この記事をまとめると
■レーシングドライバーはプライベートではどんなクルマに乗っているのかを聞いた
■メーカー系チームのドライバーはメーカーから支給されたクルマに乗っていることが多い
■快適に移動できるクルマに乗っているドライバーが多い一方で趣味的なスポーツカーを所有している者もいる
レーシングドライバーのプライベートのおクルマは?
フォーミュラにしても、GTカーやツーリングカーにしても、レースシーンにおいてレーシングドライバーはサーキットを舞台にアグレッシブな走りを披露。とくにプロドライバーたちは、どんなコンディションでも素晴らしいドライビングを披露しているが、プライベートにおいて彼らレーシングドライバーたちはどんなクルマに乗っているのだろうか?
というわけで、8月3〜4日、富士スピードウェイで開催されたスーパーGT第4戦「FUJI GT500km Race」の会場で、スーパーGTドライバーたちを直撃してみた。
まずはGT500クラス。
「クルマはいっぱいあります。サーキットに移動するときに使っているクルマはレクサスRXが多いですね」と語るのはTGR KeePer CERUMOで38号車「KeePer CERUMO GR Supra」のステアリングを握っている石浦宏明選手だ。
石浦選手によると、トヨタ系のチームよりGT500クラスに参戦しているドライバーはクルマが支給されているようで、「僕たちはKINTOさんのサポートでクルマを選べて、1年半ごとにクルマを変更することができるんですけど、僕はずっとRXにしていて、モデルが代わるごとに乗り継いでいます」と語る。
その理由について「出張が続くと荷物が多くなりますからね。RXより小さいと荷物が乗らないし、子どもが3人いるので同じレクサスでもNXだとちょっとリヤシートがタイトですよね」と石浦選手。
さらに「8月にクルマの入れ替えがあるんですけど、トヨタ・ヴェルファイアにする予定です。快適ですし、サーキットでは休憩室にもできるのでミニバンにしました」とのことだ。
ちなみに石浦選手はほかのクルマももっているようで、「GRカローラのフルエアロも持っています。佐々木(雅弘)選手が率いるGROWさんが東京オートサロンで展示していたGRカローラがあるんですけど、あのパッケージ。GRカローラは自分が開発に参加しましたし、ときどき、MTも乗りたくなるので、5月の第2戦の富士はそのGRカローラで来ていました」とのことである。
一方、ホンダ系チームのドライバーたちもホンダから車両が提供されているようで、Astemo REAL RACINGで17号車「Astemo CIVIC TYPE R-GT」のステアリングを握っている塚越広大選手は、「HRCよりクルマを貸して頂いているんですけど、いまはZR-Vを選んで乗っています」とのこと。
ZR-Vを選んだ理由については、「子どもの送り迎えがラクなので、以前はオデッセイを選んでいたんですけど、子どもたちも大きくなってスライドドアにこだわる必要もなくなってきたので、ドライバーベースのクルマを検討していました。で、4WDに乗りたかったので四輪駆動の設定があるZR-Vのハイブリッドを選択。オデッセイより荷物が乗らなくなりましたが、サーキットを含めて移動が多いので、走りがちゃんとしたクルマを選びました」とのことだ。
気になるZR-Vのインプレッションについて塚越選手は、「SUVなんですけど、シビックに近くて高速道路でも安定して走れるし、燃費も18km/Lぐらいいくのでラクに移動させてもらっています」と高評価だ。
もちろん、塚越選手もそのほかに数台、クルマを所有しているようで、「個人的にはNSXのNA1ももっています。意外と乗る機会が多くてサーキットを走ることもありますよ」とのことである。
メーカー系チームでなければクルマ選びは自由?
また、日産系チームのドライバーもやはり日産車に乗っているようで、NISMOで23号車「MOTUL AUTECH Z」のステアリングを握っているロニー・クインタレッリ選手は、「スカイラインのハイブリッド車に乗っています」としたうえで、「若いころは馬力があるクルマに乗っていて、イタリアにいる時はBMWの3シリーズのモータースポーツバージョンに乗っていたんですけど、子どももいるので、歳をとってからは乗り心地のいいクルマがいいな……と思えるようになってきました」と語る。
ちなみにロニー選手の奥様も日産車に乗っているようで、「妻がAURA NISMOに乗っているので、たまに気分転換で乗っています」とのことである。
また、TEAM IMPULで12号車「MARELLI IMPUL Z」のステアリングを握る平峰一貴選手も日産車のユーザーで、「サーキットではレーシングカーで戦っていますけど、一般道では安全に運転していますからね。普段はスカイライン400Rに乗っていて、いまはスポーツカーやチューニングしたクルマを乗ることはないですね」と語る。
気になるインプレッションについては「400Rはアクセルの踏み始めのピックアップがいいですし、ターボの利き方もスムースでアクセルコントロールがしやすいです。ハンドリングの反応もいいんですけど、それに合わせて乗り心地もいいのでとても気に入っています」とのことで、平峰選手のよき相棒になっているのである。
一方、GT300クラスはどうだろうか?
R&D SPORTで61号車「SUBARU BRZ R&D SPORTのステアリングを握る山内英輝選手はスバルの契約ドライバーだけあって「スバルが車両を貸してくれるんですけど、移動は乗り心地がよくてラクに運転できるクルマがいいので、レヴォーグに乗っています。アイサイトも付いているし、荷物も積めるので本当に助かります」とのこと。
これに対して、メーカー系チームに所属していないドライバーは自由なクルマ選びを行なっているようで、D’station Racingで777号車「D’station Vantage GT3」のステアリングを握っている藤井誠暢選手は「子どもが3人いるので、一番乗っているクルマはメルセデスのVクラスです。Vクラスはやっぱり広いですからね。そのほかにマセラティ・ギブリと、10年ぐらい乗っているMTのフェラーリF355もあります」と語るようにさまざまなクルマに乗っているようだ。
ちなみに、藤井選手はこのほかにも複数のクルマを所有しているようで、「ほとんど乗っていませんが、GRMNヤリスも50台限定のカラー(注:マットスティール)が抽選で当たったので買いました。そのほか、最近ではマクラーレンのGT4モデル(注:マクラーレン570S GT4)を買ったんですけど、こちらもマイカーです。
いま“simdrive”という会員制のドライビングラボ施設を運営しているんですけど、レースに参戦するジェントルマンドライバーが増えてきました。でも、レースをやっていない会員もいるので、次のステップとしてレースをできる環境を用意しようと思ってチームを立ち上げました。そのためのクルマとしてGT4を買ったので、これもほとんど僕は乗っていません」とのことだ。
このようにモータースポーツで活躍するレーシングドライバーたちは、意外にも普段は乗り心地のいいクルマをセレクトする傾向にある。
近年はレーシングカート出身のドライバーが多く、「昔と比べていまのレーシングドライバーはクルマ好きが少ない」ともいわれているが、少なくとも日本最大級のGTレースに参戦しているドライバーの多くがクルマ好きで、普段は利便性かつ快適性の高いクルマに乗っていながらも、クルマに対する興味や愛情をもっているのである。