JOURNEY

グリーンのあるライフスタイルについて考える
後編

2017.12.18 MON
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グリーンのあるライフスタイルについて考える
後編

2017.12.18 MON
グリーンのあるライフスタイルについて考える 後編
グリーンのあるライフスタイルについて考える 後編

集合住宅が多く、居住空間が限られ、庭が貴重な存在となっている現代の都市部での生活。そんな状況において、人々の緑へのニーズが高まっている。ガーデニングをはじめとする、昨今の人々の緑との関わりについてのリポート、その後編をお届けする。

(読了時間:約6分)

© 2017 Stylus

都会のガーデナーのニーズに応えるさまざまなプロダクトとサービス

自然を感じるために、都市生活者たちはインドアガーデニングのレッスンや手軽に植物の手入れをできるプロダクト、自然にフォーカスしたInstagramのアカウントに注目している。

2016年3月、アメリカのガーデニングに関する商品やサービスを手がける会社「Homestead Gardens」は、インドアガーデニング用のプロダクトを販売し、窓際やベランダなど土のない屋内でも栽培ができる水耕栽培方法について店内で授業を開催する「Modern Homesteading」部門を開設。こうしたレッスンは、新しいスキルを容易に獲得したいと考えている、多忙で向上心の強い消費者たちに人気を集めている。
「Serax」のプラントハンガー「Bretelle」 ©SISKA VANDECASTEELE
「Serax」のプラントハンガー「Bretelle」 ©SISKA VANDECASTEELE
その他にも、コンパクトなマンションの居住者に支持を集めているのは、垂直型のガーデンと70年代風の植物ハンガーだ。 ベルギーのブランド「Serax」は、2017年1月、革製のベルトと銅製の棚でできたハンギング棚「Bretelle」(各290ユーロ)を発売。銅製の棚は追加が可能で、ここに緑を飾れば、日当たりの良い窓辺に豊かなボタニカルな雰囲気を創出することができる。
「Serax」のプラントハンガー「Bretelle」 ©SISKA VANDECASTEELE
「Serax」のプラントハンガー「Bretelle」 ©SISKA VANDECASTEELE
こうしたプロダクトの出現によって、屋内ガーデニングがますます容易になっている。 例えば、オランダのブランド「Pikaplant」は、電気を使わずに、地下水の循環と流れのサイクルを3つのセラミック製ポットと、湿度と圧力に反応して自動的に給水するシステムの組み合わせで再現し、根を強く育てる自然乾燥システムを備えた植物用トレイの新製品「Tableau」もリリースした。
オランダのブランド「Pikaplant」がリリースした植物用トレイ「Tableau」 ©Tableau
オランダのブランド「Pikaplant」がリリースした植物用トレイ「Tableau」 ©Tableau
また、世界の生花業界は年間約500億ドル、アメリカだけでも50億ドル以上もの市場規模があると言われている(Market Research、2017年)。より簡単に家で自然を感じたいという需要の高まりから、アメリカでは今、カリフォルニアのスタートアップ「The Bouqs」のような花の定期配達サービスが人気を博しているという。つまり、世界的に、緑のある生活へのニーズが高まっていると言えるだろう。

イギリス人作家のジャック・クック氏は、2016年、ロンドンで自身の木登り体験をまとめた著書『The Tree Climber's Guide』を出版。クック氏は、「樹上から見える都市には、我々が日々接しているものとは全く別の顔がある。そこには無限に広がる世界と光が満ちており、都市生活者にとって、シンプルなデトックスになるだろう。多忙な都市生活から樹上に逃れると、五感がリフレッシュされるのがわかる」と語っている。

屋内と屋外──曖昧になりつつある境界

昨今、住居においてキッチンやリビングと同様にガーデンエリアをより充実したものにしようというニーズがあり、屋内と屋外の空間が融合する傾向がある。家具デザイナーたちは、チークウッドや速乾性のあるファブリックを利用して、ラグジュアリーさや快適性を追求した屋外用のプロダクトを作り始めている。

市場規模としては、2020年までに、アメリカの屋外用家具の売り上げは19.5%上昇し、53億ドルに達すると言われている(Casual Living、2015年)。
独の家具ブランドがリリースしたアウトドアチェア©Barber & Osgerby for Dedon
独の家具ブランドがリリースしたアウトドアチェア©Barber & Osgerby for Dedon
「屋外用家具のカテゴリには、大きな可能性がある」と語るのは、アメリカの家具店「Agio」の販売担当副社長であるミハエル・ゲイロード氏。ゲイロード氏は、「今や屋外空間は、人々が手に入れたいと思う流行の生活に欠かせないものとなっている」と続ける。

アメリカでは、自宅の改装の5分の1が、キッチンを外に向かって広げ、ガーデンとの連続性を持たせるタイプのものだという統計もある(Houzz、2016年)。
フランスのメーカー「Ego Paris」が リリースした多機能シェーズロング©Ego
フランスのメーカー「Ego Paris」が リリースした多機能シェーズロング©Ego
このようにガーデンが屋内空間の延長となりつつある中、屋内用家具の美意識を屋外用にも反映させようと試みているデザイナーもいる。2017年1月にパリで開催されたインテリアに関する国際見本市「Maison & Objet」では、フランスのメーカー「Ego Paris」が二人が向き合って座れ、両側にそれぞれヘッドレストを備えた多機能シェーズロングを発表していた。

一方、デンマークの家具ブランド「Cane-line」も、木とアルミニウムのフレームでできた心地よさそうなソファや、速乾性の生地を用いたクッションなど、北欧デザインの美意識を取り入れた新作を発表していた。
「Airbnb」がロンドンにオープンした「Outside In House」©Ed Reeve
「Airbnb」がロンドンにオープンした「Outside In House」©Ed Reeve
リビングの要素を屋外に用いる傾向が活発化する一方で、屋内に外の自然を取り入れる人も増加している。北欧の家具ブランド「Design House Stockholm」は、ガラスとアッシュウッドでできたインドアガーデン用のグリーンハウス「Atelier 2+ Greenhouse」を2017年1月にローンチした。コンパクトなサイズでありながら、十分な大きさのガーデンを作ることができるというもので、こうした人々の欲求を反映したプロダクトと言えそうだ。
「Outside In House」の入り口のドアを開けると木が生い茂っている ©Ed Reeve
「Outside In House」の入り口のドアを開けると木が生い茂っている ©Ed Reeve
さらに2017年1月、宿泊サービスを提供する「Airbnb」が「Pantone」とコラボレーションし、ロンドンで、すべての部屋に植物を設えた家「Outside In House」を発表。利用者はベッドルームの芝生の上でヨガを楽しみ、屋内ガーデンやグリーン·ジンの作り方などを教える植物をテーマにしたワークショップに参加することができる。
「Outside In House」のリビングルーム©Ed Reeve
「Outside In House」のリビングルーム©Ed Reeve
Airbnbの北ヨーロッパにおけるジェネラルマネジャー、ジェームズ・マクルーア氏は、「イギリス人の約90%は、緑の空間で1時間過ごすと、ヨガをするのと同じくらいの癒やし効果があると考えているが、3分の2の人々は仕事で忙しすぎるため、その時間を見つけることが困難であると感じているようだ」と語っている。

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