高速域でモーターが単なるお荷物に! 燃費無視では本末転倒! 一見成立しているハイブリッドスポーツの問題点をレーシングドライバーが指摘

2023.03.29 17:30
この記事をまとめると
■スポーツカーのHVに先鞭を付けたのはポルシェ911GT3 Rだった
■ハイブリッドのスポーツカーでは、モーターがアシストできる速度に制限があるのが問題だった
■スーパーカーやスポーツカーの電動化は、さらに高い技術力とともに進化していくことになる
モーターを積極的に利用する現代のスポーツカー
  HV(ハイブリッド)車といえば、1997年登場の初代トヨタ・プリウスが先鞭をつけ、圧倒的な燃費性能を実現させて一気に世界をリードする技術となった。
  ひとことでHVといっても、その仕組みや機構、構造などはさまざまで、近年はマイルドHVやストロングHVなどとネーミングで差別化が図られるようになった。なかにはジェネレーターをモーターとして駆動させベルト駆動でエンジン回転をアシストするような簡単な仕組みのものもあり、HVといっても一様ではい。
  しかし、プリウスを初め多くのストロングHV車は高出力のモーターを駆動用に用いていて、ゼロ回転から最大トルクが発揮できるという電動モーターの特性をうまく利用し、コンパクトカーや低燃費が売りの実用車でも発進・加速の力強いトルクピックアップの良さに「走る歓び」を感じ取ったユーザーも多いだろう。
  実際、多くのエンジニアも同様に考え、スポーツカーにモーターを搭載しHV化に取り組んでいる例もたくさんある。
  スポーツカーのHVに先鞭を付けたのはポルシェ911 GT3 Rではないだろうか。2009年からF1マシンに搭載が義務付けられた「KERS(キネティックエネルギーリカバリーシステム)」をスポーツカーである911 GT3 Rのレースプロトタイプに採用したのだ。助手席の位置にF1で有名なコンストラクターであるウィリアムズ社が開発した装置を搭載していた。ブレーキング時に前輪から回生を行い、装置内の円盤(フライホイール)を高速回転させて運動エネルギーを保存。加速時にはそのエネルギーを放出して最大120kWのパワーアシストを行う。
  スポーツカーがサーキットを走る場合、もっとも問題となるのがブレーキングだ。通常ディスクブレーキで熱交換し減速させるが、連続走行ではブレーキがフェードして利きにくくなってしまう。そのため、ブレーキシステムを大型化し、かつクーリング性能を高めておかなければならない。ブレーキディスクが蓄えた熱は大気に放出するしかなく、そこに大きな無駄が生じていると多くのエンジニアは考えていたのだ。
  KERSの搭載でブレーキシステムへの負荷が減少し、加速にも活かせるのは物理のエネルギー保存の法則に見事に則っているものだった。
モーターアシストの限界をいかに高め効率化を図れるかが課題
  しかし、一般道ではそれほど強力な減速Gを伴わない。そこで乗用車的にはバッテリーを搭載し、電気エネルギーに変換することで現在あるようなHVシステムが一般的になったといえる。
  バッテリー蓄電による電気的HVシステムを搭載するスポーツカーとしてはホンダNSXがある。前輪アクスルに左右個別の電動モーターを配置し、減速時は回生し、加速時はパワーアシストする仕組みだ。加速時には4WDとなることで高い駆動力を発揮することができるのだが、問題は前輪モーターがアシストできるのは時速180km以下という速度制限があったことだ。
  4WDの安定感で時速180kmまで安心して加速させながら、それを超えた瞬間にトリッキーな後輪2輪駆動になってしまうのは、サーキット走行では大きな問題になる。加えて時速180km以上ではHVシステムがただのお荷物になってしまうわけで、これでは完全とはいえない。電動モーターの高回転化、あるいはリダクションギアを介してV-MAX(最高速度)領域まで4WDとして制御する必要がある。
  だからといってバッテリー容量をBEV並みに大型化しては重量が増し運動性能も低下してしまう。バッテリー電力を消費したら内燃機関で発電しながら前輪モーターを駆動する必要に迫られ、そうするとエンジンパワーが制限されてしまう。
  クラウン・クロスオーバーはトヨタ独自のe-Fourシステムで、理想的なパワーマネージメントを完成させているが、走りに特化する分、燃費的にはHVのメリットが活かせなくなってしまってもいる。
  レーシングマシンレベルで見れば、WEC(世界耐久選手権)を走るLMH(ル・マン・ハイパーカー)クラスのマシンやF1、スーパーフォーミュラなども電動化を図って高いパフォーマンスを成立している。
  近くメルセデスAMGはF1マシンのパワートレインを搭載するスーパーカー「AMG ONE」を完成させ、デリバリーを開始するといわれている。
  スーパーカー、スポーツカーの電動化は、今後さらに高い技術力とともに進化して登場してくると思われるのだ。

あわせて読みたい

プラグインハイブリッドのスーパーSUV「ランボルギーニ・ウルスSE」がデビュー
webCG
アテーサからe-4ORCEまで……脈々と受け継がれる日産4WDの系譜は「R32GT-R」から今の「アリア」に伝承!
ベストカーWeb
カゴメの新にんじん100%ジュース、そのおいしさの秘密は!?
antenna
お…おおお…これカッコいいぞ…新型エクスパンダークロスに待望の新開発HV追加!! タイで発表、日本でも売ってよーー!!
ベストカーWeb
トルク番長好きにはうれしい時代が到来!? 湧き上がるパワーはガソリン車よりBEV!!
ベストカーWeb
限界に挑戦し続ける姿勢とサステナブルな価値観。ヨットレース「アメリカズカップ」に世界が熱視線を送る理由
antenna*
やっぱりルノーは面白れ〜! F1由来の技術を詰め込んだバカッ速シティコミューターが凄すぎて笑う
WEB CARTOP
ポルシェ初のフル電動SUV、新型マカンがワールドプレミア
octane.jp
dアニメストアが新テレビCMを公開!
antenna
【試乗】雪道で見せつけられた電動車の優位性! レーシングドライバーが最新日産車を雪上で一気乗り!!
WEB CARTOP
エンジンで発電するならそのままエンジンで走ったほうが効率いいんじゃない!? シリーズハイブリッドはなぜエコなのか?
WEB CARTOP
焙煎所移転を機に併設されたSingle O Ryogoku Caféをグランドオープン
PR TIMES Topics
キャプテンスタッグが電動折りたたみ自転車をリリース!街でもアウトドアでも使える「eバーギー電動FDB206」
smart
日産の四駆技術はひと味違う! 「e-4ORCE」がもつ圧倒的な強みとは?
WEB CARTOP
東急の新しいデジタルチケットサービス「Q SKIP」の魅力
antenna
歴史的瞬間に立ち会えるかも!! 全長約2.5kmなのにコーナーは20も!! 東京初開催のフォーミュラE波乱の予感!?
ベストカーWeb
ブランド初のBEVも用意! アルファ・ロメオから新型コンパクトSUV「ミラノ」登場
webCG
トマトジュースという枠を超えて心を豊に満たす、大人のドリンク
PR TIMES Topics
メルセデスAMG GT 63 S Eパフォーマンス GT4ドアクーペに電動化モデル 3340万円
RESENSE
「DS3 ハイブリッド」「DS4 ハイブリッド」、充電不要のフレンチスタイルの快適さ
CARSMEET WEB
世田谷のまちの雰囲気を味と香りに落とし込んだオリジナルブレンドコーヒー「まちの珈琲」販売
PR TIMES Topics