじめ、(ミッドシップに比べたら)開発コストを抑えるという面もあったかもしれませんが、ロータスの野心と捉えるほうがクルマ好きとしては夢が広がるのではないでしょうか。
  FFエランの素晴らしさは、シャシーやエンジンもさることながら、足まわりにあるといっても過言ではありません。一般的にFFのフロントサスペンションはマクファーソンストラットが選ばれることがほとんど。ですが、ロータスはあえてダブルウイッシュボーンを選択しました。
  これはインタラクティブ・ウイッシュボーンと名付けられ、通常はフレームに取り付けられるアームに対し、エランではラフト(いかだ)と呼ばれるパーツを介在させることでアライメントの変化を抑制しています。同時に乗り心地のよさをもたらしつつ、トルクステアさえ取り除いたという優れた設計がなされました。
  また、フロントとリヤのキャンバー角を揃えることで(バックボーンフレームをそういう設計にしています)、前後サスペンションの間で一貫したタイヤの接地面が得られ、路面状況を問わずクルマの動きが予測しやすいというメリットさえ生み出しているのです。さらに、この思想が徹底化された結果、前後のサスペンションジオメトリーはロール角に関係なく、シャシーに対してロールセンターの高さがほぼ一定になり、ドライバーは無意識のうちに高速コーナリングを楽しめるという素晴らしさ!
  初代エランやエスプリさえも凌ぐようなマシンとなった2代目エランですが、デビューのタイミングがユーノス・ロードスターとかぶってしまったのが運の尽き。とにもかくにも、MX-5ミアータと比べられてしまい、とくに価格の差はいかんともしがたく(ロードスターの2万ドル以下に比べ、エランは4万ドル)、GMが期待した北米での売り上げはさっぱり鳴かず飛ばず。また、冒頭で述べたFFやエンジンへの誹謗はデビュー当初からつきまとったこともマイナスとなりました。
  てことで、1992年までに3885台が生産されたところで一旦生産は終了。ですが、1994年にGMからロータスを買い取った元ブガッティのロマーノ・アルティオリが、倉庫に余っていた4XE1エンジンに目をつけ、シリーズ2(S2)として800台が追加生産されたというエピソードも生まれました。
  この後、エランの生産設備を丸ごと韓国の起亜自動車が買い上げ、キア・ビガートの車名で復活させたことも有名です。この際、エンジンはキア製1.8リッター(最高出力135馬力)に載せ替えられ、また韓国の道路状況に合わせて車高が上げられるなどローカライズが行われましたが、幸いなことにそうした作業はロータスに任されたために、エランが誇った走行性能の高さはしっかり維持されたとのこと。これこそ、韓国車だと揶揄するのは見当違いという証しです。
  それにしても、数十年も前にいまだマスターピースとさえ呼ばれるFFマシンを作ったロータスの慧眼には驚かされっぱなしです。これから手に入れることは難しくなっていくことでしょうが、チャンスがあったらぜひ絶妙なハンドリングbyロータスをお楽しみください。FFスポーツカー食わず嫌いの方にはとくにオススメしたい逸品です。

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