【試乗】いろいろ今風のクルマになったけどカングーらしさは健在! ネガがないから悩ましいのはガソリンかディーゼルかだけ

2023.03.09 07:00
この記事をまとめると
■自動車ライターの嶋田智之さんが新型ルノー・カングーのガソリンとディーゼルに試乗
■いつ何時も軽快に気持ちよく走りたいという人はガソリンエンジンを選ぶのがいい
■ロングドライブを疲れ知らずに楽しみたいという人にはディーゼルエンジンがおすすめ
ブラックもカラードでもガソリンとディーゼルが選べる
  ルノー・カングーは初代も2代目も、背の高いユーモラスなスタイリングからは想像できない、元気のいい走りと絶妙な曲がりっぷりが楽しいクルマとして賞賛されてきた。3代目はどうかといえば、喜ばしいことにそうした性格にはまったく変わりがなかった。というよりも、むしろここはかなり大きく進化したといっていいだろう。
  3代目カングーにはガソリンエンジンとディーゼルエンジンが用意されていて、ボディ同色バンパーの仕様でもブラックバンパー仕様でも、好みで選ぶことができるのがうれしいところだ。組み合わせられるのは、従来より1速多い、7速DCTとなる。
  最初に走らせたのはガソリンエンジンのモデルだった。先代のガソリンエンジンは1.2リッター直噴ターボだったが、3代目では変更があって、ルーテシアやキャプチャーなどに積まれてるのと同じ1.3リッター直噴ターボが搭載されている。パワーとトルクは131馬力/5000rpmに240Nm/1600rpmだから、ルーテシアと同じチューニングと見ていいだろう。
  そんなところからも想像できるかもしれないが、数値以上に活発でフィールも爽快、スポーツ系のエンジンでもないのに気持ちよく走れる、というのはルーテシアと共通してるところだ。1600rpmで2.5リッター自然吸気エンジン並みの240Nmを発生させるトルクフルで扱いやすいエンジンではあるけど、2500rpmあたりを越えると次第にパワーが盛り上がってくる感じがあって、スピードも気持ちよく伸びていく。
  その加速感は、1.3リッターという排気量から想像するより強力だ。レスポンスもシャープといえる部類だし、トップエンドまで軽快にまわってくれるし、サウンドも思いのほか快く、なかなかスポーティな味わいなのだ。ブンブンまわすのが楽しくなる。
  もう一方のディーゼルのほうは、2代目カングーの最後の限定車に搭載されてかなり好評だった、1.5リッターのターボディーゼル。本国では1990年代後半から採用され、熟成を重ねてきた名機といえるエンジンだ。ルノージャポンが本国に働きかけて、日本の各種規制に対応すべくテクニシャンたちが時間をかけて開発し、ようやく日本に導入することができたという経緯がある。ルノージャポンもルノー本社もツボがわかってる、というわけだ。
  こちらは116馬力/3750rpmに270Nm/1750rpm。ディーゼルらしく発進の段階からしっかりとトルクの分厚さを感じさせてくれる力強いフィーリングで、それほどまわさなくてもスムースにスピードにのせていくことができる。けれど、これがまた意外や軽やかに吹け上がるし速度の伸びもいいから、ガンガンとまわしながら走って行くような楽しみも味わえる。
  フィールは異なれど、総合的なパフォーマンスでいうならガソリンエンジンにまったく引けを取ってないと思う。音も静かな部類だし振動も少ないし、あらためていいエンジンだな、と感服させられる。
ネガティブなところが見当たらないのがカングーだ
  ガソリンエンジンとディーゼルエンジン。じつは搭載エンジンの違いは、そのまま乗り味の違いになって表れていたりもする。ディーゼルはエンジン重量が90kgほど重く、その重さのほとんどがフロントに集中しているのだ。
  基本、どちらも快適な乗り心地を味わわせてくれる。プラットフォームが最新のものとなり骨格がしっかりしたことで、サスペンションもこれまで以上に実力を発揮できる余地を手に入れたためか、先代よりも滑らかにしっかりと伸びたり縮んだりする印象がある。フラット感も増している。
  そして基本、どちらも気持ちよく曲がってくれる。曲がりっぷりは先代以上といっていいだろう。脚がよく伸び縮みしてくれるわりにはロールは明らかに先代より抑制されていて、ステアリングギア比も17:1から15:1とクイックになっているので、操作したぶんだけ素早く素直に曲がるし、ステアリング操作に対して車体が遅れることなく反応する。先代までのグーッと車体を深く傾かせながら曲がっていくような動きは影を潜めてるのだけど、腰を粘らせていくときのフィールはよく似ていて、そこがカングーらしいな、なんて思えたりする。
  ならばガソリンとディーゼルでどう違うのかといえば、ガソリンエンジンを積んだカングーは、クルマの動きが全体的に軽やかな印象で、コーナーでは軽快感すら感じられるほど。一方のディーゼルは全体的にズンと腰が据わっている印象で、腰の柔軟なバネを活かしながら曲がっていく感じ。高速領域でもどしっとして安定感が強いのは、ディーゼルのほうだ。
  ただし、だからといってガソリンが高速道路で心許ないなんてことはぜんぜんないし、ディーゼルが曲がらないかといえばそんなこともまったくない。要はキャラクターが違う、ということなのだ。あえていうなら、いかなるときも軽快に気持ちよく走りたいという人はガソリンエンジンを選ぶのがいいと思うし、ロングドライブを疲れ知らずに楽しみたいという人はディーゼルエンジンのほうが合ってる。そんな感じだろうか。
  それでも乗り比べてみたらどっちを選ぶべきか悩んでしまうという人が出てくるのを予想できちゃうくらい、魅力は拮抗してたりもする。新型カングー最大の問題は、もしかしたらそこかもしれない。
  一部のユーザーにとっては待望だったADASも充実してるし、スマホ連携のインフォテインメントシステムも備わり、SiriやGoogleアシスタントを使っての音声操作もできる。タイプAのUSBポートが5カ所に用意されていて、12Vの電源ソケットも車内に4つ備わった。8インチのスクリーンにリヤカメラだってある。まさに16年分の進化、である。
  それらを含めて大切なところは守りながらも大幅に魅力を増していて、ネガティブなところが見当たらないのが新型カングーだ。384万円からという値付けは悩ましいかもしれないけど、原材料や部品、輸送費の高騰で世界的に自動車の価格が上がってるという状況もあるし、それに──数値に表れない部分での違いは結構あるけど──スペックの似たライバルはもう少し高価だったりもする。メーカーもインポーターもがんばってくれた結果の値段だと思うし、それだけの価値があるクルマに仕上がってることはたしかだ。僕はそう感じてる。

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