日本カー・オブ・ザ・イヤーに輝いた日産サクラをはじめ、国内外からさまざまなモデルが登場 した2022年。しかし、日産が世界初となる量産EVとして初代リーフを発売したのは2010 年。今年度他社がようやくスタートラインに立った状況において、既に10年以上の経験と実 績があるのだ。今回はそんな日産のEV3台の一気乗りを敢行した。
12年以上の信頼と実績で世界のEV市場をリード
日産が世界に先駆けて量産型の電気自動車・リーフを発売したのは2010年のこと。すなわち、すでに12年の時が経過したことになる。そのリーフも今では2代目へと移行。今ではEVエントリーモデルを支える軽自動車規格のサクラ、そしてラージSUVで日産EVのフラッグシップとも言えるアリアなど、ラインアップを拡充している。
一見すればそれはかなり順調な流れだが、実際には、いくつもの課題と技術革新をひとつひとつクリアしたうえで、今の状況がある。
第一に考えられるのはやはり、充電インフラだ。日産は発売以来、充電スタンドに対して250億円以上の投資を行ってきたという。いま、急速充電器の数は8400基(2022年6月末時点 ゼンリン調べ)あるが、じつはそのうちの約25%が日産の販売店に設置されたものなのだ。こうした環境整備へ向けた取り組みはまだまだ続き、2026年までにさらに200億円を投資してEVの普及に努めていくことを宣言している。EVを売りっぱなしにはせず、時には他社EVをも支える充電インフラを整えようという姿勢は、やはりEVのパイオニアとしての自負と、ユーザーファーストの思いが感じられる。
充電インフラに対しては政府も2030年までに今のおよそ5倍へと増やそうと計画している。現在、急速充電器と普通充電器を合計すると約3万基(2022年6月末時点 ゼンリン調べ)だから、それすなわち15万基もの充電インフラが整う未来がもう見えてきたのだ。官民一体の取り組みにより、EVがより身近な存在となることは間違いなさそうだ。
そのほかにも、日産にはEVのパイオニアとして、感心すべき立ち振る舞いがある。それは使用済みバッテリーに対する取り組みを、なんと初代リーフの発売前から行っていることだ。”リユース/リセール/リファブリケート/リサイクル”を意味する「4R(フォーアール)エナジー社」を立ち上げ、中古となったバッテリーの性能を見極めてグレーディング。中古EV、フォークリフト、蓄電器、簡易充電器などに生まれ変わらせているのだ。ここでも”売りっぱなしで終わり”にはしないという強い思いが感じられる。
さらに当たり前の話ではあるが、サプライヤーなどに対する安全性への要求基準も、かなり厳しいようだ。これまで1億セル以上のバッテリーをリリースしながらも、それらに起因する重大事故はないという。
EVに関する難題を、すべてを当然のようにこなす姿勢……そこが日産EVの強みだ。
EVによっては過度な加速感を演出し、結果的に扱いにくくなっているモデルもあるが、日産EVはアクセルの踏み込み量に応じたリニアな加速感を実現。意のままに走ることができる。
アクセルを踏み込めばレスポンスよく加速、アクセルを戻せばモーターの回生で減速と、アクセルペダルだけで車速を調整できるe-Pedal Stepはアリアとサクラに採用。ワインディングなどをアクセルペダル操作だけで小気味よく走る爽快感は格別。
他社EVを上まわる圧倒的な静粛性を誇る日産EV。アリアでは遮音ガラスや吸音タイヤ採用のほか、モーター音を下げる最先端技術採用でさらなる静かさを実現。前後席での会話も快適。
単純な制御ではモーターの動きに駆動部品がついて行けず、走り出しでガクガクする挙動が出てしまうため、EVによっては発進加速を緩めにせざるを得ないケースもある。日産EVは独自の制御技術でガクガクした挙動がでないよう制御し、発進時から素早く滑らかに加速することができる。
10年以上のEV販売・サービス経験をもつ日産は、全国の販売店、約1900店舗に急速充電器を設置。店舗によっては24時間利用可能となっており、出先における充電の強い味方。
1990年からの研究をベースに、バッテリーもモーターも、ゼロから自社開発してきた日産。厳しい設計基準は、サプライヤーも尻込みするほど。常に最先端のバッテリー技術を投入しており、一般的な汎用リチウムイオン電池とは比べものにならない耐久性を実現。
デイズの基本骨格を使いながらも、センタートンネル内に日産の十八番となるラミネート式バッテリーを上手く搭載することで軽規格のコンパクトな外観サイズに広い室内を実現するEVを成立させたサクラ。既存のFF用リヤサスペンションではスペースが取り合いになってしまうため、デイズ4WD用の3リンク式を搭載。フロントモーターにはノートe-POWER 4WDのリヤ用を使う。このような努力もあり、結果としてEVとしてはリーズナブルに仕上がった1台だ。走りはかなり本格的。軽ターボ車のおよそ2倍となる195N・mのトルクがスッと立ち上がり、街中における軽快さなど、これまでの軽自動車にはなかった世界を実現。静粛性も軽レベルを遙かに超えている。
軽自動車初となるプロジェクタータイプの3眼ヘッドランプ、格子をヒントにしたワイドなLEDリヤコンビランプなど、洗練された外観デザインを採用。
2つの大型ディスプレイを水平方向にレイアウトし、視認性と先進性を両立。高品質なファブリックを広範囲に採用するなど、軽レベルを超える上質空間を実現。
EV専用プラットフォームを採用したアリア。サイズとしてはかなり大柄になるものの、じつはEVならではのコンパクトなパワーユニットに合わせて車体を設計していることもあり、大径タイヤでありながらステアリングの切れ角がかなり大きいことが特徴のひとつだ。おかげで取りまわしがかなりしやすい。上級仕様の4輪駆動「e-4ORCE」採用車では、駆動制御によって曲がりやすさも高めている。またモーターは従来の永久磁石をやめ、巻線界磁モーターを採用。モーター音の発生を抑え、静粛性を高めていることも特徴のひとつ。さらに遮音ガラスや吸音タイヤを採用することで、静粛性を格段に引き上げている。ハンズオフ可能なプロパイロット2.0も設定。
短いオーバーハング、低く滑らかなルーフライン、空力性能も考慮した大径ホイールなど、スポーティさと高級感を兼ね備えた上質なエクステリアデザイン。
従来のような物理的スイッチを廃し、クルマの電源を入れるとともにアイコンが浮かび上がるタッチセンサーをレイアウト。広大でフラットなフロアも特徴。
2代目となったリーフは、初代が課題としていた航続可能距離を引き伸ばしたところがポイントのひとつだ。60kWhバッテリー搭載の「e+」であれば、一充電走行距離はWLTCモードで450㎞を可能。標準の 40kWhバッテリー搭載車であっても322㎞を記録している。これならロングドライブでも充電残量を気にすることなく、走破することが可能だ。走ればかなりパワフル。1/10000秒単位でトルク制御を行うモーター制御は、じつに緻密であり、ドライバーの神経伝達がそのまま展開されるが如く思い通りに出力を生み出せるところも見どころのひとつ。右足だけで、ほぼすべてをコントロール可能なe-Pedalも扱いやすい仕上がりだ。
2022年4月に一部仕様向上を実施。イルミ付きエンブレム、個性的なデザインのアルミホイール、白さを追求した「ピュアホワイトパール」の外装色などを採用。
オーソドックスな作りのインテリア。ヒーター付きの本革巻きステアリング、9インチワイドディスプレイのEV専用NissanConnectナビなど、装備は充実。
EVというと充電インフラに不安を持ってしまいがちだが、普段の足としての近距離移動が主な状況であれば、自宅の普通充電を活用することで概ね解決できるユーザーも、じつは少なくない。一日に何㎞走る必要があるのかなど、今一度自らの生活を見直して見ると、案外自宅充電だけでこなせる人も多いかもしれない。そもそも、常に満充電にしておく必要もないのだから。タイマー機能を使って夜間電力がお得な電気料金プランと組み合わせてタイマー機能を有効活用すれば、よりリーズナブルにEVが楽しめるだろう。
EVに乗る前に知っておきたい充電トリビア
急速充電はバッテリーが適度に温まってから!
じつは充電速度は常に一定というわけではない。バッテリーが冷たすぎても熱すぎてもダメで、充電速度が遅くなるのだ。アリアにはバッテリーの昇温機能、アリアとサクラには冷却機能も備えられている。例えば、冬場は少し走ってバッテリーを温めてから急速充電を行うなど少しの工夫によって、もっと快適にEVは扱えることは間違いない。充電パフォーマンスはユーザーの使い方次第で変わるのだ。
車種に応じて急速充電器を選ぼう!
EVは車種によって最大充電電力が異なるので、出かけた先での急速充電器選びについても、知っておくと便利なポイントがある。サクラは最大充電電力が30kWに抑えられており、どの充電器でも結果はほぼ同じ。古い急速充電器に多い中速(20~40kW)でOKだ。リーフは最大充電電力50kWだから、高速タイプ(40~90kW)がベター。充電電力が高いリーフe+(100kW)とアリア(130kW)は一部の日産販売店などに設置が進む超高速タイプ(90kW以上)が効率的だ。