よくわからないけどクルマ好きを魅了する謎の言葉「トランスアクスル」! R35GT-Rにも採用される機構をじっくり解説!!

2024.03.04 10:00
この記事をまとめると
■R35GT-Rに採用されて注目されるようになった「トランスアクスル」について解説
■FRのレイアウトに採用することで走行性能の向上を狙っている
■コストがかかり専用の設計が必要なため採用車種は高級スポーツカーなどに限られる
聞いたことはあるが意味は知られていない「トランスアクスル」
「バルクヘッド」、「レインフォースメント」、「イモビライザー」、「シーケンシャルターボ」などなど、クルマに関する用語には、つい発してみたくなるカッコイイ横文字で溢れています。知っている単語の組み合わせ次第でカッコイイと感じるものや、意味を知ると「ああなるほど」と納得できるもの、あるいは意味を聞いてもあんまりピンと来ないものもあったりします。
  そのなかでも、ここ数年でいちばん気になっているワードが「トランスアクスル」です。R35GT-Rに採用されて注目を浴びたことで、自動車雑誌などを見た人で気になっているという人も少なくないのではないでしょうか。
  ここでは、その「トランスアクスル」について、解説してみようと思います。
「トランスアクスル」とは、駆動系のレイアウト法のひとつ
「トランスアクスル」というのは、「トランスミッション」と「デファレンシャルギヤ」を一体化した機構のことを言います。
  しかしそれを知っても、「トランスアクスル」の語源がピンと来ませんね。
  みなさんは「トランスアクスル」と聞いて、どんなものを思い浮かべるでしょう? 前半部の「トランス」と言うと、電柱の上に設置されているグレーのゴミバケツに似た円柱状の機械でしょうか? ちなみにあれは「変圧器」で、変電所から送られてきた高圧の電気を家庭用の100Vに変圧するためのものです。あるいは「トランス脂肪酸」なんていう言葉もCM等で聞いたことがありますね。
  トランス(trans)とは、横切る、越える、変換する、交流する、などの意味の言葉です。これはあまりピンと来ません。
  または、「トランスファー」の略として使われているケースもあるようです。こちらは 移す、移動させる、移転させる、渡す、送るといった意味があります。自動車では、主に四輪駆動車で「トランスミッション」の後ろに装着されていて、二次減速と前後への駆動力配分を受け持つ装置ですが、意味合い的にこれでもなさそうです。
  はい、余談はこれまでにしておきましょう。明確に記述している資料は見つかりませんでしたが、「トランスアクスル」の「トランス」は、「トランスミッション(transmission)」の略のようです。それに車軸を意味する「アクスル(axle)」を組み合わせた造語だそうです。
いいことばかりじゃない「トランスアクスル」
なぜ「トランスミッション」と「デファレンシャルギヤ」を一体化するの?
  今回メインとして取り上げるのは、FR(フロントエンジン、リヤ駆動)レイアウトの車両のケースです。しかし、本来「トランスミッションとデファレンシャルギヤが一体化された機構」という意味合いとしては、MR(ミッドシップ、リヤ駆動)やRR(リヤエンジン、リヤ駆動)の車両のほうが採用例は多くあります。
  MRやRRのケースでは、エンジンとトランスミッション、デファレンシャルギヤが車体の後半に集中するため、スペース効率の面でトランスミッションとデファレンシャルギヤの一体化は必然なのです。
  一方で、FRレイアウトの車両では、スペースや製造などの効率(やコスト)を優先させると、トランスミッションをエンジンの直後に配置して合体させる方式がもっとも有効です。そのため、スポーツカーのカテゴリーの車種でもほとんどはその構成となっています。
  さて、ではなぜR35GT-Rには「トランスアクスル」方式を採用したのでしょうか。その答えは、コーナーリング特性やトラクション性能などの走行性能の追求のためです。
  走行性能の話をするときに「前後重量配分」や「マスの集中」というワードがよく登場します。クルマがコーナーを速く走り抜けるには、タイヤのグリップをいかに引き出すかが重要です。限界のグリップ性能を引き出すには、四輪すべてに効率よく仕事をさせなくてはならず、そのためには前後の重量の配分が均等であることが理想とされています。
  また、コーナーを抜けるときの車両の動きは、遠心力や慣性力、そして加速力などのいろいろな方向に力が加わり、車体が振りまわされています。そのとき、重量物が車体の中心にあれば、振りまわされる力の影響を少なくすることができるので、コントロール性が良くなるのです。
「トランスアクスル」方式を採用することで、まずは「エンジン+トランスミッション」という大きな重量の塊が前方に集中する状態から、トランスミッションを分離させて後ろに移動することで、重量の偏りがかなり解消できます。
  そして、それと同時に、もっとも重量のあるエンジンを車体の中心に寄せることができるので、「マスの集中」にも貢献できるというわけです。
  おまけに、リヤの車軸近くに重量のあるトランスミッションがあることで、トラクションの初期特性に優れ、雪道などの低μ路面でのグリップ特性も有利というメリットもあるようです。
しかし、メリットばかりではないらしい
  このようにFRレイアウトでの「トランスアクスル」の採用は、走行性能を優先させるなら理想的な機構です。しかし、多くのFRスポーツ車が採用していないのは、デメリットもあるからです。
  まず最大のデメリットはコストです。なぜなら専用のトランスミッションが必要となるからです。それにはデファレンシャルギヤも専用にしなければなりませんし、R35GT-Rのように四輪駆動にするには、専用のトランスファーやそれらを繋ぐプロペラシャフトも必要になり、それだけでもかなりのコスト増です。
  しかし、最大のコスト増は、専用のシャーシが必要という部分です。エンジンの搭載位置から、トランスアクスルをマウントするフレームやメンバー類などが一般のFRシャーシとは大きく異なるために既存のプラットフォームは活用できず、完全に専用の設計となってしまいます。
  もうひとつの懸念点は、プロペラシャフトが常に高速で回転しているということです。標準的なFR車の場合はトランスミッションで減速されるため、低いギヤほど回転が低くなった状態でプロペラシャフトがまわされますが、トランスアクスルの場合は常にエンジン回転と同じ速度でまわされています。
  これは単純に、万が一、シャフトが破損して暴れた際に危険が高まるという点と、振動やノイズの発生が懸念されること、そして慣性重量が大きくなることでのレスポンス性が損なわれるという点が挙げられます。R35GT-Rでは、特殊素材の軽量なプロペラシャフトにすることで慣性重量を下げ、高精度で仕上げることで振動の対策としているようです。当然その分コストは高くなります。
  と、このように「トランスアクスル」方式を採用するというのは、単に「ミッションを後ろに移設しただけ」というカンタンなものではありません。本気でイチからハイパフォーマンス車を作り上げるという意気込み無しでは、採用することが難しい方式なのです。そう考えると、「トランスアクスル」という言葉に対して、以前より重みが増しているのではないでしょうか。

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