私が考える時間とモノの嗜み方 〜 vol.3 建築家・鈴野浩一氏&禿真哉氏 〜

2018.11.19 00:00
物静かでいて、豊かな余白があるー。これがトラフ建築事務所の鈴野 浩一(すずの こういち)さんと禿 真哉(かむろ しんや)さんの2人に会ったときの印象。これまで数多の建築、インテリア、展覧会の会場構成、プロダクトデザインやムービー制作なども手がけてきた2人。渋谷神宮前にあるソーシャルライジングをうたう『TRUNK(HOTEL)』の一角、2人が手がけた『TRUNK(STORE)』があるカフェテラスで話を伺いました。常に50年-100年単位で街とそこを行き交う人々に想像を巡らし、物事の本質を見つめる2人の人間性が浮き彫りに。建築家である2人の仕事を通して、2人の考える時間やモノの嗜み方を紐解いていきます。
株式会社トラフ建築設計事務所
右:鈴野浩一(すずの こういち)さん と 左:禿真哉(かむろ しんや)さんにより2004年に設立。主な作品に「テンプレート イン クラスカ」「NIKE 1LOVE」「港北の住宅」「空気の器」「ガリバーテーブル」「Big T」など。「光の織機(Canon Milano Salone 2011)」は、会期中の最も優れた展示としてエリータデザインアワード最優秀賞に選出。2015年には「空気の器」が、モントリオール美術館において、永久コレクションに認定されている。
建築のベースは“敷地”。そして経年変化を肯定する“大らかな”許容量にこそある。
ー そもそも建築に興味を持ったきっかけはなんですか?
鈴野さん「元々理数系が好きだったのですが、小学生当時、僕の家庭教師をしてくれた先生が、横浜国立大学の建築学科の学生で、授業のたびに模型を見せてくれたんです。そこで自ずと立体物を作ることに惹かれていきました」

禿さん「僕の出身が島根県松江市ということもあり、周囲の友人が工務店など設計関係の仕事に従事している人が多かったんです。自分も理数系が元々好きでしたし、大学時代では、同年代の仲間と一緒に競い合いながら、コンペに出ることが楽しかったですね。当時はまだ鈴野とは出会っていなかったんです」
ー 2人が建築事務所を始めたのは、どんな経緯があったからでしょうか。
鈴野さん「実は具体的なきっかけらしいきっかけはないんですよ。オープンハウス(モデルハウスなどの内覧会)で顔をよく合わせるようになって、そこで話す仲になりました。一緒にどこかに遊びに行くことは、なかったです。そんな中、私が学芸大学にある『CLASKA(クラスカ)』の客室内装の仕事を受けた時、ちょうど彼が独立したと聞いたんです。それで、会話の流れで仕事を手伝ってもらったんですよね。そしたら次は『CLASKA(クラスカ)』の屋上も設計することになって、と。そうしている間に14年です。事実婚みたいだよね(笑)」
ー 領域横断的に活動している2人。仕事をする際に大事にしているのはどんなことなのでしょうか?
鈴野さん「僕らはプロダクトデザインも手掛けますが、いきなり『椅子を作ってください』と言われても宇宙空間に放り出されたような気持ちになってしまうんです。ですから、はじめにどんな場所に置くかを想定しながら考えます。僕たちが普段使う共通の言葉に置き換えるなら、“敷地を与える”ことさえできれば、自ずと最適なアプローチが分かるようになります」
ー 1つの建築物を手がけられるときに、どんな視点でものを見るのでしょうか?
禿さん「変化のサイクルが早い時代ですが、最低でも50年単位でものを見るようになっていて。時間の移ろいのなかでも、どうやって飽きさせないようにするかを大事にしています」

鈴野さん「アンチエイジングという言葉がもてはやされる時代の中で、シミやシワが個性だって思えるイメージでしょうか。エイジングを楽しんだ空間のほうが大らかでいられるし、人は居心地の良さを感じるはずです。だから経年変化を前提に、それに耐えうる建築物を作ろうと思っています」
時間は“シームレス”に繋がっている。その実感を常に持って
ー プライベートの時間も建築のことを考えられているのでしょうか?
鈴野さん「そうですね。職業病みたいなもので、日常から気になる壁とかを見ると素材を調べるために、写真を撮ってしまいます。周囲から見たらだいぶ怪しい人ですよね(笑)。それでもそうしないわけにはいかないんです。常に頭の片隅に仕事のアイデアの種を探しています」

禿さん「むしろプライベートと仕事時間のスイッチングをするほうが、僕たちにとって、しんどいかもしれない(笑)。2人が会社をはじめたのも“シームレス”でしたし、そもそも仕事の時間もプライベートの時間も地続きなものとして解釈しているんです」
ー オンとオフの境目が曖昧というお話でしたが、普段は身につけるものにどんなこだわりがあるのでしょうか?
鈴野さん「着る服もいる場所も、とにかく居心地の良さを大事にしています。身につけるものも着心地がよくて、馴染むものが好きですね。あまりに機能的になりすぎると、遊び心を失ってしまうので、ワンポイントで遊べる視点や余白を持つようにしています」
ー そうしたものの見方は歳を重ねるにつれ養われたものだと思いますか?
禿さん「振り返って考えてみても、どっかの節目で自分自身のモノの見方が養われたのがいつかと言われても思い出せなくて。そういう意味でもずっと“シームレス”に堆積したのかもしれないですね」
ー 今回、Seiko Presage(プレザージュ)を着用してみていかがですか?
鈴野さん「時計は毎日身につけるものですから、どんなシーンにもフィットするシンプルなものであってほしい。そういう意味でこの腕時計は、程良く本質的な感じがして好きです。時間って誕生したとき以来、シームレスにつながってるじゃないですか。今この瞬間を刻んでいながら、太古から受け継がれる過去の時間も未来の時間に通じている。腕時計を巻くことで、自分もその時間の流れの一部だということを思い出させてくれそうです」
禿さん「今回着けたプレザージュは、機械式時計ということもあって、機能から導き出された形や存在感が素敵だと思います。秒針の動きを感じることもできて、時間の移ろいを実感できますよね」

鈴野さん「普段は時計をしないのですが、この歳になって、スマートフォンを見るより腕時計を見るほうがよっぽどスマートな仕草だなと思うようになりました。プレザージュは、建築の現場での仕事と、高層タワー内のオフィスで社長に向けたプレゼンを同じ日に行うような我々にとっては、過度な主張がなくて普段使いできそうです」
1つの建築物やプロダクトから街や人の動きを変化させる2人ならではのモノの本質を見極める視点。そんな2人だからこそ垣間見える機械式時計の魅力。改めて、時間というものを見つめ直すきっかけに身に着けてみるのもいいかもしれません。
■Seiko Presage
Seiko Presage(プレザージュ)はSeikoの100年を超える腕時計づくりの伝統と技術に現代の感性を融合させたMade in Japanのメカニカルウオッチブランドです。その中でも、本モデルは軽量で肌に優しいチタン素材を採用した実用性の高いモデルです。上質感のある風合いは、ビジネスシーンはもちろんカジュアルシーンでもスタイリングを格段に引き締めてくれます。
SARX057 130,000円+税
光の反射を抑えるマット塗装を施したブラックダイヤルモデル
SARX055 130,000円+税
ダイヤルの繊細なパターンが和紙を彷彿とさせるシルバーダイヤルモデル

ケースサイズ    :径40.8mm x 厚さ11.0mm
駆動方式      :自動巻(手巻つき)
防水性能      :10気圧防水
ケース・ブレスレット:チタン(ダイヤシールド)
問い合わせ先:セイコーウオッチ株式会社 お客様相談室
0120-061-012(9:30~17:30、土日祝日を除く)
(撮影協力)
■『TRUNK(STORE)』
新しい社会貢献のスタイル<ソーシャライジング>の発信拠点となっているTRUNK(HOTEL)。その一角に、今回インタビューしたトラフ建築設計事務所の2人が手がけたTRUNK(STORE)はある。
リサイクル&アップサイクルなプロダクト、オーガニック食品、地元発祥の商品などSOCIALIZINGなアイテムを開発・厳選して取りそろえたコンセプトショップ。ショッピングを通じてSOCIALIZINGをより身近に快適に体験できる場所。現代の日本人の生活に欠かせない存在である「コンビニエンスストア」のスタイルを踏襲しつつ、そこに象徴される大量生産・大量廃棄社会へのアンチテーゼも込め、小ロット・少量生産のプロダクトにもスポットを当てている。

東京都渋谷区神宮前5-31
営業時間 8:00-22:00 / 無休
TEL  03-5766-3206