『金閣寺』のマルコス・モラウが、デヴィッド・ボウイをダンスで世界へ解き放つ。2026年夏、三島由紀夫の『金閣寺』を大胆に舞台化し、日本の観客に鮮烈な印象を残した世界を熱狂させる天才演出家、マルコス・モラウ。その次なる創作のテーマとして彼が向き合うのは、20世紀を代表するアーティスト、デヴィッド・ボウイです。
Bunkamuraは、ロンドンの世界的ダンスハウス、サドラーズ・ウェルズとともに、新作ダンス作品『ダンス・フォー・ボウイ(SUBJECT TO CHANGE - A Dance for David Bowie)』を国際共同制作します。本作は2028年春、ルクセンブルク市立劇場にて世界初演。その後ヨーロッパ各地を巡り、2028年秋にはロンドン・サドラーズ・ウェルズで英国初演、2029年春には東京でアジア初演を予定しています。
パリ、ロンドン、東京、ニューヨークをはじめ、異なる都市と文化を結びながら一つの作品を育て、そして世界へ届けていく。Bunkamuraがサドラーズ・ウェルズ、ラ・ヴェロナルとともに挑む、これまでにないスケールの国際共同制作プロジェクトが始動します。
(C)Sukita
ボウイ本人のオリジナル・ヴォーカルを使用。世界各地の民族音楽・コーラスとともに、新たな音楽世界によるダンス作品デヴィッド・ボウイは、音楽だけでなく、ファッション、映画、アート、パフォーマンスなど幅広い分野に影響を与え、20世紀後半のポピュラー・カルチャーを大きく変えたアーティストのひとりです。「ジギー・スターダスト(Ziggy Stardust)」、「アラジン・セイン(Aladdin Sane)」、「ハロウィン・ジャック(Halloween Jack)」、「シン・ホワイト・デューク(Thin White Duke)」など、そのキャリアを通じてボウイは次々と異なるペルソナを生み出してきました。新しい姿をつくるたびに、それまでの自分を手放し、音楽だけでなく、声や身体、衣裳、アイデンティティまで変化させていく。その絶え間ない自己更新こそが、ボウイの創作を支えていた大きな力のひとつでした。
本作『ダンス・フォー・ボウイ』でマルコス・モラウが描こうとしているのも、ボウイの人生そのものではありません。彼が目を向けているのは、ひとつの自分を終わらせ、また別の自分へと生まれ変わっていく、その創造のあり方です。原題の“Subject to Change”とは、「変更される可能性がある」「まだ決まった形ではない」という意味を持つ言葉です。ひとつの姿にとどまらず、変わり続けることで新しい表現を生み出してきたボウイ。その姿勢を手がかりに、モラウは、変身や再生、自己更新というテーマをダンスとして立ち上げます。
音楽には、デヴィッド・ボウイの代表的楽曲と本人のオリジナル・ヴォーカルを使用。ボウイの楽曲を、世界各地で録音する民族音楽に根ざしたコーラスでアレンジし、本人の歌声と重ね合わせます。さらに、ヴォーカリスト、マリア・アルナルの歌声も交わり、ボウイのレガシーが、時代や国境を越えて、異なる声へと受け渡されていくような音楽世界をつくり上げます。さらに、2024年のDanza&Danza賞で選ばれた『Notte Morricone』(2024)でも印象的なタッグを組んだアレックス・レーザー・ヴァティシェとベン・メールヴァイン(OZCUR)による作曲、シルヴィア・ドゥラニョーによる衣裳、マックス・グレンツェルによる舞台美術が加わり、ボウイの創造性を起点とした新たな舞台作品が生まれます。
<演出家プロフィール>
(C)下村一喜
マルコス・モラウ(1982年/スペイン・バレンシア出身)
2005年にLa Veronal(ラ・ヴェロナル)を設立し、写真・演劇・身体表現を横断する演出で、世界の主要劇場へ作品を送り出す振付家・芸術監督。2013年スペイン国家舞踊賞、2023年フランス芸術文化勲章シュヴァリエ受章。ベルリン国立バレエのアーティスト・イン・レジデンスとして活動し、tanz誌「Choreographer of the Year」に2023年、2025年の2度選出された。
民俗舞踊や儀礼的な身体の記憶を現代に語り直す手法で注目され、BNE『Afanador』では写真家ルーベン・アファナドールの世界を起点にフラメンコの舞踊言語を脱構築し、官能と宗教性を交錯させた。代表作『Sonoma』では映画監督ルイス・ブニュエルへのオマージュとして、太鼓の連打や儀礼性を帯びた群舞によって原初的なエネルギーを喚起。『Firmamento』ではアラゴン地方の伝承を手がかりに、マスクやマリオネットのモチーフを通して、思春期から大人への通過儀礼を描いた。さらに近作『Notte Morricone』では、映画音楽家エンニオ・モリコーネのスコアを素材に、映像と身体の記憶を再構築している。
2026年3月にはパリ・オペラ座で新作『Etude』を発表。2025/26シーズンよりNDTのアソシエイト・コレオグラファーを務める。2026年夏にはBunkamuraとの初の共同制作として、三島由紀夫の小説を原作とする『金閣寺』を演出・振付。文楽や歌舞伎、日本の伝統音楽と現代ダンスを交差させた独自の舞台世界を生み出し、大きな反響を呼んだ。今回の『ダンス・フォー・ボウイ』は、それに続くBunkamuraとの新たな共同制作となる。
<演出家コメント>
デヴィッド・ボウイは、いわば“芸術的な転生”を繰り返したアーティストでした。
彼はそのキャリアを通じて、次々と新たなペルソナを生み出し、次の存在が生まれるために、それまでの自分を自ら終わらせていきました。ジギー・スターダスト(Ziggy Stardust)として現れ、その存在を意図的に終わらせ、アラジン・セイン(Aladdin Sane)として再び姿を現す。ハロウィン・ジャック(Halloween Jack)として生き、やがてシン・ホワイト・デューク(Thin White Duke)へと変貌する。ペルソナが変わるたびに、それまでの存在は自ら消えていきました。そして最後の変容が『ブラックスター(Blackstar)』です。ボウイは、自らの死さえも作品そのものの一部へと変えました。『ダンス・フォー・ボウイ』は、この“転生”のサイクルそのものを題材とする作品です。死と再生を何度も繰り返すことによって、生き続けていく。その現象そのものを描きます。
ボウイがその芸術人生を通して繰り返してきた創造と再創造に、私なりの方法で、ダンスを通して応答する新たな作品を生み出せることを楽しみにしています。ボウイが生涯を通して実践してきたそのサイクルを、今度は音と身体によって、舞台上でリアルタイムに立ち上げていく。私自身にとっても大きなインスピレーションであり続けるアーティストから着想を得て、新たな作品を創作できることを、大変光栄に思います。
<東京公演概要>
A Bunkamura, Sadler’s Wells and La Veronal production
SUBJECT TO CHANGE - A Dance for David Bowie(原題)
『ダンス・フォー・ボウイ』
演出・振付:マルコス・モラウ
日程:2029年春
企画・制作:Bunkamura・Sadler’s Wells・La Veronal