俳優・田辺誠一さんが番組ナビゲーターを務め、ゲストの「美学」=信念、強さ、美しさの秘密を紐解き、そこから浮かびあがる「人生のヒント」を届ける、スポーツグラフィックマガジン「Number」と企画協力したドキュメンタリー&インタビュー番組『SHISEIDO presents才色健美 ~強く、そして美しく~ with Number』(BS朝日、毎週金曜22:00~22:24)。2月5日の放送は、女子ラグビー選手の大竹風美子さんが登場。ラグビーとの出会い、子どもの頃に抱いていた劣等感、コロナ禍で考えたことなどを語った。
■思い切って一歩を踏み出したからこそ、今の自分がある
「セブンズ」とも呼ばれる7人制ラグビーは、15人制ラグビーと同じフィールドを使用するオリンピックの正式種目。人数が少ないため、スピーディーな試合展開になることも多い。チームでも抜群の足の速さを誇る大竹さんは「相手を止めたときも気持ちいいですし、トライしたときも気持ちいいんですけど、特にディフェンスを抜いて、風を切って走る瞬間が最高です」と力説する。
大竹さんがラグビーに出会ったのは大学時代。きっかけは体育の授業だった。「バスケットボールの授業中に、ドリブルをせずにボールを持って走ってしまったんです。その姿を見ていた先生がたまたまラグビー部の顧問で、スカウトされました。私がラグビーに向いていると思ったみたいです」。
こうしてラグビー選手になった大竹さんは、わずか1年で日の丸を背負うまでに成長。もともと中学校では短距離走、高校では七種競技の選手だった大竹さんは「大学でも新しいことにチャレンジしてみたかった。短距離走から七種競技に転向したときも、やってみたらだんだん面白くなってきて、気づけばワクワクしていたし、達成感も味わえました。きっとラグビーでも同じ気持ちになれると思って」と述懐する。
やると決めたら、迷わずに突き進む。それが大竹さんのモットーだ。「今までやってきた競技とは違うわけですから、“うまくいかなかったらどうしよう”という不安もありました。でも、それ以上に新しいスポーツに挑戦できることが楽しみでしたし、思い切って一歩を踏み出したからこそ、今の自分があると思うんです」。
現在、日本代表ではチームの中心選手として活躍。ナイジェリア人の父と日本人の母を持つ大竹さんは、高い身体能力を与えてくれた両親に感謝しているという。しかし、子どもの頃は自分の見た目にコンプレックスを感じていたと告白する。「からかわれたり、いじられたりして、いつも家に帰って泣いていました。他人と違うということに引け目を感じていて、家族で出かけるときは、いつもお母さんの後ろに隠れているような子だったんです」。
その劣等感を払拭してくれたのも母親だった。大竹さんは「お母さんが小さい私を肯定してくれたんです。励ましてくれたり、お父さんの国の文化を教えてくれたりして、だんだんと自分に自信が持てるようになりました。足の速さなどはお父さんから譲り受けたものだと思うし、今は“この血を授けてくれてありがとう”と、胸を張って伝えたいです」と話す。
肯定することの大切さを知った大竹さんは、ラグビーの代表チームでも、2年前にチームメイトを励ます“ポジティブリーダー”という役割を担当。仲間が落ち込んでいるときには、独特のやり方で元気づけた。「落ち込んでいたり、苦しんでいたりしたときは、それはそれで受け止めてもらうんです。スポーツをやっていれば誰でもネガティブになることは絶対ありますし、そこは否定しません。一旦、ネガティブでOKと肯定して、そこからポジティブな方向に持っていくことを考えました」。
しかし、ポジティブリーダーだった大竹さんも、新型コロナウイルス感染症の影響による東京オリンピックの延期には大きなショックを受けたという。「ずっと東京オリンピックのためにきつい練習も乗り越えてきましたし、アスリートにとって1年は短いようで長いので、何も考えられなくなってしまいました」と、率直な心境を明かす。
それでも、気持ちを切り替え、前向きになれるのが大竹さんの強さ。「今まで合宿や練習を重ね、常にラグビーのことばかり考えていたので、開き直ってぼーっとしちゃおうと思ったんです(笑)。外出自粛期間中は本を読んだり、家族と話したり、良い時間を過ごせました」。
今は、すべてのことに意味があると信じ、目の前のことを一生懸命にやるしかない。大竹さんは「先のことなんて分からないし、今までもそうでした。先を見据えて計画を立てることも大切ですけど、人生って本当に何があるかわからないので、一つ一つ自分のできることに取り組んでいこうと思っています」と決意を口にした。
次回2月12日の放送は、元プロ野球選手の藤川球児さんが登場する。