近視に悩む人は気になる!太陽の光がもつ可能性に迫る

2018.11.16 20:00
TOKYO FMで毎週金曜日の19時30分~19時55分に放送している『松任谷正隆のおでかけラジオ』。音楽プロデューサー・松任谷正隆氏が、ゲストの好きな場所を訪れて、ゲストのいろいろな「好き」を紐解いていきます。

11月9日(金)は、2日の放送に引き続き「バイオレットライト」の研究をしている慶應義塾大学医学部助教・鳥居秀成さんがゲスト。太陽光に含まれる「バイオレットライト」が近視の進行抑制に関わりがある可能性を発見した鳥居さんに、バイオレットライトの可能性の広がりや未来について、そして鳥居さんが目指す今後の研究についてお話を伺いました。
米国の学会でグランプリに輝いたショートフィルム
今回鳥居さんにお話を伺った慶應義塾大学医学部・眼科医局会議室には、今年アメリカで行われたフィルムフェスティバルのトロフィーがありました。米国白内障屈折矯正手術学会で催されるフィルムフェスティバルには、世界各国から素晴らしい動画が毎年100タイトル以上出品されます。鳥居さんも「バイオレットライト」を発見した経緯をドキュメンタリー風に作成した動画を出品。なんとその作品がグランプリ(最優秀賞)を受賞したのだとか。

松任谷正隆(松任谷):そのフィルムは何分くらいの、どういった内容のものですか?
鳥居秀成(鳥居):動画は約7分間です。バイオレットライト発見の経緯や、バイオレットライトに関する臨床研究・基礎研究の話、そして我々を取り巻く環境についての話を盛り込みました。UVカットガラスは、いま流行りじゃないですか。そのガラスだとUVだけでなくバイオレットライトまでも一緒にカットされてしまうのです。近視が増えだしたのは、実はここ50年くらいの話なんですよ。急激に増えて、社会問題になっています。世界かつ同時期的に何の環境因子が変わったのだろうかと考えると、ちょうどUVカット製品の広まりや、屋外活動時間の減少、ゲーム・デジタル機器の普及により近くを見る時間が増えた時期、などと概ね一致します。いろんなことが一致して、急激に近視が増えだしています。そこでバイオレットライトを浴びた方が近視に対してはいい影響がある可能性があること、また完全にカットしてしまうのは問題であるというメッセージを動画で伝え、それがまさしくパラダイムシフトであり、評価されたと思っています。
紫外線は100パーセント人体に悪影響?
松任谷:ただ、ウルトラバイオレット(紫外線)そのものに関しては人体に悪影響があるわけですよね。
鳥居:悪影響はもちろんありますが、体内のビタミンDの生合成など、いい面もあるのです。だから紫外線も、100パーセント悪というより、ちょっと浴びた方が良い部分もあるのです。
松任谷:波長による違い?
鳥居:波長によって影響が様々なのです。ですから、私達が研究しているバイオレットライトじゃないですが「まさかこんな小さな範囲の波長が」というくらい、人体は非常に奥深くできているなと本当に思います。光に関してもサプリメントと同じような考え方で、全く摂取しないというのはダメで、必要な時期に必要な量を摂取することが大事なのだな、と思います。北欧の国々、緯度の高い地域では太陽の光を非常に大切にしているようです。ビタミンDの生合成のため、できるだけ屋外での時間を確保しているようなのです。近視の率も実は少なく、そういった選択はとても大事だと思います。
メガネの未来、近視の未来
松任谷:鳥居さんたちは現実を直視され、それに対する仮説を立てるという世界じゃないですか。僕ら素人は、もうちょっといたずらに未来を考えるわけですよ。例えばあるメガネをかけていたら体調に関するデータが取れるとか。未来は今とは違う理由で全員メガネをかけているんじゃないか、って。
鳥居:純粋に近視がこのまま増え続けると、今から30年後、2050年には世界人口の約半分、50億人が近視になるというデータが出ています。それだけでも半数はメガネをかけるようになるかもしれないのですが、今おっしゃったように、別の理由でメガネをかける人も増えるかもしれません。
松任谷:今もそういうメガネありますよね、「JINS MEME」だってそうだし。
鳥居さんが目指す今後の近視研究
松任谷:今後はどんな研究を?引き続きどの波長がどんな影響を及ぼすかといったことでしょうか。
鳥居:波長に関してはとても難しいので、もちろん研究は続けないといけないですし、効果だけではなく同時にその安全性も見ないといけません。また現時点では近視の研究というは、近視進行の抑制なんですよね。つまり伸びてしまった眼の長さを内科的に元に戻すのは今の技術では難しいのです。なので、近視になった状態から元の近視になる前の状態に戻すことが将来できたら夢の治療になると思います。
松任谷:それ一番難しくないですか?
鳥居:難しいんです、だからそこまでいけたら本当にいいなと思います。そうすれば近視に関連する緑内障や網膜剥離、黄斑変性なども少なくできるんじゃないかと期待しています。波長は勉強すればするほど奥が深い分野なんです。まだまだですね。わかったような気になっていますが全然わかっていません。

未知の部分が多いという近視ですが、「バイオレットライト」をはじめとした研究が進むなかで、いつの日か進行してしまった近視が元に戻る。そんな未来を想像させてくれるお話でした。
番組恒例の厳選手土産
「おでかけラジオ」では、松任谷さんが心を込めて選んだ手土産をゲストに持参するのが恒例。今回は収録がちょうどお昼時だったこともあり、新橋駅前にある台湾料理店「ビーフン東(あずま)」の中華風ちまき、パーツァンを用意しました。

【番組情報】
番組名/「松任谷正隆のおでかけラジオ」
放送局/TOKYO FM(80.0FM)
放送日時/毎週金曜日19:30〜19:55(FM群馬 土曜18:30〜)