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東京のおでかけスポット「マルセル・デュシャンと日本美術」他
GINZA
2018.10.12 12:00
週末のおでかけ
●歳時/日本橋恵比寿講べったら市
●展覧会/マルセル・デュシャンと日本美術
●イベント/フェスティバル/トーキョー18
歳時 東京に“べっとり”浸かってみよう
文=柴原聡子
ビジネス街に突如現れる 2日間限定の江戸の粋。
新日本橋駅のほど近く、小伝馬町駅との間に宝田恵比寿神社はある。ビルが建ち並ぶ通りにぽつんとある小さな神社の周りは、とっくに開発されてしまって肩身が狭そう。きっと外国人が喜びそうな、TOKYOっぽいシュールな風景。
それが一変するのが、毎年10月19日、20日に開かれるべったら市だ。この時ばかりは、通りに出店がたくさん並び、多くの人で賑わう。もともと10月20日は、繁盛を願う商家が家に恵比寿様をまつり、人を呼んでお祝いする恵比寿講(えびすこう)の日。宝田恵比寿神社は名前の通り商売の神様をまつる。それで江戸時代中頃から、前日の19日になると、神社の門前に恵比寿講のための魚や野菜、神棚などを売る市が立つようになった。なかでも、麹と飴で甘く漬けた大根のべったら漬けがおいしいと評判になり、いつしかべったら市と呼ばれるように。やんちゃな若者が買った漬物を縄で縛って振り回し、「べったりつくぞ~」と参詣客をからかったので、この名がついたらしい。“運がべっとりとつく”縁起物でもある。
屋台の数は毎年500店舗ほど。威勢の良い「べったら~、べったら~」という掛け声が通りに響く。江戸時代からの商業エリアらしく、近隣の老舗の出店もお楽しみだ。1718年(享保3年)創業の江戸屋は、刷毛屋の老舗。専門用具以外にも、化粧ブラシや洋服ブラシが豊富にそろう。この2日間だけ特別にお祭り価格になるので、狙いを定めていくべし。ほかにも、肉料理の人形町今半、親子丼が有名な玉ひで、西洋料理の小春軒、京粕漬の魚久(うおきゅう)……。数々の名店が屋台を出しているからびっくり。ちょっと敷居が高いあのお店の味を、買い食いして次々試せるなんて!
江戸の商人文化を引き継ぐべったら市は、やっぱりちょっと格が違う。大きい提灯が掲げられて華やかに照らされる神社の姿に、TOKYOじゃない、東京の粋を見る気がした。
日本橋恵比寿講べったら市は、10月19日(金)、20日(土)の正午から21時まで開催。お店のラインナップは毎年多少の変更あり。出店時間はそれぞれのお店で異なるので、まずは行ってみて。
 展覧会 デュシャンVS日本美術 価値転換くらべ
文=柴原聡子
マルセル・デュシャンの作品で一番よく知られているのは《泉》(1917年)だろう。一般的に流通していた男性用の小便器に偽名をサインして、作品として出したものだ。「作る」のではなく「意味づける」ことを作品にした「レディメイド」シリーズは、アートの価値を大転換してしまった。絵画作品《階段を降りる裸体 No.2》(1912年)もまた、美術界に大スキャンダルを起こしている。階段を降りる人の瞬間ごとの動きを重ねて、ひとつの画面に収めたこの絵は、キュビスムの手法に「時間」の概念を加える大胆な試みだった。
この展覧会は、そんな価値転換のポイントを日本美術に照らし合わせて見せていく。日本美術とデュシャンに共通点なんかある?と不思議に思うけど、実はいろいろある。例えば千利休の花入。竹を切っただけ、表面の節も残したまま一部を欠いて花を挿せるようにしたこの花器は、贅を尽くして職人が作り上げた器の真逆を行く。利休が推し進めたわびさびは、価値がないとされていたものに美を見出す「意味づけ」の宝庫だったのだ。そして、絵巻物に見られる「異時同図」は、ひとつの建物や風景の中に同じ人を何度も登場させて、異なる時間を一緒に描く手法。コマのないマンガのようなもので、アニメーションの祖先ともいえる。
比較していくと、美の価値観が日本と欧米でかなり違うことに改めて驚く。同時に、いつの時代にもカルチャーをぐっと更新して一変させてしまう巨人は存在するのだと納得する。当時は炎上したであろう、デュシャンや先人たちが起こしたアートのスキャンダル。それは、永遠のパンチラインとして今も響き続けている。
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マルセル・デュシャン《泉》1917/1950年  Philadelphia Museum of Art. 125th Anniversary Acquisition. Gift (by exchange) of Mrs. Herbert Cameron Morris, 1998 © Association Marcel Duchamp / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2018 G1311
【東京国立博物館・フィラデルフィア美術館交流企画特別展 マルセル・デュシャンと日本美術】
フィラデルフィア美術館が所蔵するマルセル・デュシャンの作品や資料約150点と、東京国立博物館所蔵の日本美術を2部構成で展示。「考える」芸術の可能性を探る。≫10月2日(火)~12月9日(日)/東京国立博物館(平成館)
イベント 街に通い、出会う。いまの生のアート
文=柴原聡子
パフォーミングアーツは、生のアートだ。何しろ実際に観る・体験することが大前提。すぐにアクセスできちゃう音楽とか映画とは、そこが違う。そのぶん、私たちがぼんやり感じている「いま・ここ」をありありと掴むことができるともいえる。社会とか、若者が感じてる不安とか、期待したい未来とか。その時代の何かを確かに表している。
フェスティバル/トーキョー18は、パフォーミングアーツに特化したフェス。さまざまな公演やトークなどのイベント、展示などが都内各地で展開される。約1か月もの間、都内各地に足を運び、毎回異なる世界を目の当たりにする経験は、一瞬のお祭りとは違って、じわじわボディブローのように効いてくるはずだ。
アジアから招くプログラムは、カンボジア・プノンペンの今を伝える公演と展示、タイの振付家が演出するダンスパフォーマンス、バングラディシュの劇団による広島・長崎の原爆投下を起点にした演劇公演などのラインナップ。一風変わっているのが、劇作家と俳優がぶっつけ本番で挑む演劇、『NASSIM』(ナシーム)。毎ステージ異なるキャストで、リハーサルはなし。俳優はたった一人で、作家本人が出す指示に従い、話し、行動する。イラン出身の劇作家に、俳優として、お笑いコンビ・ナイツの塙や森山未來らが挑む。
スマホで手軽に楽しめるコンテンツはごまんとある。でも、実際に集まり、考え、話すことで初めて、得られるものがある。全部流れていく前に、ひととき立ち止まってみよう。手間をかけると料理はおいしくなるのと同じで、ちょっとだけ面倒なこの体験は、いつもと違う発見をくれるはずだから。
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ナシーム・スレイマンプール×ブッシュシアター『NASSIM』 Photo: David Monteith-Hodge
【フェスティバル/トーキョー18】
国内外の同時代の舞台芸術を多角的に紹介する芸術祭。11回目となる今回のテーマは「脱ぎすて跨またぎ越せ、新しい人へ」。 ≫10月13日(土)~11月18日(日)/東京芸術劇場、あうるすぽっと、南池袋公園ほか

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