結果を出すために、何かを犠牲にしなくてもいい

2019.11.15 22:30
俳優・田辺誠一さんが番組ナビゲーターを務め、ゲストの「美学」=信念、強さ、美しさの秘密を紐解き、そこから浮かびあがる「人生のヒント」を届ける、スポーツグラフィックマガジン「Number」と企画協力したドキュメンタリー&インタビュー番組『SHISEIDO presents才色健美 ~強く、そして美しく~ with Number』(BS朝日、毎週金曜22:00~22:24)。11月15日の放送は、200m個人メドレーと400m個人メドレーで日本記録を保持している、女子競泳選手の大橋悠依さんが登場。試合へ向き合う姿勢や、大橋さん流・結果を出すためのメンタリティについて語った。
■周りを気にせず、自分のできることを考える
2019年に行われた世界水泳選手権、200m個人メドレーにおいて、泳法違反で失格してしまった大橋さん。その6日後、400m個人メドレーでは銅メダルを獲得する。失格を受けて、まるでジェットコースターのように気持ちが乱高下していたという。「ネガティブな自分と、それを乗り越えようとする自分が戦っている感じでした」と、その時の生々しい胸の内を明かした。
試合では他の選手を気にしないというのが、心がけていることの一つ。「昔は自分よりタイムの早い人がいると、絶対勝てないな……と思ってしまって、2番や3番を狙う安牌なレースをしてしまっていたんです。でも、今は自分のレースをしようということしか考えていません」と断言する。今回のレースも、現状できることを100%出し切った結果の銅メダルだった。
幼少期から始めた水泳だったが、心から「速くなりたい」と思ったのは、大学2年生の頃。貧血になり半年間泳げなかった大橋さんは、復帰後、スランプに陥ってしまう。「試合に出ても最下位だし、タイムもベスト時より10秒遅い。でも全然原因がわからなくて、とりあえず毎日、練習だけは続けるようにしました」と振り返る。そして、不調を抜け出し、自分の思い通りに泳げるようになった瞬間、初めて水泳が楽しいと感じられたのだという。
「とにかく泳ぎが速くなりたいと思えてきて」という大橋さんを、平井伯昌コーチの言葉が後押しする。「貧血が治ってきたくらいのタイミングで、先生(平井コーチ)が“速くなって俺を困らせてくれよ”って言うんですね。速い選手がたくさんいると、先生も忙しくなって困るという意味なんですけど、そんなに言うのなら、じゃあやってやろうと思いました」。この頃を境に、大橋さんの中に、水泳に対する明確なモチベーションが形成されていくこととなった。
■「何かを犠牲にして水泳をやっていた」とは思いたくない
レース中はコンマ何秒の世界で熾烈な戦いを繰り広げる大橋さんだが、陸に上がれば、ごく普通の24歳。最近は、アイドルグループのBiSHがお気に入りだ。「オフの日にはDVDを見たりするんですけど、ライブも見に行きますね。先の予定にライブが入っていると、その日まで頑張ろうって思えることと、ライブの後も、BiSHがあれだけ一生懸命だったんだから、自分も努力しようと思えることが、好きな理由かもしれません」と分析する。
BiSHのコンサートは写真撮影が自由なため、一眼レフカメラを持参することも。大橋さんは、自分が撮ったBiSHの写真を番組スタッフのカメラマンに見せ、「どうですか、私の撮ったアイドル!」と声を弾ませた。
水泳のために好きなものを我慢することはない。大橋さんは、「選手を引退するときに、何かを犠牲にして水泳をやっていたって、あんまり思いたくないんです。なので、練習や試合に悪い影響がない限りは、自分のやりたいことをやるようにしています」と語る。
食べることも大好き。大好物は「母親の作るオクラ入りのハンバーグ」だ。そして現在は、栄養学の資格を取るために勉強をしている。「もともと栄養に興味があったし、食べ物のアレルギーを持っていて、苦労することもあるので、それを補うためにも勉強しておきたいなと思って。なんでも、やり始めたら止まらなくなっちゃうんですよね」と笑う。
後悔したくないから、水泳のこと以外にも、何にでも全力を傾ける。脇目も振らず、ただ前だけを向いて突き進む。そんな姿勢が良い結果をもたらしてきたことを、大橋さん本人も知っている。現在、2種目で日本記録を保持。2020年の東京オリンピックでメダルを狙う大橋さんは、「すごくラッキーだと思っています」と、現在の心境を打ち明ける。過去、栄光に輝いた水泳選手は今の大橋さんと同様、24歳前後でチャンスを掴んでいた。競技者としてのピークを迎えたタイミングで夢舞台に挑む大橋さんに、日本中の期待がかかる。
次回11月22日の放送は、元トランポリン選手の廣田遥さんが登場する。