2~3日の作業が数時間に。外部委託に頼らず“自分たちで撮れる”現場へ。京王建設が「トッタロー」で実現した配筋検査DX

2026.10.28 16:00
ピクシーダストテクノロジーズ株式会社
人手不足や日程調整の課題を解消し、現場に撮影の「主導権」を取り戻す

京王建設株式会社・(仮称)豊島区駒込1丁目9番地マンション計画 作業所 田部所長、大参(おおみ)様、本社建築本部 當麻(とうま)様に聞く、配筋検査DXの実際
京王建設株式会社 駒込1丁目作業所の皆様(左から大参様、田部所長、當麻様)
【こんな企業・現場におすすめ】
- 符号の種類が多い現場:柱の符号がすべて異なる、セットバックがあるなど、符号が増えるほど「範囲内を一気に撮れる」効果が大きい。
- 撮影を外部委託している現場:委託先の人手や日程に左右されず、鉄筋の進捗に合わせて自分たちのタイミングで撮影できる。
- 配筋写真の撮影を主体的に進めたい現場:準備・撮影・整理といった付帯作業を減らし、検査や施工検討に時間を使う。

配筋検査のたびに発生する写真の撮影・整理・帳票化。京王建設では他社のデジタルツールや外部の撮影委託も活用してきたが、撮影そのものの手間や写真整理の負担に加え、委託先の人手不足や日程調整にも悩まされてきた。同社の(仮称)豊島区駒込1丁目9番地マンション計画では、トライアルを経て、ピクシーダストテクノロジーズ株式会社(以下、PxDT)が提供する配筋検査DXサービス「トッタロー」を導入し、撮影から帳票作成までの流れを見直したという。作業所の田部所長、大参様、本社の當麻様に、導入の経緯から今後の期待までを伺った。
導入前の課題: 手をかけるべき仕事の時間確保
──トッタロー導入前、配筋検査に関してどのような課題をお持ちでしたか。
當麻様「これまでは1枚ずつ撮影して、写真を確認して、整理して、帳票にする。その作業にやはり相応の時間がかかっていました。記録業務を効率化して、本来かけるべき確認業務や判断、施工検討に、より時間を使えるようにしたい。そのように考えていました。」

同社では以前から他社のデジタルツールも活用していた。マグネットや黒板を設置して回るような撮影こそ最近は行っていないものの、撮影という行為自体はこれまで通りで、写真の整理にも手間が残っていた。撮影・整理は作業所の社員と派遣スタッフで担うほか、外部の撮影委託も活用していたが、そこにも課題があったという。
當麻様「外部の撮影業務委託を利用する場合、希望する時期に必ず人員を確保できるとは限りません。撮り残しが出れば所員が追加撮影するか、再度日程を調整する必要があります。外部人員の手配に左右されにくい方法も必要だと感じていました。」
トッタローを知ったきっかけ:展示会で感じた「写真の流れが楽になりそう」
きっかけは2025年12月の展示会(建設DX展)だった。配筋写真の業務を効率化できるものはないかと探していたところ、トッタローの説明を聞き、撮影から整理までの一連の写真の流れがかなり楽になりそうだという印象を持ったという。
導入の決め手:人が判断する工程を残した、記録業務の「今の最適解」
──導入の決め手はどのような点でしたか。
當麻様「今、AIや画像認識の技術はすごく進化してきていると思うのですが、やっぱり人が最終判断するという部分は現状残っていると思います。そのうえで、今の最適解として記録業務を効率化できる、という点が大きな決め手でした。」

一方で、導入前には懸念もあったという。
當麻様「整理と帳票化はある程度お任せできるので、そこは減るだろうなと。ただ、現場での撮影を実施する行為自体は今までとはちょっと違うやり方なので、そこが実際上手くいくかな、というのはありました。」

トライアルで実際に現場での撮影を経験し、「いけそうだ」という手応えを得たことで、本格的な導入に至った。
インタビューに応じる當麻様
導入後の効果:付帯作業が減り、外部の都合に左右されにくくなった
──導入してどのような変化がありましたか。
大参様「配筋写真のための準備や撮影、整理、帳票作成といった付帯作業を減らせたことが大きな改善点です。配筋写真は品質を残すための重要な記録ですが、写真を撮ること自体が目的ではありません。短縮できた時間を配筋の確認や施工検討、工程・安全管理といった別の業務に振り分けられれば、建設現場全体の生産性向上や時間外労働の削減にもつながると考えています。」

大参様「もう一つの変化は、外部人員との日程調整に左右されにくく、現場の進捗に合わせて撮影できるようになった点です。」

作業時間の短縮は、現場を預かる所長の目から見ても実感できているという。
田部所長「私が過去に行った写真撮影は本当に昔ながらのやり方で、マグネット持って行って、ロッドを設置して、アングルを決めて……と、下手したら2~3日かかっていました。見ている感じだと、それが数時間になっている印象はありますね。」

PxDTが他現場で集計した範囲では、撮影工程の工数は70~95%程度の削減が確認されているが、駒込1丁目の現場についても、工事の完了時点で削減実績を取りまとめる予定だ。

写真帳票の品質についても、問題はないとの評価だ。デジタルメジャーの精度についても、構造監理者に確認してもらったうえで問題なく運用できているという。
インタビューに応じる大参様(左)・田部所長(右)
現場の声と、さらなる期待
當麻様「整理から帳票化までを支援してもらえるのが一番の評価ポイントです。この現場で使い始めてからデジタルメジャーの当て方やデータの受け渡しなどでやり取りがありましたが、レスポンスよく、柔軟に対応してもらえるのは助かっています。」

田部所長「最初はデジタルメジャーの当て方などで気になるところもありましたが、今は問題ありません。役に立っているのがアラートシート※です。所長からすると、ピンポイントで『ここを確認してください』と来ると、これはいい、これはどうなっているんだろう、と見るきっかけになります。」

當麻様「360度で撮影しているので、何かあったときに動画から確認できるのも助かります。」

※アラートシート:トッタローより写真を納品する際にお客様に提出するシート。写真帳票を作成する上で気になったポイントを取りまとめてお知らせしている。
インタビューの様子(當麻様(左)・大参様(中央)・田部所長(右))

一方で、率直な改善要望も聞かせていただいた。
田部所長「鉄筋径が写真で分かるようになれば、別撮りしなくてよくなる。カットオフや定着も、動画に映っている中でデジタルスケールを当てられるのであれば、別撮りの時間も減らせると思います。あとは、ARマーカーを登録する業務に、やや時間がかかっているようです。」

ARマーカーの登録については、これまで所定のExcelシートへの入力をお願いしていたが、設置場所とマーカー番号が分かればメモ書きでの受け渡しでも対応できるよう、運用を見直した。鉄筋径や定着・カットオフへの対応も、PxDTで機能拡充を検討しているテーマだ。
話題は、AIと現場の役割分担にも及んだ。
田部所長「AIに任せきりになると、我々も現場を見る力がなくなってしまう。鉄筋がどうなっているのかよく分からない現場係員が出てくるかもしれない。現場の人が時間をかけて実施する仕事と、AIに任せていい仕事を明確に分けていかなければいけないと思っています。」

PxDTでも、AIによる画像認識で帳票作成の自動化を進める一方、最終的には必ず人が確認したうえで納品する体制を維持していく考えだ。
今後の展望:「撮る」と決めて、主体的に動ける現場へ
──同じ業界で、どのような企業・現場におすすめできますか。
田部所長「この現場は20m角ほどの規模ですが、柱の符号が全部違ったりする。符号が多い、記号が多い、セットバックで断面が細くなっていく、といった現場ほど、範囲内を一気に撮れるメリットは大きいと思います。他社設計の場合はなおさらです。」

當麻様「初めから『トッタローで配筋写真の撮影を実施する』と決め込んでおいて、効率よく撮影できる手段を持ち、自分たちの判断で主体的に進められる状態にしておく。そこに価値があると思っています。」

田部所長「鉄筋工事の進捗は日々変わるため、外部の写真撮影業者さんに依頼する場合は、撮影可能なタイミングとの調整が必要です。自分たちで撮れるなら、『じゃあこの日に撮ればいい』で済む。いつでも撮れると思えるのは安心感がありますね。」

社内の他現場でも、符号の多い現場ではより大きなメリットが期待できるという。
編集後記
本来かけるべき確認や判断の時間確保に課題があった。京王建設の皆様が語った課題は、本来の仕事に充てたい時間を写真業務が占めていたという現場の実情を映している。トッタローがもたらしたのは、撮影時間の短縮だけではない。外部の都合に左右されにくく、自分たちのタイミングで記録を残せるという“主導権”を現場に取り戻したことにある。そして「最後は人が判断する」という姿勢を大切にしながら技術を使いこなす同社の姿勢は、現場とAIの付き合い方を考えるうえでもヒントになるだろう。

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