沸き立つ湯の中に差し水をしたかのように、アリーナにぱんぱんに膨れ上がっていた期待感がその瞬間にすっと鎮まった。開始15秒、河村勇輝からジョシュ・ホーキンソン、西田優大と回ったボールが、スクリーンを使ってフリーになった八村塁に送られる。久しぶりに日の丸を背負ったNBAプレーヤーは、ミドルレンジからのシュートをさも当たり前のように決め、軽くバックステップを踏んだ。会場を埋めた1万3000人にとって期待通りのプレーのはずだった。むしろ、あまりに期待通り過ぎて、虚を突かれたようになったのかもしれない。続けざまに八村は、ペイントに鋭く切り込んだ河村からのパスを受け取り、涼しい顔でスリーポイントを沈めた。もうあっけにとられる必要はなかった。そうだ、これが見たかったんだと我に返ったように、場内は一気にヒートアップしていった。(photograph by Kiichi Matsumoto)