■40年前の歌を、2026年の世界から問い直す
本書では、佐野さんの楽曲を、「現在」から読み直す対話と論考が多くあります。
1985年に発表された「CHRISTMAS TIME IN BLUE」をめぐるテキストを一部紹介します。
松尾 「『CHRISTMASTIME IN BLUE』の『BLUE』を、当時の僕は解釈できていなかったんだな」と、このあいだ聴きながら思ったんです。40年経った今、あのときとは違って響くんですよね。「平和な街も/闘ってる街も」という歌詞がありますよね。
佐野 あります。
松尾 「愛してる人も/愛されてる人も」「泣いてる人も/笑っている人も」と対照的な表現が並んでいきますよね。いかにもクリスマスのポップソングらしく、いろんな人生がある、と歌っているように聴こえます。ところが、そこに不意に「平和な街も/闘ってる街も」が出てくる。これはもう、多様性という言葉では括れない。残酷なまでの非対称性なんですよね。そこがいま、重く響くのです。つまり「闘っている街でクリスマスを迎える人がいる」という言葉の重みと深みが、残念なことに今は40年前よりもっと増しているんじゃないかと思うんです。85年当時、あそこに託した時代的背景、そして佐野さんの心情をお聞かせ願いたいです。
佐野 それはとてもシンプルです。1980年代、「CHRISTMAS TIME IN BLUE」のレコードが出た85~86年も、今と同じように世界中に、大小ありますけれども、さまざまな国際的な紛争がありました。僕らの歴史を振り返ると「紛争、戦争の歴史」と言っていいという見方を僕はしている。「平和な時代っていつだったんだよ」みたいな。
松尾 世界規模で考えると。
佐野 世界規模で考えると。そこで僕が考えるのは、子どもたちの平安ですね。戦争はあくまでも大人たちの理屈で引き起こされるもので、そこで一番被害を余儀なくされているのは子どもたちです。少なくともクリスマスの時期だけは、子どもたちが安心で自由に朗らかに時間を過ごしてほしい。そういう願いをこめて、世界中の子どもたちがバラの花をつむいで輪にする。「Ring-a-ring-a-Roses!」というフレーズです。