溢れてくる感情を隠さず、胸を張って”好き”と言う生き方

2019.07.12 22:30
俳優・田辺誠一さんが番組ナビゲーターを務め、ゲストの「美学」=信念、強さ、美しさの秘密を紐解き、そこから浮かびあがる「人生のヒント」を届ける、スポーツグラフィックマガジン「Number」と企画協力したドキュメンタリー&インタビュー番組『SHISEIDO presents才色健美 ~強く、そして美しく~ with Number』(BS朝日、毎週金曜22:00~22:24)。7月12日の放送は、現在はプロスケーター、指導者、スポーツ解説者、タレントとして幅広く活躍している元フィギュアスケート選手の織田信成さんが登場。笑顔の裏に隠された本音や、自身がいつも大切にしている思いなどについて語った。
■笑顔であることのプレッシャー
2010年にバンクーバー五輪へ出場し、同年にはグランプリファイナルの2位に輝くなど、一時代を築き上げた織田さん。氷上で目を細めて笑う姿は多くの人に“信成スマイル”を印象づけた。本人は、「笑顔は自分自身」だと前置きしつつ、本音もポツリ。「常に笑顔でいる印象が強いので、笑っていないと“元気ない?”ってすごく聞かれる。なので、そういうプレッシャーは少しあります。“怒ってる?”くらい言われるので」と笑いながら語る。
同時に涙もろい一面も。講演会に呼ばれた際、高校卒業時の恩師や友達とのエピソードを語りながら号泣したこともある。織田さんにとって、涙とは“感情の雫(しずく)”。ついつい溢れてしまうものだという。「あまり悲しいことでは泣けないんですけど、嬉しかったり、良かったりすることがあると、泣いちゃいます」。
2005年のグランプリシリーズで初優勝が決まったときは、人目もはばからず大泣きした。織田さんは、「これまでテレビで見ていて、まさか出られるなんて思っていなかったレベルの大会だったんです。あのときも調子が良くなくて、あまり練習もうまくできていなかったんですね」と当時を回想。そんな中での優勝だったこともあり、思い入れも人一倍強い。その瞬間の写真を見ながら、「自分の感情が一番爆発している写真です。この顔だけ見るとちょっと笑っちゃうんですけど、いろんな思いの詰まった顔なんです」と懐かしそうに振り返った。
■生きている実感を得るために必要なこと
選手時代の織田さんの代名詞といえば、4回転ジャンプ。この得意技が様々なことを教えてくれた。跳べない悔しさを噛み締め、努力を重ねたからこそ、乗り越えて成功したときの喜びを知ることもできた。織田さんは4回転ジャンプを自身の人生と重ねて、「自分のやりたいことを見てもらえて、認めてもらえて、たくさんの方に拍手をいただける。大きい意味で言うと“これが生きているってことなんだろうな”という感じです」と、しみじみ語った。
その成功を支えたのは、やはり圧倒的な練習量だ。しかし、織田さんは辛いと思ったことがないのだという「フィギュアスケートって華やかに見えて、練習している時間って意外と素朴というか、そんな派手さはなくて。毎日同じことの積み重ねなんですけど、そういうのも好きなんです。けっこうみんなギブアップしていくのに、自分全然平気やな、みたいな」と、あっけらかんと笑う。
一方で、どうしても我慢しなければならないものもあった。それは、「これが無いと生きていけない」というほどの大好物、パンケーキだ。選手時代はストイックに、週末に1度だけ自分へのご褒美として食べていた。「本当にそれだけが自分の喜びでした。もちろん今も太らないようにはしていますけど、現役以上には厳しくやっていないので」。
現在は様々なパンケーキ店をめぐり、店ごとの味の違いを楽しんでいる。人気店には行列がつきものだが、織田さんは「僕、待つのが大好きなんです。待っている時間がご飯をおいしくしてくれると思っている人間なので、並ぶのは全然苦にもならないです」と言い切り、さらに、「本当に自分が手に入れたいものとか、食べたいものは、やっぱり、待ってでも食べる価値があると僕は思っています」と主張する。
”好き”に忠実で、人が辛いと思うことも難なくこなし、目的のものを手に入れた瞬間には溢れんばかりの感情を素直に表現する。選手時代も今も、それが織田さんの生き方だ。行きつけの、南青山にあるお店の大好きなパンケーキを目の前にした織田さんは、この日一番の笑顔を見せていた。
次回7月19日の放送は、女子ゴルファースペシャル。上田桃子選手、渡邉彩香選手、三浦桃香選手の3名が登場する。 今年から新設された『資生堂 アネッサ レディスオープン』に出場した3選手は、この大会をどう戦ったのか。過去に番組に出演した時のインタビュー映像と密着取材を基に振り返る。