アウトドアから日常まで。幅広いシーンで使える“GORE-TEX”の魅力って?

2019.06.28 12:00
このところ、アウトドアシーンにとどまらず、ライフスタイルシーンでも、さまざまなブランドのアイテムに取り入れられている“GORE-TEX(ゴアテックス)”。登山やキャンプといったアクティビティのみならず、最近では普段使いをする人も増えていることから、その名前を一度は耳にしたことがあるのでは? でも、実はこの“GORE-TEX”がどういったものなのか、正直よくわからないという人も少なくないはず。そこで今回は、GORE-TEX製品を手がける日本ゴア社に突撃訪問。同社のファブリクス・ディビジョン PRを担当する小木曽 晃子さんに、根掘り葉掘り聞いてみた!
防水素材? アウトドア専用? そもそも、“GORE-TEX”って、何?
——いきなりそもそもの質問なのですが……、“GORE-TEX”って何なのでしょうか?
みなさんが “GORE-TEX”と聞くと、黒いロゴや防水性のある機能性素材といったイメージを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。GORE-TEX ファブリクスは防水性(濡れにくい)だけでなく透湿性(ムレにくい)も兼ね備えた素材で、ウェア、シューズ、グローブ、帽子などの製品に採用されています。もともとは天候の変わりやすい登山向けのウェアやシューズに採用されて広まり、近頃は日常でも着られるアイテムへの採用も増えてきています。
——なるほど! だからアウトドアウェアなどでGORE-TEXのロゴをよく見かけるんですね。そんなにすごい機能を持つ素材ということは、最近開発されたものなんですか?
開発を手がけているゴア社は1958年にアメリカで創立され、当初はフッ素樹脂の素材でケーブルの被覆材を製造していました。フッ素樹脂を薄く延ばす加工に成功し、GORE-TEX メンブレンの原型となる素材が開発されたのが1969年のこと。今年でちょうど50周年を迎えます。1970年代にGORE-TEX ファブリクスがウェアやシューズに使われるようになったので結構歴史は長いのですよ。
——なんと、50年も前にそんな高性能なものが開発されていたとは! 具体的にはどのような製品に使用されているのでしょうか? アウトドア向けのアウターなどではよく目にするのですが
GORE-TEX ファブリクスは本格的な登山用からデイリーに使えるアイテムまで、幅広い製品に取り入れられています。意外なところでは、ビジネス用の革靴やキャンバス地のスニーカーなど日常に溶け込むアイテムにも実は多く使われています。アウトドアアクティビティで悪天候などから身体を守ってくれるのはもちろん、日常生活でも雨やムレを気にせず快適に過ごせる製品です。
防水性と透湿性が実現できる理由とは!?
——GORE-TEXファブリクス最大の魅力である、防水性と透湿性。本来は相反するはずの機能を両立できたのは、どうしてなのでしょうか?
GORE-TEX ファブリクスは、表生地、GORE-TEX メンブレンという膜、裏地の3層構造です。GORE-TEX メンブレンは表生地と裏地の間に挟まれているので見えない部分にはなりますが、この膜こそが防水透湿機能の心臓部です。卵の薄皮のようなやわらかく本当に薄い素材なのですが、電子顕微鏡で見ると、クモの巣が何層にも重なったような構造をしていて微細な孔(あな)が無数にあいています。この孔の大きさが防水性と透湿性の秘密なのです。ひとつずつの孔の大きさをサッカースタジアムくらいに例えると、水蒸気の分子はサッカーボール大くらいの大きさ。だから、汗の蒸気は簡単に孔を通り抜けてムレを逃がすんです。
その一方で、水滴の大きさはどれくらいだと思いますか?
——えっ……、「東京都」くらいですか?
実は、「地球」ほどの大きさにもなるんです。孔の大きさは水滴に比べると2万分の1と言われています。この絶妙な孔の大きさによって、水は防いでムレを逃がすことを実現できているんです。具体的に例えるならば、雨の日にビニール製の雨合羽を着ていると次第に内側が蒸れてきて不快な思いをした、そんな経験はありませんか? GORE-TEX ウェアの場合、そうした衣服内の湿気を外へ排出するので、ドライで快適な着心地が続くんです。
——同じ成分でも水蒸気の分子と水滴の大きさに、そこまで大きさの差があったとは驚きです! それに、ビニールの雨合羽って雨は防げても、確かに着ていると次第に蒸れてベタつきが……。何気ない湿気の問題も、特に体を動かすシーンや湿気の多い梅雨時期では死活問題。だからアウトドアやランなどのスポーツウェアなどにも多用されているんですね。でも、目に見えるものではないので、正直あまりピンと来ないですね……。
そうですよね。それでは、蒸れにくさの秘密、透湿性について、今から簡単なデモンストレーションをしたいと思います。ここにカップが二つあります
片方のカップには一般的な透明なビニール、もう片方には黄色いGORE-TEXファブリクスを被せます。ここにお湯を注ぐと……、GORE-TEX ファブリクスの方のカップが曇って瞬時に蒸気が抜けていっているのがわかると思います。透明なビニールの膜は、水を防ぐと同時に蒸気も遮るのでムレがこもってしまいます。
——確かに、ビニールとGORE-TEX ファブリクスでは、その差は一目瞭然!外からの水を通さず、湿気だけを外に出すことが、快適性につながっているというのも、この結果を見ると納得です。
過酷な品質テストをパスした製品にのみに与えられる特別な黒いタグ
GORE-TEX 製品の機能性の背景には、素材に備わった特性に加えて、弊社がブランドや生産工場と一体になって高い品質を追求する枠組みがあることはあまり知られていないかもしれません。また、新しい製品は、ウェアが防水設計になっているかを雨が降っている環境を再現して確認するなど、弊社のラボで防水性や透湿性などの試験を行っています。テストをクリアするまでブランドは試作を重ねて品質を追求しています。その証として商品には必ず「GUARANTEDD TO KEEP YOU DRY (あなたの身体をドライなままにすることを保証します)」と書かれた黒いタグが取り付けられています。

——普段、何気なく目にしてきた“GORE-TEX”の黒いタグには、実はさまざまな基準を通過してきたという大きな誇りが宿っていたとは! つまりは、この黒いタグを付けた製品はゴア社による品質を保証できるクオリティ基準を満たしているということ。宇宙空間や極寒冷地のような極限状態において採用された実績のあるテクノロジーが普段のファッションでも着られるって、すごい!
そうですね。品質は保ちながらもアイテムの幅も広がってきているので、より身近に感じていただけたら嬉しいです。こうした機能を備えているとメンテナンスが大変なのでは、と思われがち。でも、実はGORE-TEX製品のお手入れは簡単で、多くのウェアはご家庭の洗濯機でも手軽に洗っていただけるんですよ。お手入れについて詳しくはこちらの動画(※)をご覧いただければと思います。ぜひ、GORE-TEX 製品を着てアクティビティも日常生活も、快適に楽しんでください。
頭の先からつま先までをカバーする、豊富なラインアップが魅力。 今季おすすめの、最新GORE-TEX製品
●THE NORTH FACE
クライムライトジャケット(メンズ)/¥30,000+税
GORE-TEXマイクログリットバッカーを採用した軽量な防水レインジャケット。コンパクト収納が可能な270gの軽量設計でありながら、ハリ感のあるしっかりとした着心地。風のバタつきを軽減するスリムなシルエット、パックを背負ったままでもラクに腕を上げることができる運動性など、スピードと快適さの両方を求めるユーザーにぴったりの仕上がりとなっています。
●AIGLE
レディース ゴアテックス グロナン ジャケット/¥42,000+税
防水・防風・透湿性に機能に優れたGORE-TEXの2レイヤー生地を使用しながら、ソフトな風合いでカジュアルな着用感を演出する万能ジップアップジャケット。フードは立ち襟内部に収納可能。止水ジップやマットコートのドットボタン、ポケットフラップの形状など、シンプルながらも細かなディテールデザインで違いを魅せています。
●CONVERSE
ALL STAR 100 GORE-TEX MN OX/¥15,000+税
よりタフに快適に進化した、オールスター生誕100周年記念モデル「ALL STAR 100」にGORE-TEXファブリクスを搭載したモデル。アッパーには撥水キャンバスを採用し、雨の日でも履けるオールスター。オールホワイトにまとめることでさわやかに仕上げ、様々なスタイルに合わせやすい重宝するアイテムです。
[STAFF] Photo:Takumi Shinoda(go relax E more)/Text:Noritatsu Nakazawa(EditReal)