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13歳からの夢 「100万分の1」を勝ち取った八村塁 #30UNDER30
Forbes JAPAN
2019.09.06 08:00
「皆さんやりました。NBAです」

2019年6月21日、日本人として初めてNBAのドラフトで1巡目指名を受けた八村塁は、居並ぶテレビカメラの前で笑顔でそう語った。

「世界を変える30歳未満」として、日本を代表するビジョンや才能の持ち主を30人選出する名物企画「30 UNDER 30 JAPAN 2019」のスポーツ部門で選出された、八村塁。
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ベナン人の父と日本人の母を持つ八村は、高校時代から関係者の間で「最もNBAに近い日本人選手」と呼ばれていた逸材だ。

富山県で生まれ、小学生まで野球少年だったという八村が、バスケットボールに出会ったのは、意外に遅く中学生のとき。友人からの誘いで「仕方なく始めた」という。しかし、中学時代の恩師である坂本譲治氏の指導もあり、宮城県の私立明成高校へ入学後はメキメキと頭角を現す。

在学中は高校生でありながら日本代表入りを果たし、卒業後はNBAを目指しアメリカへ渡る。ワシントン州のスポーケンにある全米でも強豪のゴンザガ大学へ入学したのちも活躍を続け、今回、ドラフト指名1巡目、全体で9位指名を勝ち取ったのだ。

実は、八村はそれまでまったく英語を話すことができなかったため、渡米してすぐに言語の壁に直面した。チーム内でのコミュニケーションも難しかったため、入学後はバスケットボールの練習のほかに、英語を学ぶための授業や宿題、家庭教師との勉強などで多忙を極め、「挫折するのではないか」とも思ったという。

それでも、バスケットボール選手として成長するために、語学の習得を止めることはなかつた。たゆまぬ努力と活躍から、地元にNBAチームが無く、大学バスケットボール熱の高いゴンザガの学生たちからも愛される存在になり、いつしか英語でのインタビューもそつなくこなせるようになったという。

100万分の1の栄光

ところで、NBAで1巡目指名を受けることがどれだけ凄いことなのか、日常的にバスケットボールへ興味を持っている人以外は、いまひとつピンとは来ないだろう。

まず、現在、国際バスケットボール連盟に登録されている競技者数は全世界で約4億5000万人。世界最高峰のバスケットボールリーグであるNBAには合計30チームが属し、各チームで登録できる選手数は15名まで。つまり、現役のNBAプレイヤーは450名しか存在せず、全競技人口の0.000001%しかNBAの舞台に立つことができないのだ。

さらに、NBAのドラフトは、原則前季の下位チームから指名が始まり、1名ずつ2巡にわたって指名を行うため、最終的に合計60名しか指名を勝ち取ることができない。

NCAA(全米大学体育協会)が運営する男子バスケットボールリーグ1部の選手だけでも約5500名。そこに海外選手も加わるため、数千分の60という限りなく超難関なのである。
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八村塁選手 Photo by Ethan Miller / Getty Images

その狭き門をくぐり抜け、八村は「NBAドラフトで1巡目9位指名を経て入団した初の日本人」になったわけだが、実はこれまで、1巡目ではないが、NBAのドラフトで指名を受けた日本人選手が1人いる。

1981年、カリフォルニア州オークランドに本拠地を置くゴールデンステート・ウォリアーズから指名を受けた岡山恭崇氏だ。しかし、当時NBAのチームに属する選手はオリンピックやワールドカップなどの国際大会への出場が認められておらず、また日本国内のNBAに対する理解も浅かったため、交渉さえせずに入団を見送った経緯がある。

また、11年に日本人初のNBAプレイヤーとなった田臥勇太はドラフトを経た入団ではなく、18年にメンフィス・グリニーズでプレーを始めた渡邊雄太は昨年のドラフトでは名前すら挙がらなかった。

3人とも日本を代表するバスケットボール選手ではあるが、八村はそんな彼らでさえも成し得なかった偉業を達成したのだ。

これからNBAのシーズンに入り、八村がチームで試合に出続け、活躍できるか気になるところだが、その勝負はプレシーズンマッチが行われているいまもう既に始まっている。7月6日に開幕したサマーリーグのNBAデビュー戦では開始2分で初得点も決めた。

今年で74年目となるNBAの今季のレギュラーシーズンは、10月22日(現地時間)に開幕する。そして、来年には東京オリンピックも控えている。NBA選手として、また日本代表選手として、13歳から「NBAに行く」と誓い、夢を叶えた八村塁に大きな期待が寄せられている。

はちむら・るい◎1998年、富山県生まれ。宮城県明成高校を卒業後、ゴンザガ大学入学。現在はNBAチーム、ワシントン・ウィザーズでプレーする。

八村をはじめとした、個性あふれる「30 UNDER 30 JAPAN 2019」の受賞者の一覧はこちら。若き才能の躍動を見逃すな。
文=石原龍太郎

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