著名なルース・ネルキン氏の日本の木版画コレクションが6月27日、ヘリテージ・オークションズで競売へ

2024.06.18 17:57
Heritage Auctions Japan株式会社
葛飾北斎、高橋弘明、吉田博らの作品約250点が出品される
蒐集の勘は一朝一夕に身につくものではなく、優れたセンスを持つ熟練のコレクターは、何年も、あるいは何十年もかけて収集を続ける中で、収集品についての知識と純粋な欲求を深めていきます。

米国コネチカット州スタンフォードとニューヨーク市に住んでいた故ルース・シルヴィア・ネルキン氏は、日本の代表的な版画、上質なアンティーク・ジュエリー、ファベルジェとロシアの美術品、フランスのアートガラスの名品、アメリカの風景画などの分野で、その慧眼と絶妙なセンスで知られるコレクターでした。

今年、ヘリテージ・オークションズではネルキン氏の優雅なコレクションの数々を、いくつかの重要なオークションを通して紹介してきました。そして、同社が6月27日に開催する「日本の木版画 ネルキン・コレクション パートI シグネチャー・オークション」では、葛飾北斎、高橋弘明、吉田博など、木版画の巨匠たちによる約250点の作品が出品されます。
「ネルキン家のさまざまな所有品には、ある共通点がありました。それは品質の高さです」ヘリテージ・オークションズのシニア・ヴァイス・プレジデントであり、特別コレクション担当のニック・ドーズはこう述べています。「ルース・ネルキン氏は、あらゆる分野で最高級のものを探し求め、見つけていました。そして何よりも、日本の木版画芸術である浮世絵に情熱を注いでいました。彼女は生前、これらの宝物を大切に守ってきましたが、今、他の収集家が彼女の目利きと絶妙なセンスの恩恵を受ける機会を得ました。」

ネルキン・コレクションに含まれるほとんどの作品は、30年以上市場に出回っていません。オークションの売却益はすべて、アメリカ赤十字社、Paws for Purple Hearts、動物の倫理的扱いを求める人々の会、グリーンピースなど、ネルキン一家が親しんだ慈善団体に寄付されます。

ネルキン・コレクションには、19世紀の日本の版画家、葛飾北斎の名作や、美しい川瀬巴水の作品の数々、新版画の美人画や近代の創作版画など、江戸時代から近代までの日本の版画が数多く収蔵されています。美術史家たちは、東洋美術が西洋の美学や感性に多大な影響を与えてきたことを古くから理解してきました。1850年代に日本が開国し、1800年代半ばから後半にかけて、日本の版画は西洋で旋風を巻き起こしました。優雅で色彩豊かな作品、特に当時の日本の木版画や浮世絵師の作品は、国内外の芸術家、デザイナー、コレクターや機関に視覚的なインスピレーションを与えました。
ヘリテージ・オークションズはネルキン・コレクションの日本美術の作品を取り扱う上で、日本美術のスペシャリストで独立コンサルタントの堀佐知子氏の協力を得ています。堀氏はルース・ネルキン氏と彼女の収集への情熱を知るベテランです。

「ネルキンさんの版画コレクションには驚かされました。彼女は情熱的で確固としたコレクターであり、このような素晴らしい作品をまとめてくださったネルキンさんに心から感謝します。これらの作品を扱うことは、非常に刺激的で勉強になる経験でした。」
6月27日開催のオークションでは、近代史で最も知られた日本の版画家、葛飾北斎の木版画の数々が出品されます。中でも、1832年頃の「諸国滝めぐり」の作品1点と、1832年頃の「琉球八景」全8点に注目が集まっています。これらの作品は、力強い線で豊かに描かれており、後者は1832年11月に琉球使節団が江戸に到着したことを記念して制作されました。

また、鈴木春信の作品6点が出品されます。1768年頃の作品、「調布の玉川」(「六玉川」より)には、川で洗濯をする若い女性が描かれています。女性の上には藤原定家の和歌が記されています。オークション出品作品には初期の版画が目立ち、歌川国政による1796年頃の見事な大首絵「七代目片岡仁左衛門の伊予の太郎」もそのひとつです。
川瀬巴水の代表作「芝増上寺」(『東京二十景』より、1925年(大正14年))は、木版画史上最も印象的な作品のひとつであり、今回のオークションにも登場します。雪が降り積もる冬の風景が描かれ、版元である渡邊庄三郎が主導した新版画の一端を示しています。巴水の色彩と光による表現の才能は、この作品でも存分に発揮されています。さらに、6月27日開催のオークションには、1933年頃の「髪梳き」や1930年頃の「朝寝髪」など、鳥居言人の重要な版画が加わります。

また、オークションカタログの表紙を飾る作品を含む、高橋弘明の作品6点も出品されます。 1931年の「あわびとり」は、寺松国太郎が1913年にキャンバスに油彩で描いた「櫛」をもとにしているようです。1929年から1932年にかけて、孚水画房が高橋の美人画や猫画を数多く出版しましたが、第二次世界大戦中に版木や版画在庫の多くが焼失したため、この時期の版画は稀少となっています。
吉田博の「瀬戸内海集」(1926年)の6点は、このオークションのハイライトです。彼の「帆船」は、日本の穏やかな海岸風景をとらえており、それぞれの版画の背景には異なる色のインクが使用され、緩やかなグラデーションで異なる時間帯や大気の状態が描写されています。1917年に制作された伊東深水の「ひでり雨」や、1820年頃に制作された柳々居辰斎の詩と跳ねる鯉を描いた作品も見どころのひとつ。また、1795年頃の鳥高斎栄昌の「郭中美人競」シリーズの有名な作品、「角玉屋内若紫」の小さなネズミを抱く花魁の愛らしい姿は、数え切れないほど複製されてきました。

堀佐知子氏はこう述べています。「私にとって、北斎の『百物語』の幽霊お岩さんの版画を見つけたことは、実物を見るのが初めてだったこともあり、大きな喜びでした。勝川春英の『おし絵形』シリーズの版画も好きですし、名取春仙が捉えた歌舞伎役者の表情も素晴らしい。ネルキンさんがオークションに参加される際には、いつも会場の前の方に座っていたのが印象的で、オークショニアに対して、途中で入札をやめるような仕草を見せたことはなかったと思います。それが彼女の決然としたやり方で、その結果、この深みとバラエティーに富んだ素晴らしいコレクションが生まれました」。

オークション全出品作品の画像と詳細はウェブサイト、
でご覧いただけます。オークション・ハイライトの下見会は、ヘリテージのダラス本社で6月24日~26日に行われます。
オークションおよび下見会詳細:
さらに、9月25日に「ネルキン・コレクションから日本の木版画、パートII」が開催予定です。ご期待ください。


【ヘリテージ・オークションズ(Heritage Auctions)について】
ヘリテージ・オークションズは、米国で設立された最大の美術品・収集品オークションハウスであり、世界最大の収集品オークショニアです。ヘリテージはニューヨーク、ダラス、ビバリーヒルズ、シカゴ、パームビーチ、ロンドン、パリ、ジュネーブ、アムステルダム、東京、香港にオフィスを構えています。

またヘリテージは、地球上に存在するオークションハウスの中で、最も高いオンライントラフィックと取引額を誇るオークションハウスです(出典:SimilarWebおよびHiscox Report)。インターネット上で最も人気のあるオークションハウスのウェブサイトであるHA.com(
)は、175万人以上のオンライン入札会員を擁し、過去のオークション記録600万件の検索が可能な無料アーカイブには、落札価格、詳細、拡大可能な写真が掲載されています。メディア関係者には、写真のクレジットを明記することで複製権が付与されます。

ヘリテージ・オークションズは2024年に東京オフィスを開設し、オークション参加、出品、査定等に関して、日本語でのサポートを提供しています。
本リリースやオークションに関してご質問がございましたら、お気軽にお問合せください。

【お問い合わせ先】
Heritage Auctions Japan株式会社
Japan@HA.com

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