ドイツの「鶴の一声」でエンジン車がOKに! まったく予測不能なカーボンニュートラルへの道

2023.04.14 06:20
この記事をまとめると
■EUが自動車に対するCO2規制について事実上、軌道修正
■ドイツの「2035年以降もe-フューエルの利用を認めるべき」という要請が受け入れられた
■自動車産業の未来は現時点で「不透明」だと言わざるを得ない
2035年以降もe-フューエルの利用が認められる!?
  いったい、欧州は今、どうなっているのか?
  欧州連合(EU)が自動車に対するCO2規制について事実上、軌道修正した。
  まずは、これまでの流れを整理しておく。対象となっているのは、EUが2019年に打ち出した欧州グリーンディール政策における、政策パッケージ「Fit for 55」だ。
  Fit for 55では、輸送分野について、乗用車は2030年までに欧州域内で販売する新車のCO2排出量を1990年比で55%削減を規定した。
  その先として、2035年には乗用車と小型バン(商用車)で同100%減としている。同100%減というのは事実上、EV(電気自動車)または燃料電池車を指し、ハイブリッド車とプラグインハイブリッド車は含まないことになる。
  これに対して、欧州議会でFit for 55の承認に関する投票が行われ、賛成多数で可決されたあと、ドイツが「2035年以降もe-フューエルの利用を認めるべき」と要請を出した。
  その要請をEUが受け入れ、今後はドイツの要請を含めた内容で規定策定の手続きを進めるとしたのだ。
  こうした、議会の全体投票で決まったものが、ドイツ一国の要請で覆ってしまうことが可能である、という欧州議会の仕組み自体に違和感を持つ人が、日本のみならず世界各地で少なくないだろう。
  それにしても、どうしてEUは、ここまで急激なEVシフトを推奨しているのか?
  背景にあるのは、いわゆる「グリーン産業」におけるグローバルでの主導権争いだ。言い換えると、投資の呼び込みだ。
  欧州グリーンディール政策は、環境対応という名のもとの産業競争力強化政策なのだ。
  これは、日本の岸田政権が閣議決定した「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」も基本的には同じことだと言えるだろう。
「欧州内の企業や地方自治体の反発の現れ」といった印象
  ただし、EUの政策と日本の政策では、大きな違いがある。EUではCO2排出量の規制強化が主体であることに対して、日本は政府が呼び水として債権を発行して国として資金をまず導入して、民間からさらなる投資を呼び込もうとしている点だ。
  そのため、日本では「xx年までに、EVをxx%といった規制」は設定せず、電動車を主体とする次世代環境車を普及させるための達成目標という表現にとどめている。
  日本自動車工業会は「カーボンニュートラルに向けた方法がいくつもある」として、各種電動車に加えて、新しい燃料による内燃機関の活用を模索しているところだ。
  今回のEUによる事実上の軌道修正は、EUによるあまりにも強い政治主導の方策に対する、欧州内の企業や地方自治体の反発の現れ、という印象がある。
  電動化の強化について、国や地域の社会情勢によって大きな差があることは明らかだ。 充電インフラが課題であることは言うまでもないが、産業構造の急激な変化によって失われる雇用も少なくないからだ。
  一方で、アメリカのインフレ抑制法(IRA)や、ロシアのウクライナ侵攻による欧州域内でのエネルギー安全保障に関する大きな状況変化などによって、EUとしてFit for 55を軌道修正せざるを得なくなった、とも言えるだろう。
  こうした政治的な思惑による経済界や自動車産業界の変化によって、これまでEVシフトを強く推進してきた一部の欧州メーカーは、まずは「株主」や「投資家」の理解を得られるような中長期戦略の修正を迫られることになるのではないだろうか。
  また、e-フューエルについては、「定義が不明瞭だ」という認識が自動車産業内で強い。
  クルマのカーボンニュートラルについては、政治的な観点、そして技術な観点の両面から、今後も予測不能な出来事がまだまだ起こることが考えられる。
  カーボンニュートラルに関係する自動車産業の未来は現時点で「不透明」だと言わざるを得ない。

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