敵わない相手には「同じ武器」で競わずに「自分だけの武器」で立ち向かう

2020.04.03 22:30
俳優・田辺誠一さんが番組ナビゲーターを務め、ゲストの「美学」=信念、強さ、美しさの秘密を紐解き、そこから浮かびあがる「人生のヒント」を届ける、スポーツグラフィックマガジン「Number」と企画協力したドキュメンタリー&インタビュー番組『SHISEIDO presents才色健美 ~強く、そして美しく~ with Number』(BS朝日、毎週金曜22:00~22:24)。4月3日の放送は、メジャーリーガーの前田健太さんが登場。気になる移籍のこと、ピンチとの向き合い方、そして家族への感謝などを明かした。
■敵わない相手にも、自分の武器で勝負を挑む
2020年2月、前田さんはロサンゼルス・ドジャースからターゲット・フィールドを本拠地とするミネソタ・ツインズへのトレードを言い渡される。PL学園から広島カープを経て、メジャーリーガーとなって5年目。キャンプイン2日前の出来事だった。前田さんは「移籍の話も二転三転して、家族を不安にさせてしまいましたね。特に子供は、僕がドジャースでプレーしていることを理解できる歳になってきていたので、“ドジャースじゃなくなるの?”と、少し悲しんでいたんですけど、チームが変わるということを理解し、ちょっとずつ落ち着いてきています」と語る。
一方で、前田さん本人は、このトレードを好機と捉えており、「僕にとってはプラスの移籍だと思います。みなさんが思っているほど、ネガティブなことでもないですし、僕も落ち込んではいません」と心境を告白。
投手層の厚いドジャースではシーズン終盤になるとリリースに配置転換されてきたが、ツインズでは先発ピッチャーに専念することができる。前田さんは「やっぱり先発として評価してもらえたのは嬉しかったです。ツインズでは、いろんなデータを見せてもらいながら、“今以上にもっと良くなる”という話もしてもらったんです。この年齢でまだ成長できるかもしれない、ということを知ることができました」と笑顔を浮かべる。
現在31歳。メジャーリーグでは他の選手たちの体格やパワーに圧倒されることもあったが、自分なりのやり方で乗り越えてきた。「とにかくみんなでかいし、球も速い。敵わないなと思う部分はたくさんありますね。でも、他の部分で勝てるところがたくさんあると思っています。自分の持っている能力を理解して、それを最大限使いながら勝負していくのが大事だと思うので。意外と自分のことを理解していない選手が多いんですよ。でも僕は、どういうふうに身体を使えばいいのか、良い球を投げるにはどうすればいいのか、自分自身を知っている。そこが最大の長所だと思います」。
■野球でうまくいかなかったことは、野球で取り返すしかない
もちろん、負けてしまうこともある。打たれた後に湧き上がるのは自省の念。前田さんは「別のことに逃げられる人はそれでいいと思うんです。僕は、それができなくて。気分転換に他のことをしていても、打たれたことを思い出すんですよ。遊んでいても“打たれているのに、なんでこんなところで遊んでいるんだろう”という気分になってしまう。野球でうまくいかなかったことは、野球で取り返すしかないんです」と話す。
厳しい勝負の世界に身を置くからこそ、やりがいを実感する。「勝てない相手に対して、どうしたら倒せるのか。そういうことを常に考えながら過ごせているので、充実しているし、毎日が楽しいです。それが無くなったら、たぶんアスリートとして終わってしまうので」。
自分を支えてくれる家族の存在も大きい。ファンには“マエケン”の愛称で親しまれているが、家族の前では素の自分に戻る。前田さんは「“マエケン”と呼ばれるようになったのはプロに入ってからなので、野球をしているときは確かに“マエケン”なんですけど、プライベートで家族と過ごしているときは“前田健太”なんです」と笑う。
家族は、前田さんの精神的な支柱であり、健康面でも支えてくれる存在だ。「けっこう嫌いな食べ物があったんですけど、妻が料理好きというのもあって、結婚を期に自分がこういうのが食べられないと相談したら、アスリートとしてそれではダメだという話になったんです。それで、“これはどう?”“じゃあこれは?”みたいな感じで、味付けを工夫してくれて、食べられるようになりました」。前田さんは「もし、今も独身だったら、選手として終わっていた可能性もありますね。食事のバランスも良くなかったし、ケガをしていたかもしれません」と感謝していた。
今年の目標はワールドチャンピオン、そして、背番号と同じ数の18勝。家族への愛と野球への愛を携え、前田さんは新天地のマウンドに立つ。
次回、4月10日の放送は、前田健太さんと、同じくメジャーリーガーの田中将大さんが登場する。