【開催レポート】岡山県の蜂谷工業株式会社が障害福祉団体以外の中四国企業としてウィズダイバーシティに初参加したことに伴い、共同記者会見を開催しました

2024.09.10 10:00
ウィズダイバーシティ有限責任事業組合
岡山県の2018年からの障害者雇用の伸び率は中四国で最下位。県内の障害福祉団体と協働し、建設現場や事務所でのアート活用などを通じて中四国の障害者雇用を拡大したい。
左:株式会社ありがとうファーム 代表取締役 木庭 康輔、中央:蜂谷工業株式会社 代表取締役社長 蜂谷 泰祐、右:ウィズダイバーシティ有限責任事業組合 発起人 福寿 満希(株式会社ローランズ代表取締役)

8月28日、岡山県岡山市内にて、蜂谷工業株式会社(代表取締役社長 蜂谷 泰祐)、株式会社ありがとうファーム(代表取締役 木庭 康輔)、ウィズダイバーシティ有限責任事業組合(発起人 福寿 満希、
株式会社ローランズ代表取締役)の3社が共同で記者会見を開催いたしました。

この会見は、中小企業の障害者雇用の新たなモデルとなるウィズダイバーシティに、蜂谷工業株式会社が障害福祉団体を除く中四国の企業で初めて加盟したことを発表し、ウィズダイバーシティの仕組みや取り組みを広く知っていただく目的で開催しました。

当日は行政(岡山県、総社市)、就労支援事業所運営者、障害者雇用に課題を抱える企業など、19名の参加がありました。

記者会見開催に関するプレスリリースはこちらをご参照ください。
ウィズダイバーシティに参加した理由~建設業は屋外作業や危険を伴う作業もあり、障害者雇用に踏み出せなかった
ウィズダイバーシティに参加した理由を説明する、蜂谷工業株式会社 代表取締役社長 蜂谷 泰祐

蜂谷工業株式会社は大正6年の創業以来、岡山県を中心に総合建設業として社会基盤づくりに貢献してきた企業です。2018年西日本豪雨災害により岡山県内で大きな被害が発生した際には、可能な限りの人員を投入し復旧復興に取り組むなど、地域社会の発展とともに成長してきました。

「信頼され、選ばれるNo.1ローカルゼネコンになる」をビジョンに掲げ、災害復旧等の直接的な社会貢献のみならず、地元の雇用創出も社会貢献と考え経営している一方で、蜂谷社長は、「障害者雇用については多くの課題を抱えていた」と語りました。建設業には屋外での作業や危険を伴う作業もあり、これまでなかなか障害者雇用に踏み出すことができなかったのです。

そのような状況下、株式会社ありがとうファーム木庭代表の紹介で、ウィズダイバーシティの仕組みを知り、この度、中四国の企業では障害福祉団体を除いて初めての参加に至りました。
岡山県の障害者雇用の現状と課題~2018年からの障害者雇用の伸び率は中四国で最下位
岡山県の障害者雇用の現状と課題について説明する、株式会社ありがとうファーム 代表取締役 木庭 康輔

次に、株式会社ありがとうファーム木庭代表から、同社の企業理念や活動内容、岡山県の障害者雇用の現状と課題について説明しました。

株式会社ありがとうファームは、2015年設立、岡山市北区表町商店街を拠点に障害福祉サービスを提供しています。同社の企業理念「生き生きと堂々と、人生を生きる」のもと、「知ることは、障がいを無くす。(R)」というスローガンを掲げ、障害者が自己実現できる社会の実現を目指して様々な活動をしています。

具体的には、ハンディキャップアーティストのアート作品の事業化に取り組んでいます。例えば、1年単位の契約でレンタルする「レンタルアート」、岡山県内で育ったフルーツを使用したお菓子のパッケージにアートを掲載するなどの「アートコラボ商品開発」、工事中の仮囲いなどにアート作品を掲載する「建設現場アート」などがあります。
蜂谷工業のエントランスに、ありがとうファーム所属のアーティスト作品が飾られました。
殺風景になりがちな建築現場に、ありがとうファーム所属のアーティスト作品が掲載された「建設現場アート」(蜂谷工業の建設現場の様子。写真出所:蜂谷工業株式会社HPより)

岡山県内の障害者の法定雇用率達成状況は平均2.58%です。全国平均2.33%を上回る一方で、2018年からの障害者雇用の伸び率は中四国で最下位となっています。特徴の一つとして、建設業、情報通信業、不動産業での雇用率未達成があげられます。

障害者雇用に課題を抱える中小企業と、障害者の雇用・育成や配慮のある環境整備に強みを持つ障害福祉団体が一緒にチームになることで、より障害者雇用を増やすことに取り組んでいるのが、ウィズダイバーシティです。
法定雇用率の達成企業は約50%。中小企業の障害者雇用拡大のカギは1社ではなくチームでスクラムを組むこと。
ウィズダイバーシティ発起人である福寿からは、ウィズダイバーシティ立ち上げの背景と活動の詳細について説明しました。
ウィズダイバーシティ立ち上げの背景と活動の詳細について説明する福寿
従業員が一定数以上の規模の事業主は、従業員に占める身体障害者・知的障害者・精神障害者の割合を法定雇用率以上にする必要があります(障害者雇用促進法43条第1項)。民間企業の場合の法定雇用率は、2024年4月から2.5%(40人に1人以上)へ、2026年7月から2.7%以上(37.5人に1人以上)へ引き上げが決まっています。

しかし、法定雇用率達成企業の割合は50.1%(※)であり、ほぼ半数の企業は障害者雇用が未達成といえます。(※厚生労働省「令和5年 障害者雇用状況の集計結果」より)
東京都の事例ですが、従業員規模が小さくなるほど、雇用率は低くなる傾向があります。

例えば、厚生労働省東京労働局の調査では、1000人以上の企業の雇用率は2.51%であるものの、従業員数が少なくなるほどこの割合は低下し、100人未満の企業では0.89%となっています。(参考:厚生労働省東京労働局「令和5年 障害者雇用状況の集計結果」)。
大企業では障害者雇用を専門とする部署の設立など取り組みが進んでいますが、中小企業が障害者雇用になかなか踏み出せない理由の一つに「仕事を作り出すこと」があります。今回参加した蜂谷工業も「屋外での作業や危険を伴う作業もあり、自社だけではなかなか障害者雇用に踏み出すことができなかった」ことが課題でした。

この課題解決策としての仕組みがウィズダイバーシティです。課題(障害者雇用のノウハウがない、仕事の切り出しが難しい、体制をつくるリソースが限られている)を持つ中小企業と、すでに障害者雇用のノウハウや支援スキルを持った障害福祉団体がスクラムを組み、一緒に障害者雇用に取り組む仕組みです。
福寿がウィズダイバーシティを立ち上げた経緯や詳しい仕組みについては、こちらをご参照ください。
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全ての障害者がプロフェッショナルである社会を実現するために。異業種の中小企業がスクラムを組む「共同雇用」の仕組みをもっと広げたい。
企業にとって最もハードルとなる「仕事を作り出すこと」については、ウィズダイバーシティに参加している複数(2024年7月現在、3社)の障害福祉団体が提供している、60以上のサービス項目から選ぶことができます。現在ラインナップにないものも共同で仕事を作り出すことも可能であり、結果として障害者雇用の拡大、当事者の方にとっては様々な仕事を経験し、スキルアップにつながっていきます。
ウィズダイバーシティに参加し経済活動に必要な商品・サービスを受け取るところから障害者雇用への関わりを始め、障害当事者との接点ができて会社全体で理解が深まっていくことで、その企業で自社雇用が実現することを目指しています。

今後、蜂谷工業は「建設現場アート」、「レンタルアート」、社員誕生日プレゼントとしてフラワーギフトなど、毎月一定の金額を組合に参加している障害福祉団体へ発注することで、法定雇用率も達成します。
社員誕生日プレゼントとして、ウィズダイバーシティ参加企業へフラワーギフトを発注予定

今後の展望
最後に、今回参加した3社から、今後の展望をお話しました。
蜂谷工業株式会社 代表取締役社長 蜂谷 泰祐
ウィズダイバーシティの取り組みは社会的な意義が大きいものです。当社の今後の課題は、障害者雇用の現実と、ウィズダイバーシティの仕組みや取り組みについて、いかに地域に広めていくかです。当社は岡山県外にも同業者のネットワークを持っています。交流会などの場でウィズダイバーシティのことをどんどん発信していき、ウィズダイバーシティに参加する仲間の輪を広げていきたいです。
株式会社ありがとうファーム 代表取締役 木庭 康輔
私たちありがとうファームは、「知ることは障害を無くす」という考え方を、社会に対してさらに発信を行うとともに、岡山を中心にさらに障害者雇用を拡大していきたいです。

障害者雇用がしたいけどできない企業、そして運営に課題のある障害福祉団体との出会いがたくさんあります。ありがとうファームのことを知ってもらうだけでなく、ウィズダイバーシティが活用している算定特例制度についてもしっかりと発信を行っていき、障害を持った当事者、そして事業所が自分たちらしく生き生きと企業様の障害者雇用の達成に貢献でき、自分たちの給料も稼ぐことができるような社会を作っていきます。
ウィズダイバーシティ有限責任事業組合 発起人 福寿 満希
2024年7月現在、ウィズダイバーシティの参加企業は14企業となり、日本で最も多くの企業がグループ算定されています。東京都以外には大阪府・岡山県(蜂谷工業とありがとうファーム)・山梨県の企業が参加しています。

未就労の障害者は350万人存在するといわれています。中小企業、また障害者雇用に取り組めていない企業、障害福祉団体でこれからもっと雇用を増やしていきたいという事業所にウィズダイバーシティの仕組みを知ってもらい、中小企業、障害福祉団体と、働きたいという思いを一人でも多く叶えていけるように、ウィズダイバーシティの認知度を広げていきたいです。

最後に、「ウィズダイバーシティに参加できる福祉事業団体の条件について」、「1人雇用したことになる具体的な発注金額等について」、「サービスラインナップの選び方について」など、参加いただいた皆様から活発な質疑応答が行われました。
質疑応答の様子

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