この記事をまとめると
■日産セレナの最上級モデル「e-POWERルキシオン」は約480万円のプライス
■価格で比較するとこれはエルグランドを狙えることになる
■セレナとエルグランドではクラスが違うので共食いする可能性は低い
新型セレナの最上級モデル vs 高級ミニバンのエルグランド
新型セレナは、e-POWERルキシオンというグレードを用意した。エアロパーツを装着する外観は、基本的にe-POWERハイウェイスターVとほぼ同じだが、装備を充実させて独自の「e-POWERルキシオン」というグレード名を付けた。
e-POWERルキシオンの装備内容でもっとも注目されるのは、プロパイロット2.0の標準装着だ。この機能があると、ステアリングホイールから手を離した状態でも運転支援を受けられる。そして、e-POWERルキシオンには、プロパイロット2.0に加えて、車外から車庫入れを操作できるプロパイロットリモートパーキングを設定し、合成皮革のシート生地も装着した。これらはほかのグレードではオプション装着できないe-POWERルキシオンの専用装備だ。
このほかにもe-POWERルキシオンは、ほかのグレードにオプション設定される日産コネクトナビ、SOSコールなどを標準装着している。したがって、e-POWERルキシオンは価格が突出して高く、479万8200円に達する。これは、e-POWERハイウェイスターVを111万2100円上まわる価格だ。
この価格差のうち、約56万円はe-POWERハイウェイスターVに設定されたオプション装備の標準装着で埋まる。残りの約55万円が、e-POWERルキシオン固有の装備とされるプロパイロット2.0/プロパイロットリモートパーキング/合成皮革シート生地の対価だ。進化した運転支援機能とされるプロパイロット2.0の正味価格は40〜45万円になるため、e-POWERルキシオンが割安とはいえないが、納得のできる価格に収まる。
セレナにe-POWERルキシオンを用意した理由として、日産の最上級ミニバンのエルグランドが、発売から約13年を経過したことも挙げられる。エルグランドの設計が古くなり、2022年の1カ月平均登録台数は、約190台に落ち込んだ。
2022年のセレナは、フルモデルチェンジを控えた先代型の状態だったが、1カ月平均で約4800台を登録している。エルグランドは先代セレナの約4%だ。
装備が充実してもセレナはエルグランドの代わりにはなれない
このままエルグランドを放置すると、ユーザーをこれから発売される新型アルファードなどに奪われる心配がある。
そこで新型セレナは、e-POWERルキシオンを用意したとも言える。従来型エルグランドの商品力をカバーして、エルグランドの乗り替え需要をセレナe-POWERルキシオンに誘導する狙いがある。
エルグランドの価格は、直列4気筒2.5リッターエンジンを搭載する250ハイウェイスタープレミアムが479万7100円だ。セレナe-POWERルキシオンの479万8200円とほぼ等しい。
両車を比べると、エルグランドはLサイズミニバンだから、ボディが大柄で外観は立派に見える。インパネの周辺も上質だが、内装はセレナも現行型になって見栄えを大幅に引き上げた。質感の差は近付いている。
居住性は互角だ。1/2列目のシートはエルグランドが豪華だが、3列目の座り心地はセレナが勝る。エルグランドは1/2列目を重視して開発され、3列目は床と座面の間隔が不足して足を前方へ投げ出す座り方になる。
そしてパワーユニットは、セレナはハイブリッドのe-POWERで、エルグランドはノーマルタイプの2.5リッターだ。衝突被害軽減ブレーキや運転支援機能は、プロパイロット2.0などを標準装着するセレナe-POWERルキシオンの圧勝になる。したがって、ほぼ同価格のエルグランドとセレナを比べると、機能では明らかに後者が勝り、買い得といえる。
ただし、先進装備の充実を理由にエルグランドからセレナへの乗り替えが進むかといえば、そこは難しい。Lサイズミニバンでは外観の見栄えも重要で、エルグランドのユーザーもそこを重視して選んでいるからだ。見栄えに関しては、いまでもエルグランドが勝る。また、車両のヒエラルキーでもエルグランドが上まわり、ノートe-POWERルキシオンへの乗り替え需要を誘致するには困難が伴う。
日産はかつて上質なコンパクトカーのティーダを廃止して、そのユーザーを先代ノートメダリストへ受け継ごうとしたが、実際にはそうならなかった。そこでノートオーラを用意した経緯がある。ユーザーの気持ちを考えると、セレナがいくら頑張っても、エルグランドの代わりにはなれない。日産は新型エルグランドを早急に開発すべきだ。