この記事をまとめると
■CX-60には4タイプのパワーユニットが用意される
■今回はガソリンエンジンのプラグインハイブリッドモデルに一般道で試乗
■WLTCモードなら満充電で74kmのEV走行が可能
適切なドライビングポジションが取れる設計ポリシー
マツダCX-60にPHEVモデルがあることは承知していたが、一般道で試乗する機会が実現したのでリポートしよう。
CX-60は、これまで3.3リッター直6ディーゼルターボ+HVのパワートレインを搭載したモデルが先行デビューしており、その力強い動力性能と圧倒的な燃費性能に注目が集まっていた。ではPHEVの走りは? 燃費は? と興味が尽きないところだった。
外観的な意匠はほとんど変化なく区別は付けにくいが、唯一フロント左右フェンダーに配されたサイドバッジに「PHEV」と記載された文字がはめ込まれている(ディーゼルHVは「Inline6」の文字となる)。充電口の蓋が車体後部右側に追加されている点も違うといえるが。
運転席に乗り込むと、CX-60の上質なインテリアに改めて感心させられる。欧州のプレミアムブランドと比べても見劣りしないデザインと作り込みにハイセンスなカラーコーディネイトが施されていて、マツダがCX-60にかける情熱や意気込みが伝わってくる。おそらくグローバル展開で上質さを訴求する重要性を認識した結果といえるだろう。
ドラオビングポジションも設計ポリシーに則り着座した正面にステアリングが配置され、ペダルレイアウトも適切だ。シートやステアリングコラムは電動アジャスト式で、理想的なポジションをすぐに決めることができる。
幅広いセンターコンソールが運転席と助手席の間を埋め、豪華な装備が並び揃う。そして「スタート・ストップボタン」を押せばシステムが起動し「READY」のスタンバイ状態となる。
PHEVのパワートレインは2.5リッター直4直噴ガソリンエンジンを縦置き配置し、クラッチを介して129kWを発する強力な駆動モーターに繋げられる。さらにクラッチを介し、トルコンレスの8速ATが連なり、トランスファーとプロペラシャフトを経て前後アクスルに駆動力が伝わる仕組みだ。
EV走行時は過度な加速特性がなくジェントル
PHEVは走り始めからほとんどの速度領域でEV走行が可能だ。それゆえトルクピックアップに優れ、スムースで静かで滑らかな走行フィールが得られている。かといって2090kgの車重に対して圧倒的なトルク値ではなく、8速ATの変速も介在するので、多少ラフなアクセルワークをしても、世に多くあるハイパワーEVのような暴力的な加速はさせず、車格に合ったジェントルな走行感覚に仕上げられているのだ。
一般道、高速道路もすべてEVで走行できるが、駆動用バッテリーは17.8kWhと同クラスのBEV(バッテリー電気自動車)に比べ容量は小さいので、HVモードを使って必要なシーンのためにバッテリー充電量を温存しておくことを勧めたい。WLTCモードでのEVレンジ走行距離をみると74km走行可能なので、家庭で毎日充電できる環境があるならEV車として扱える。一方で、50リッターの燃料タンクにレギュラーガソリンを満タンにしてさえおけば、800kmを超える総航続距離が可能となるだろう。
高速巡航は静かで快適。サスペンションはバネレートが硬くなく、コーナーではリヤサスペンションのロールセンターが低く車体ロールを感じさせるが、それがインリフトとアクスルのジャッキアップ入力を低減し内輪の接地性を高めているので、電動モーターの発する低速域からの大トルクを後輪でまず受け止める準備をシャシー側でもしている、ということだろう。
だがしかし、路面のちょっとした段差通過時や、ともすれば路面塗装の小さなギャップでもリヤタイヤ/ホイールが「ダン、ダン」と衝撃波を発し、きついハーシュネスが感じられる。これはXD-HYBRIDでも同様だが、マルチリンク式リヤサスペンションの一部接続部がピロボール化で剛結されていることによると考えられる。
一般的にはラバーブッシュなどで力を逃がし、車体側への衝撃を和らげつつコンプライアンスステアで安定性を確保するのだが、ピロボール化によりトー変化を起こさない剛性にこだわった結果、ハーシュが収斂されることなく車体に伝わってしまうのだろう。
この味付けは試乗してみないと感じられず、理解するのは難しいと思うので、路面段差のある部分で確認試乗することを勧めたい。
実用燃費的には13〜14km/Lといったところで、XD-HYBRIDの20km/L台かつ軽油による燃料価格の差を考慮すると、経済性はXD-HYBRIDに軍配が上がりそうだが、充電インフラがあり日々をEVレンジのみで過ごせるなら状況は変わる。V2L(車両の駆動バッテリーから家電機器に給電)やV2H(車両の駆動バッテリ−から充放電設備を介して家の電力源として活用)などの大容量バッテリー搭載車としての活用範囲の広がりや災害時予備電源車としての位置づけなど、PHEV車ならではの価値も見過ごせない部分だろう。