オフローダーの進化に感動 ランドローバー・レンジローバー ネカフ・ジープ 質実か贅沢か 後編

2023.09.01 00:00
公開 : 2023.07.29
オフローダーの元祖、ウイリスMBから80年以上。最新技術満載のレンジローバーはどれほどの進化を遂げたのか。悪路での比較で確かめました。
走破性では劣らないM38A1型ジープ
ランドローバー・レンジローバーで、オフロード・モードを選択。エアサスペンションが車高を持ち上げ、クリアサイト・グランドビューと呼ばれる機能が有効になる。

ボンネット直下の地面をカメラが映し出し、車内のモニターで確認できる。どこを走っているのか、手に取るようにわかる。
【画像】オフローダーの進化 ランドローバー・レンジローバー ネカフ・ジープ 現行モデルも 全117枚
ヒルディセント・コントロールを有効にし、ローレンジを選ぶ。レンジローバーは、ほぼ自動的に急斜面をゆっくり降りていく。この機能自体は特に新しいものではないが、毎回体験するたびに、その容易さには驚いてしまう。

途中で路面状況が大きく変化しても、動じる気配はない。平然と下りきった。

M38A1型のネカフ・ジープは走破性では劣らないものの、同様にリラックスしていられるわけではない。ローレンジを選び、下り始める。尖った岩を乗り越えると、跳ねるようにボディが揺さぶられる。

英国価格13万4865ポンド(約2427万円)もするレンジローバーのように、ホイールやボディの擦り傷は心配しなくていい。しかし、タイヤやブレーキ、クラッチが、必要な時に求めた能力を確実に発揮する保証はない。

ボディの幅は1.6mもないものの、坂の頂上などでは安定感が高い。車重が軽いため、勾配でタイヤが滑りそうになる場面も少ない。
快適という言葉からかけ離れている
幸運にも、今回は地面が乾燥していた。レンジローバーが履いていた20インチのミシュラン・オールシーズン・タイヤは、2695kgの車重を問題なく受け止めていた。酷く濡れていたら、状況は違っていただろう。

レンジローバーの全長は1.5m近くジープより長いものの、後輪操舵システムが機能し、入り組んだ森の中でも同等に身をこなす。横方向の斜面などではタイヤの向きを変えることで、接地面積を増やしトラクションを確保。安定性にも貢献している。
ダークブルーのランドローバー・レンジローバー P440e オートバイオグラフィーと、ダークグリーンのネカフ・ジープ M38A1
ただし、各制御ユニットとセンサーが複雑に連携するがゆえに、稀にシステムの判断に遅れや迷いが生じる。停止状態から後退で斜面を登る場面では、スロットル調整が難しく感じられた。それでも、2回目以降は学習するのか、スムーズさを増すのがスゴイ。

ランダムに露出している大きな石が、トラクション・コントロールに影響を与えることも。車内へ感知できる衝撃が届いていた。

とはいえ、こんな振る舞いへ気付けるのは、基本的には流暢に悪路をこなしている証拠でもある。走りを味わえてしまう。

ジープは、快適という言葉からかけ離れているため、細かなことへ気が回らない。筆者は過去に様々なクラシックカーを運転してきたが、初代のシリーズ1 ランドローバーが快適だと思えた、初めてのクルマになった。

M38A1の原型となるウイリスMBは、兵士を必要な場所へ問答無用に連れて行くという、唯一の目的のために開発されている。それは、しっかり果たされている。
極めて能力の幅が広いレンジローバー
急斜面の登りは、2台とも手を焼いていた。ジープは、タイヤの古いパターンが原因。ブロックが大きく、表面が磨かれたような岩では充分なトラクションを得にくいのだ。ぬかるんだ路面では、機能するのだが。

レンジローバーは、サスペンション・ストロークが少し足りていなかった。車高を一番持ち上げた状態にしても、起伏でタイヤの1本が路面から浮くことがある。63.0kg-mの最大トルクを持っていても、4本のタイヤへ有効には展開できない。
ランドローバー・レンジローバー P440e オートバイオグラフィー(英国仕様)
もっとも、今回は極端な条件だったといえる。現代の高級オフローダーは、極めて能力の幅が広いということは明らかだった。ドアのないM38A1と乗り比べれば、当たり前かもしれないが、それでもレンジローバーの有能ぶりには深く感心する。

ロサンゼルスの繁華街からドバイ郊外の砂漠まで、全世界の富裕層を快適に移動させることを目的に生み出されている。1台のレンジローバーでそれをこなせることに、驚かずにはいられない。
番外編:オフロードのプロとの差は歴然
サーキットを高速で走ることが得意なドライバーがいるように、オフロードに長けたドライバーもいる。これまでの経験と技術で、筆者のような凡人が手を焼く悪路へ、巧みに対処できる人がいる。

今回お呼びしたオフロード・コンサルタントのクリス・パット氏は、ランドローバー・ディフェンダー 110で撮影をサポートしてくれた。彼は、殆どスタックさせる様子がなかった。
ダークブルーのランドローバー・レンジローバー P440e オートバイオグラフィーと、ダークグリーンのネカフ・ジープ M38A1
レンジローバーが滑りやすい岩混じりの急斜面で苦労している横で、パットは優しくパワーを調整。グリップのギリギリのところを見極め、ディフェンダーをコントロールしてみせた。

彼は、観察と判断が重要だと話す。岩の表面の変化や凹凸を見極め、サスペンションへ掛かる負担を減らし、トラクションを僅かでも高められる場所を選ぶのだという。

危険な状況での、瞬間的な判断力にも感心させられた。複数の課題を同時に処理できる、精神的な余裕も持ち合わせていた。ディフェンダーに、高い信頼を抱いていることも印象的だった。走る速度域が低くても、筆者との差は歴然といえた。
新旧オフローダー 2台のスペック
ランドローバー・レンジローバー P440e オートバイオグラフィー(英国仕様)
価格:13万4865ポンド(約2427万円)
全長:5052mm
全幅:1990mm
全高:1870mm
最高速度:225km/h
0-100km/h加速:5.7秒
燃費:114.3km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:2695kg
パワートレイン:直列6気筒2996ccターボチャージャー+電気モーター
使用燃料:ガソリン
最高出力:440ps(システム総合)
最大トルク:63.0kg-m(システム総合)
ギアボックス:8速オートマティック(四輪駆動)
ネカフ・ジープ M38A1(1955年式/欧州仕様)
英国価格:約5000ポンド(約90万円/現在)
全長:3380mm
全幅:1570mm
全高:1570mm
最高速度:72km/h(予想)
0-100km/h加速:−秒
燃費:−km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1210kg
パワートレイン:直列4気筒2195cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:73ps
最大トルク:15.7kg-m
ギアボックス:3速マニュアル(四輪駆動)
記事に関わった人々
執筆:ピアス・ワード
英国編集部ライター

撮影:ジョン・ブラッドショー
英国編集部フォトグラファー

翻訳:中嶋健治
1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

オフローダーの進化に感動 ランドローバー・レンジローバー ネカフ・ジープ 質実か贅沢かの前後関係
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