人生を捧げたものに終わりが来ても、未来は無限に広がっている

2019.10.11 22:30
俳優・田辺誠一さんが番組ナビゲーターを務め、ゲストの「美学」=信念、強さ、美しさの秘密を紐解き、そこから浮かびあがる「人生のヒント」を届ける、スポーツグラフィックマガジン「Number」と企画協力したドキュメンタリー&インタビュー番組『SHISEIDO presents才色健美 ~強く、そして美しく~ with Number』(BS朝日、毎週金曜22:00~22:24)。10月11日の放送は、INAC神戸レオネッサに所属し、なでしこJAPANでも活躍する女子サッカー選手の岩渕真奈さんが登場。サッカーへの熱い思いや、“これから”について語った。
■サッカーを失った自分がどうなるのか想像できない
15歳でリーグ新人賞を獲得し、18歳でなでしこJAPANの一員として世界の頂点に立った岩渕さん。試合では他を寄せ付けない圧倒的な集中力を発揮するが、プライベートでは意外にも、のんびり屋で面倒くさがり屋だという。「家ではゆっくりテレビを見たり、映画を見たり、ゲームをしたり。基本インドア系なので、ダラダラしています」と笑う。オンとオフは、きっちりと分けるタイプ。岩渕さんは、「練習や試合は全力でやりたいから、それ以外でサッカーのことを考えないようにしています」と打ち明ける。
この日は、練習後にチームメイトとランチ女子会。気になる体重の話から、好きな食べ物の話に言葉遣いの話まで、話題は尽きない。中島依美さんから「ロッカーが汚すぎる」と暴露された岩渕さんは、「だって誰も見ないもん」と切り返し、さらにその片付けを武仲麗依さんにお願い。「ふざけんな!(笑)」とツッコまれていた。
ムードメーカーで愛されキャラの岩渕さんだが、選手としては代表チームをけん引する立場になりつつある。2011年のワールドカップ優勝から8年、26歳になった岩渕さん。これまで、栄光の勝利だけではなく、数々の困難も経験してきた。自身のサッカー人生について「嬉しいことがあっても、100%満足はできていない。悔しいことのほうが多いと思います」と振り返る。
引退が脳裏によぎったこともある。2015年に右膝外側側副靭帯断裂、そして、2017年には右膝内側側副靭帯断裂。「2度目の怪我のときに、また4か月間サッカーができないのかとか、膝が元に戻らなかったらどうしようとか、悪い方向にばかり考えてしまって、そのときは辞めたいなと思いました」と当時の心境を明かす。
岩渕さんをつなぎとめたのは、強い“サッカー愛”と、それを失うことの“恐怖”だった。「サッカーが大好きで、これまでサッカーしかやってこなかったので、自分がピッチを走っていない姿が想像できなかったんです。サッカーが無かったら何をしているんだろう」と自分に問いかけた。その結果、岩渕さんは「考えても考えても浮かんでこない。もう、それならサッカーをやるしかない」と、開き直ることができたという。
■人生を捧げたものに終わりがあるとしたら
「応援してくれる人たちの期待に応えたい」という思いも、岩渕さんの原動力になった。2012年のロンドンオリンピックでは銀メダルを獲得したが、4年後の2016年のリオオリンピックでは予選敗退。その後、代表を率いてきた佐々木則夫監督が退任し、澤穂希、大野忍、宮間あやといった主力選手も去っていった。そんな状況の中、岩渕さんは、「もう一度、代表のユニフォームが着たいという気持ちを強く持っていましたし、今までいろんな経験をさせてもらった分、今度は自分が中心になって戦うんだという思いが芽生えました」と力を込めた。
2019年のワールドカップはベスト16で敗退。その悔しさをバネに、目指すはもちろん東京オリンピックの金メダル。岩渕さんは「オリンピックのピッチには絶対立っていたいし、そこで良い成績を残すのが、今の一番の夢ですね」と前を向く。しかし、来年で27歳。サッカー選手としては決して若くはない。「サッカー以外にやりたいことがないので、最近はやりたいことを見つけようと思い始めました」とも語る。
「東京オリンピックが終わって、結婚して、1年くらい休んで子どもを産んで……みたいな、自分の中にある女性アスリートとしての理想は持っていたんですけど、現実的には難しいかもしれない。サッカーをやれる限りやってみたいという気持ちも、もちろんあります」と岩渕さん。人生を捧げてきたものに“終わり”があるとしたら、その人はどこへ向かうのか。未来がどうなるかは本人にもわからないが、彼女の“これから”には無限のフィールドが広がっている。
次回10月18日の放送は、元サッカー日本代表の楢崎正剛さんが登場する。