人気アイドルを数多く手がける多田慎也が語る、いま話題の「東池袋52」のつくりかた

2018.03.15 20:30
2017年5月、彗星のように躍り出た全く新しいタイプのアイドルグループ「東池袋52」。アイドルだけど、なにか違う…。そう、メンバーはセゾンカード・UCカードでおなじみのクレディセゾンと関係会社の女性社員42名! ごくごく普通の会社員なのに、歌もダンスも秀逸。世間からもメディアからも注目を集める「東池袋52」の誕生や、新曲『雪セゾン』について、人気メロディーメーカー・多田慎也さんと、メンバーの高柳茉里さんに聞きました。
多田慎也さん
本気で遊ぶ! トップクリエイターが生み出した新アイドル
アイドルとして活動しつつ、普段はクレジットカード会社クレディセゾンと関係会社の社員。異色のアイドルグループ「東池袋52」が結成されたのは、2017年5月のこと。某アイドルへの一方的な(?)アンサーソングとして、シングル『わたしセゾン』で鮮烈なデビューを果たしたのは、記憶に新しいところ。

東京・東池袋「サンシャイン60」の52階に本社を置くことに由来したネーミングは、まさにあのアイドルたちを彷彿とさせますが、もちろん全くの別モノ。とはいえ、作詞はコピーライターの仲畑貴志さん、作曲は多田慎也さん、振付は振付屋かぶきもんさんと、クリエイター陣は超一流。それもあって遊びなのか、本気なのか、当初は戸惑いを隠せなかったと多田さん。
「正直なところ、大丈夫かなって思いましたね(苦笑)。最初にお話しをいただいたとき、ヴォーカルも決まっていないどころか、メンバー全員が普段、一社員として働いている方だと聞いて…。しかも歌詞をご担当されるのは、クリエイターとしても尊敬する仲畑さん。もしやドッキリなんじゃないかって、ちょっと疑ってました(笑)」

社内の公募や他薦によって集められた「東池袋52」。メンバーの高柳さんもまた、デビューに半信半疑だったと言います。

「一般企業ですし、会社がアイドルをデビューさせるなんて思ってもみなかったですね。元々、ダンスはやっていたので手を挙げましたが、どんなスタイルになるかもわからず、当初は謎ばかりでした(笑)」
そんな思いをいただきつつ、すでに完成していた仲畑さんの歌詞に曲を載せていく作業をスタートした多田さん。与えられた楽曲の制作期間は、約1週間! それでも1ミリも手を抜きたくなった。

「ヴォーカルの方の声もビジュアルイメージもわからないまま、雲を掴むような気持ちでの動き出しでしたが、ひとつだけ決めていたことがありました。それは絶対に妥協をしないこと。普段会社員として働いているからって、キーもリズムも簡単にしたくなかった。ただただ、いいものをつくるんだっていう思いがありましたね」

歌詞の中に世界観がしっかりと存在し、すんなりとメロディに載せられたというデビュー曲『わたしセゾン』。歌やダンスはもちろん、「ゲスの極み乙女。」や「乃木坂46」を手掛けるスタッフ陣によってつくり上げられたMVも、そのクオリティの高さで反響大。トップクリエイターたちの力もあり、「東池袋52」は会社員からアイドルの一員になりました。
音づくりと向き合う、クリエイティブの源泉
今回は従来と異なる音づくりに挑戦した多田さんですが、嵐やAKB48など人気アイドルの楽曲も手がけ、年間200曲以上もの作曲を行う多田さん。いつもどのように向きあっているのでしょう?

「音づくりのときはだいたい『1枚の絵』を思い浮かべます。写真かもしれないし、動画の時もありますが、映像を思い浮かべるんです。自分が経験したり、映画のワンシーンの時もありますが、絵にしないとダメなんですよね。どの絵にしようかな…と考えるんです」

ヒットを手がける多田さんの音づくりには、クリエイターらしい独特の感性が生かされているようです。映像を音にするという行為は、なかなか真似できるようなものではありません。

「絵を音にしていくのは、ぱっと受け取ったインスピレーションを焼き付けて、あとはひたすら音をつくっていく。最初にカタチに縛られすぎないというか、決めつけすぎないようにしています。あくまでもアーティストさんに、できたものをどう料理していただくかなので」
頭から離れない“雪セゾン”。名フレーズの生み出し方
先にメロディをつくってから詩を載せていくことが多い中、「東池袋52」がこれまでにリリースした4曲すべてが、歌詞が先にあり、それをメロディに載せて制作されました。それなりにテクニックを要する作曲ですが、仲畑さんの歌詞は自然とメロディを浮かばせてくれるのだと多田さん。

とくに、昨年末にリリースされた『雪セゾン』では、そのメッセージをしっかりと受け取って制作に臨むことができたのだとか。
「東池袋52」高柳茉里さん
「まず衝撃的だったのは、“なんてなんてなんてなんて”という繰り返しの歌詞。仲畑さんは、なんでメロディもない段階で、繰り返しのフレーズを使ったのかなって。きっとこの歌詞で何かを提案しているのでは…と思いました。だから、なんとしてもいいメロディに載せたい、載せなきゃいけないと考えていたら、自然と最初にそこのメロディラインが浮かんでいました」。

「難しくて苦労した」と高柳さんがいうラップから始まり、切ないも明るさを感じるポップなメロディが印象的な今作。頭から離れないと話題になっているのが、サビの“雪セゾン”というフレーズです。

「このサビの始まりから、世界観が分かれる歌詞だなって思ったのです。前半では相手に語りかけるように、サビでは自分の純粋な気持ちを書かれているので、それに応えるべく曲調も2部構成にしたいなと。だからAメロの“なんてなんてなんてなんて”を区切りに、ここで風向きが変わるようにメロディを載せていきました」。

思わず口ずさみ、頭に残るメロディを生み出し続けるヒットメーカーの多田さん。『雪セゾン』はセゾンカード・UCカードの「Apple Pay」CMソングとして起用されていますが、一度聞いたら自然と口ずさんでしまいます。CMには高柳さんはじめ、東池袋52のメンバーが出演しています。これからの「東池袋52」も気になりますね!