他人の真似にアレンジを加えて、オリジナルの強みをつくる

2021.03.12 22:30
俳優・田辺誠一さんが番組ナビゲーターを務め、ゲストの「美学」=信念、強さ、美しさの秘密を紐解き、そこから浮かびあがる「人生のヒント」を届ける、スポーツグラフィックマガジン「Number」と企画協力したドキュメンタリー&インタビュー番組『SHISEIDO presents才色健美 ~強く、そして美しく~ with Number』(BS朝日、毎週金曜22:00~22:24)。3月12日の放送は、元バスケットボール選手の吉田亜沙美さんが登場。二度の引退に思うこと、女子バスケットボール界の未来、苦手な分野の克服法などを語った。
■世界でも通用するポイントガードを育てたい
高校時代から日の丸を背負い、2016年のリオデジャネイロオリンピックでは日本代表チームのベスト8入りに貢献。攻撃の起点となり、ゲームメイクを行うポイントガードとしてチームをけん引してきた。2019年3月にはコートを去るが、東京オリンピックへの思いが捨てられず、同年9月に現役復帰。しかし、2021年1月に二度目の引退を発表する。その理由について吉田さんは、「東京オリンピックに出るためだけに戻ってきたので、開催の延期が決まった段階で、もう一度モチベーションを上げていくのが難しいと感じていました。自分の中で整理はついていましたが、もしかしたら“やりたい”という気持ちになるかもしれないので、自分のわがままですが、年を越すまでは待ってもらいました」と明かした。
吉田さんの次の目標は指導者。そして、思い描く女子バスケットボール界の未来がある。「日本で強い女子のスポーツといえばバレーボールやサッカーがありますけど、バスケットボールもその中に入りたいですし、他の競技と足並みを揃えて、女子スポーツ界を引っ張る存在にしていきたいです。そのためには結果を残さないといけない。何年かかってもいいですから、日本代表のコーチになって、世界でも通用するポイントガードを育てたいと思っています」。
選手時代は自身も司令塔として活躍。正確無比なパスで相手チームを翻弄する一方、シュートが苦手という弱点もあった。その原因について吉田さんは、「高校時代は自分が得点しないと勝てないチームだったので、シュートが打ち放題だったのですが、Wリーグ(バスケットボール女子日本リーグ)に入ったら、周りに得点が取れる選手がたくさんいて、自分がシュートを打たなくても勝ててしまったんです。1~2年くらいシュートを打たないうちに、その感覚を忘れてしまいました」と振り返る。
しかし、海外遠征や世界大会などで海外チームの強さを目の当たりにし、弱点の克服を決意。とにかくシュート力の高さに驚いたという。「強いチームは、5人が5人ともどこからでもシュートを決められる。ディフェンスに付きづらいし、それが相手チームにとってはとても脅威だということを肌で感じました。そこからはもう、ひたすらシューティングの練習に励んでいました」。
■上達するために、真似をするところから始める
シュート上達のために行ったことがある。吉田さんは「誰かが上手い選手にシュートを教えてもらっているときに、盗み聞きしたりしました(笑)。あと、他人のシュートをよく真似していました。真似をするということは、その人の手から足まで、全ての動きを見て覚えるということなので、そこからアレンジを加えて、オリジナルにしていけば、それが自分の強みになる。何かを上達させるには、真似をするところから始めると良いと思います」と話す。
練習中は試行錯誤を繰り返し、自分の最適解を見つける作業に没頭。高い集中力を発揮した。「2時間なら2時間の練習時間にすべてを注ぎ込みますし、試合でも40分間に全精力を傾けます。終わった後はもう何も考えなくていいくらい頭を使っている。逆に、練習や試合が終わったら、一切バスケットボールのことは考えません」。
結果を出すために必要なメリハリ。オンとオフを意識しながら毎日を過ごす。吉田さんは、そんな自身のスタイルについて、「自分で考えて悩むことは大切ですけど、悩んで答えが出ないなら、その時間がもったいないし、ネガティブになって落ち込むくらいなら、切り替えたほうがいいですよね」と語る。
自分の今できることを精一杯やる。それは現役を退いた今も変わらない。吉田さんは「いろいろな選手と出会い、考えを聞いて、自分のものにしていきたいですね。みんなの思いを私が伝える機会もあるだろうし、これからもバスケットボールとともに人生を歩んでいきます」と誓った。
次回3月19日の放送は、サッカー元日本代表の中村憲剛さんが登場する。