心から楽しいと思える自由は、ルールの中にあるもの

2021.03.26 22:30
俳優・田辺誠一さんが番組ナビゲーターを務め、ゲストの「美学」=信念、強さ、美しさの秘密を紐解き、そこから浮かびあがる「人生のヒント」を届ける、スポーツグラフィックマガジン「Number」と企画協力したドキュメンタリー&インタビュー番組『SHISEIDO presents才色健美 ~強く、そして美しく~ with Number』(BS朝日、毎週金曜22:00~22:24)。3月26日の放送は、これまでに番組内で紹介してきた約3000枚の写真の中から、4人のカメラマンがベストショットを選出。その理由と、アスリートたちの“言葉”を辿った。
■自分を強くしてくれるもの
番組最多となる51人のアスリートを撮影した松本輝一カメラマンが選んだのは、サッカー選手の岩渕真奈さんが練習後にチームメイトと食事を楽しむワンカット。ピッチの中では見られないおちゃめな表情が岩渕さんの飾らない人柄を伝えている。
現在、イングランドのアストン・ヴィラLFCに所属する岩渕さんが目指すのは、日本代表として出場する東京オリンピックでのメダル獲得。「サッカーがなかったら今の自分はないし、これからもサッカーのない未来は考えられません。自分を強くしてくれるものがサッカーなんだと思います」と話す岩渕さん。サッカーへの特別な思いを抱えて、目標に突き進む。
■心から楽しい自由は、ルールの中にこそある
アウトドア派の山元茂樹カメラマンの印象に残っている写真は、2020年に現役を引退した元プロ野球選手の藤川球児さんの1枚。ボートの上に立ち、趣味のバスフィッシングに熱中している藤川さんの写真は、ベストなアングルを探りながら、長時間かけて撮られたものだった。
冬晴れの湖で楽しそうに笑う藤川さんは、プロ野球もバスフィッシングも「ルールがあるから面白い」という。「何もない中での自由って、ものすごく不安定ですよね。誰にも縛られないということは、誰にも必要とされないということ。心から楽しいと思える自由は、ルールの中にあるものなんです」。
ルールの中で自由を求めながら、理想の自分に近づいていく。藤川さんは「たくさんの人と出会って、その人たちから影響を受けながら、自分しかできない人生の送り方をしたい。そのために、自分勝手はやめないといけませんね」と語った。
■姿勢を良くすると自信が湧いてくる
オリンピックやサッカーのワールドカップなど歴史的瞬間に数多く立ち会ってきた杉山拓也カメラマンが選んだのは、プロゴルファー・成田美寿々さんのインタビュー後に撮影したワンカット。ファンだという宝塚歌劇団を彷彿とさせるような、成田さんの強さが表現された1枚になっている。
競技中も背筋を伸ばし、胸を張って歩く。そんな自身のスタイルについて成田さんは「いつも見られている、撮られていると思うようにしています。スコアが悪くても、姿勢を良くすることは意識していますね。それが自信に繋がります」と明かした。
■入念な準備と努力をしても、失敗することがある
ドーハの悲劇など、スポーツの歴史的なシーンを撮影してきたベテランの佐貫直哉カメラマンは、8年ぶりに東北楽天ゴールデンイーグルスへの復帰を果たした、プロ野球選手の田中将大さんの写真をセレクト。当時、メジャーリーグのニューヨーク・ヤンキースに所属していた田中さんの球場での1枚は、インタビュー前に撮られたもの。取材時に球場でマーチングバンドが練習を始めてしまい、急遽インタビューよりも先に写真撮影が行われた。
田中さんの座右の銘ともいえるのが「しょうがない(仕様がない)」という言葉。「準備も努力もしていなかったわけではなく、いろいろやった上で起こってしまったことに対しては、それはもう“しょうがない”となる。次に成功するためにはどうするか、良い方向に持っていくには何をしようかと考えることの方が大事だと思います。僕にとっては切り替えの言葉ですね」と説明した。
3月26日(金)の放送で最終回。公式サイトでは、これまで番組に登場したアスリートの写真が見られるコーナー「with Number Photo Gallery」も設置されている。