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働き過ぎがキャリアに悪影響な理由
Forbes JAPAN
2018.12.21 12:00
人生で成功するには膨大な努力が必要、という考え方はとても根強く、欧米の多くの場所では職場で長時間を過ごすことが評価される文化が強く残っている。この背後にある論理は、表面上は正しいように思える。実際問題、頑張りなしに何かを達成することはできないだろう。

しかし、懸命に働こうと思うがあまり、働き過ぎの状態に陥ってしまえば、非常に危険な結果をもたらしかねない。ロンドン大学シティ校カス・ビジネス・スクールが最近発表した論文では、働き過ぎると健康だけでなく、キャリアにも悪影響が出ることが示された。興味深いことに、鍵となる要素は仕事に費やす時間ではなく、仕事の激しさだという。

研究チームは、欧州36カ国の被雇用者約5万2000人を対象に、ストレスや疲労レベル、仕事の満足度、キャリアの展望、仕事での評価のレベル、全体的な仕事の安定性を調べた。

その結果得られた主な発見の一つとして、長時間働いたり集中的に働いたりして努力を重ねても、キャリアには良い成果が出なかったことが分かった。現実的にはその真逆で、データからはこうした勤務態度がキャリアの低下要因となっていたことが分かった。また、繰り返しこうした状況で働いていた人の健康レベルは低いことも示されている。

論文では「医師や政治家は、長時間労働や残業に対する懸念を強く抱いているが、それよりも喫緊の課題は仕事の激しさ(時間当たりの作業量など)かもしれないことが示唆された」と説明。

さらに、「職場で長時間過ごしたり、自分の職業の平均以上に働いたりして過度に仕事をしたとしても、キャリアに効果が出ないかもしれないことは注目に値する。キャリア向上を期待して健康を犠牲にすることは間違いかもしれない」と続けた。
過労との闘い
ノルウェーの研究者チームは数年前、仕事への依存度を測る「ベルゲン仕事依存スケール」と呼ばれるツールを開発した。このツールは、薬物依存の測定法から多くを流用し、気分の変化や許容度、顕著な特徴などの症状を分析するもので、チームはこれを使い職場依存を直接測定できる次の7項目を作った。

・もっと仕事をする時間をどう作れるかを考えている
・当初の予定よりも長い時間働いてしまう
・罪悪感や不安、無力さ、鬱のいずれか、あるいは複数を緩和するために働いている
・他者から労働時間を減らすよう言われたが、聞き入れなかった
・仕事を禁じられるとストレスを感じる
・仕事のために趣味や休日の活動、運動のいずれか、あるいは複数を犠牲にしている
・働き過ぎのため健康に悪影響が出ている

これらのうち、「よくある」「常にそうだ」と答える項目が4つ以上あった場合、仕事依存の可能性があるとされる。

カス・ビジネス・スクールの研究チームは管理職の人々に対し、この問題に真正面から取り組むことを求めており、最初のステップとして、従業員に対し業務を完了させる方法や時期を自分で決める自由と自律性を与えることを提案している。

「従業員がこうした自由を持てば、自分により都合の良いやり方で働けるようになり、生産性が増す。組織のリーダーは、こうした自由をできる限り従業員に与えるとともに、従業員を過度な状況に追い込むことによって生じる長期的な制約を意識すべきだ」とチームは述べている。

こうした戦略を粘り強く続けることは重要だが、ノルウェーのベルゲン大学の研究者らによる調査では、仕事依存は精神疾患の一形態となり得ることが示唆されている。1万6000人の大人を対象にしたこの調査では、上記のスケールを用い、各回答者に対してADHD(注意欠如・多動症)やOCD(強迫症)、仕事依存について質問を行った。

その結果を分析した結果、仕事依存と複数の精神疾患の間には明確なつながりがあることが分かった。仕事依存の兆候を見せた回答者の間ではそうではない回答者に比べ、不安症や鬱、OCD、ADHDの比率が顕著に高かった。

精神的な健康を身体の健康と同じように重要視する職場が増える中、雇用主は自分のため、そして従業員のため、過労の問題に正面から取り組むべきだ。
編集=遠藤宗生

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