2位じゃダメな理由はなに? 自動車メーカーが「販売台数No1」を意地でも獲得したい事情

2023.04.09 10:00
この記事をまとめると
■「販売ナンバーワン」という謳い文句はクルマ販売の現場において鉄板だ
■ライバルが不在の車種では「ナンバーワン」を謳いやすい傾向にある
■多くの人はまわりと足並みを揃える傾向にあるのでこの謳い文句は有効だという
「販売ナンバーワン」を謳う理由を聞いてみた
  ダイハツの販売店では「軽自動車の販売ナンバーワンは譲れない」と言う。
  理由を尋ねると以下のように説明した。「軽自動車はボディサイズやエンジン排気量が全車共通だ。しかも人気が(全高を1700〜1800mmに設定した)スーパーハイトワゴンに集まり、外観が似通って見える。車内の広さも大差ない。価格も同程度だ。しかも軽自動車には、クルマに詳しくないお客様も多く、車種を決める時に迷いやすい。この時に販売ナンバーワンが選択の決め手になる」。
  同様の話はスズキの販売店からも聞かれる。「以前のスズキは軽自動車の販売1位にこだわり、乱売してムダも生じた。そこで今は小型車にも力を入れ、軽自動車の販売1位ではなくなったが、トップを取り戻したい気持ちはある」。
  ライバル車とは違う明確な個性が備わり、それによって好調に売られているなら、販売1位を誇示する必要はない。たとえばアルファードは「Lサイズミニバン販売ナンバーワン」とは宣伝していない。強烈な豪華さによって販売が好調で、その地位はもはや脅かされないからだ。
  しかしホンダN-BOXは、軽自動車の販売ナンバーワンを宣伝に使っている。2022年のN-BOXの販売台数は20万2197台で、軽自動車で2位のダイハツタントは10万7810台だから、約2倍の差を付けた。ダイハツ・タントや3位のスズキ・スペーシアが販売台数でN-BOXを抜くことはほぼ不可能だが、それでも販売ナンバーワンを宣伝する。
  この背景には、ライバル車との差が縮まる危機感がある。アルファードとエルグランドの間には、商品力の大きな隔たりがあるが、N-BOX/タント/スペーシアは接近している。そこでN-BOXは販売ナンバーワンで差を保とうとする。
売れまくってるほうがユーザーの安心度が高い
  このほか日産も「販売ナンバーワン」が好きだ。
  2022年はノートとノートオーラを合計して「電動車販売ナンバーワン」になったと宣伝している。日産は過去に、先代ノートについて「2016年度下半期国内販売でコンパクトセグメント1位を獲得」とわかりにくい宣伝をしたことがある。当時の国内販売1位は先代プリウスだったが、日産はe-POWERで弾みを付けたノートを1位にしたかった。そこで「下半期のコンパクトセグメント」という条件付きの1位を宣伝した。
  このほかリーフの「EV販売ナンバーワン」もあり、「それは当たり前でしょう」という感じだった。このように販売ナンバーワンは「行列のできる○○」と一緒で、商品力をアピールできて話題作りにもなる。 また他人と一緒の商品を選ぶと安心できる、逆に個性を表現するとイジメられる? という感覚もありそうだ。
  かつてダイハツにムーヴラテという、背の高いボディに可愛いフロントマスクを備える軽自動車があった。発売された2004年頃は、ハイトワゴンが今ほど多くなかったから、開発者に「なぜ女性向けの可愛い顔を背の高い軽自動車に組み合わせたのですか?」と尋ねた。
  返答は「今は背が高いほうが、お客様(軽自動車ユーザー)同士でコミュニケーションを図りやすい」であった。意味がわからず改めて尋ねると、周囲の人達が背の高い軽自動車を使っている場合、自分だけが背の低い車種だと、コミュニケーションを図りにくい、つまり周囲との摩擦が生じやすいという話だった。
  ただし当時のダイハツには、背の低いミラジーノもあった。そこを尋ねると「ミラジーノには仕事をしている女性のお客様が多い。CMの効果で、学校の先生に人気が高く、個性的なクルマに乗っても摩擦が生じにくい」と返答された。
  他人の目など気にせず、好きなクルマに乗ることのできる世の中になって欲しいと思う。「販売ナンバーワン」の宣伝は、ちょっと悲しくて、空しい。

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