どろどろ悪路 走らせてみた(前編) ジープ・コマンダー

2023.09.01 00:00
公開 : 2023.08.01
ジープの悪路試乗。前編の主役はジープ・コマンダーです。独特の懐深さがあると筆者は言います。
ジープの現在地
円安によって車両価格の上方修正を強いられた昨今、さすがに一時の勢いは収まったかのように見えるジープだが、とくにラングラー辺りは現行モデルのユーズドが中古車市場でも底堅く推移&高騰して、相変わらず人気は衰えていない。

SUVブームの中であらゆる4×4モデルやヘビーデューティ・クロカンの草分けとして、ジープが注目されるのは当然ではある。
【画像】勇姿 悪路を走るジープ・コマンダー【美しい写真をみる】 全47枚
しかし、それだけで説明がつかないのが、そもそも本来からジープに備わる乗り味や魅力の部分だろう。

今回、富士ヶ峯オフロードを拠点におこなわれた試乗会では、ジープとして最新のミッドサイズSUVである「コマンダー・リミテッド」の2L直4ディーゼルターボ仕様と、長年にわたってジープの核をなす「ラングラー」の最新版「アンリミテッド・サハラ 2.0L」を、それぞれオンとオフで試乗してきた。

レネゲードやラングラーで「4xe」の名の下にPHEVを揃え、やがて「アヴェンジャー」という電動化の申し子といえるピュアEVをも控えるジープのラインナップにおいて、ある意味で両極端、しかしジープならではの成熟した世界観を色濃く見せてくれる2車種といえる。

先に、富士山北麓の一般公道でコマンダーに試乗した。昨年末に日本市場デビューしたコマンダーは、プラットフォームはFFのフィアット500Xらと共有するものの、前後車軸を繋ぐドライブシャフトと4輪独立懸架のサスペンションを備えた、ジープらしい本格オフローダーの顔もある。

ドライブシャフト上に備わる油圧多板クラッチが走行状況に応じてリアアクスル駆動を切り離し、燃費重視のFF駆動か走破性やスタビリティ重視の4輪駆動へ、自動的に切り替わるオンデマンド4WD方式を採用しているのだ。
コマンダーという立ち位置
コマンダーの全長4770×全幅1860×全高1730mmというサイズ感は、アッパーCを超えてDセグ相当といえる。実際に3列目シートが備わる7シーターだ。

欧州で好まれるステーションワゴン風のSUVピープルムーバーで、北米市場で展開しないジープでもある。
ジープ・コマンダーのインテリア。ダッシュボードやシート表面を繋ぎ合わせるレザーとステッチ、素材感を際立たせる大きなクローム使いなどは古典的だが、仕上げの質感は総じて高い。
だがABCピラーからルーフまでの上半分と、ボディのウエストライン下半分は、2トーンカラーに塗り分けられている。ウインドウ枠の上端ラインもクロームモールで縁どられた外観は、日本には未導入の現行グランドワゴニアの弟分と思えば、結構しっくりくる。「和魂洋才」ならぬ「米魂欧才」なのだ。

生産地はブラジルとインドだそうだが、適度にクラシックでモダンなスタイリングも、新興国の若いファミリー層をもとり込む仕立てとして、合点が行く。

インテリアに目を移すと、ダッシュボードやシート表面を繋ぎ合わせるレザーとステッチ、素材感を際立たせる大きなクローム使いなどは古典的だが、仕上げの質感は総じて高い。

インストルメンタルパネルは10.25インチ液晶表示で、センターには10.1インチのタッチスクリーンも現代的なインターフェイス。サラウンドビューカメラのアングルが充実している辺りは、オフローダー志向の乗り手は無論、狭いパーキングのアプローチなどで都会住まいの若いユーザーにも実用的だろう。

荷室へのアクセスとなるリアハッチは非上下分割ながら、パワーゲート仕様。3列目シートは、座面と足元の高低差がほとんどなく、緊急時に2名が何とか座れる程度だが、ボクシーな外観もあって頭上スペースは広く、畳めばフラットな荷室となる。

全体的に、ジープとしては澄ました、充実した生活感のある本格SUVといった趣だ。では走りはどうか?
コマンダーの懐深さ
2Lディーゼルは近頃、珍しいぐらい、カラカラとディーゼルらしいアイドリング音を放つ。走り出してもピックアップは決して鋭くはないが、穏やかなトルクカーブの盛り上がりに応じつつ力強く鷹揚な加速に、不足は感じない。

ステアリングの操舵量もオンロードで走る限りは多めに感じる。でも、このひと時代かふた時代ぐらい旧い感覚のドライバビリティが、嫌になるどころかクセになりそうな、そういう懐深さをコマンダーはあわせもつ。
利便性として変えるべきもの、逆に雰囲気の側に属するものとして変わって欲しくないもの、それらの区別と取捨選択が巧みになされた最新のジープ、それがコマンダーだと思う。
今回は試さなかったが、「4WD LOCK」や「4WD LOW」といったデフロックやローギアード切替モードはボタン1つで、「サンド/マッド」「スノー」「AUTO」という路面状況に応じた「セレクテレインシステム」切替もトグルスイッチ。つまりインターフェイスはデジタル世代そのもので、従来のジープならレバーでガコンと入れるか、ダイヤルで回すものだったはずだ。

利便性として変えるべきもの、逆に雰囲気の側に属するものとして変わって欲しくないもの、それらの区別と取捨選択が巧みになされた最新のジープ、それがコマンダーだと思う。

では続いて、対極の存在ともいえるラングラー・アンリミテッド・サハラ2.0Lは、富士ヶ峯オフロードでどんなふるまいを見せたか?(続きは後編にて)
記事に関わった人々
執筆:南陽一浩
1971年生まれ。慶応義塾大学文学部卒業。ネコ・パブリッシングを経てフリーに。2001年渡仏。ランス・シャンパーニュ・アルデンヌ大学で修士号取得。2005年パリに移る。おもに自動車やファッション/旅や食/美術関連で日仏独の雑誌に寄稿。2台のルノー5と505、エグザンティア等を乗り継ぎ、2014年に帰国。愛車はC5世代のA6。AJAJ会員。

撮影:小川亮輔
1986年生まれ。幼少期から父親の影響でクルマに惹かれている。独身時の愛車はシボレー・コルベットC5 V8 5.7Lのミレニアムイエロー。現在はレンジローバーV8 5.0L(3rd最終型)に家族を乗せている。2022年、SNSを通してAUTOCAR編集部の上野太朗氏に発掘される。その2日後、自動車メディア初仕事となった。instagram:@ryskryskrysk

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