電動車でも退屈とは無縁! まるでランエボばりに振り回せる「三菱アウトランダーPHEV」と自在に曲がる「eKクロスEV」が楽し過ぎて笑う

2023.03.06 17:00
初代アウトランダーPHEVの登場は衝撃だった!
  2013年に三菱自動車がアウトランダーPHEVを登場させたとき、そのパッケージングの素晴らしさや環境性能の高さ、電動車としてのさまざまな優れた走行性能、制御技術などに「これは自動車界のノーベル賞」ものだ、とため息がでるほど感心したものだ。今やアウトランダーPHEV方式とも言えるモーターやバッテリーのパッケージングは世界中の電動車のスタンダードとなっている。
  アウトランダーPHEVは前後輪アクスル個別に駆動用の電動モーターを搭載し、4WDの全輪駆動として仕上げられている。フロントには2.4リッター直4ガソリンエンジンも搭載し、時には発電機として、また時には駆動エンジンとして稼働。BEV(バッテリーEV)の課題となる航続距離を気にすることなく実用的に十分な総航続距離を実現している。20kWhという大容量のリチウムイオンバッテリーはホイールベース内の床下に格納され、安全性を確保しつつ重心位置を低減し操縦安定性にも寄与させているのだ。
  4WDシステムは前後個別のモーターで駆動する。すなわちプロペラシャフトを持たず、前後アクスルが機械的に結合されていない。それぞれのモーターを状況に応じて自由自在に駆動することができるので前後駆動力配分は理論的に前100:後0から前0:後100まで無段階に変化させることが可能だ。それを如何に路面状況に合わせて制御するかが肝になる。三菱自動車はそれをS-AWC(スーパーオールホイールコントロール)と呼ばれるランサー・エボリューション時代から培ってきた4輪駆動制御技術を活かし、自由自在のコントロール性を持たせて仕上げているのである。
  一方、もう一台のエポックメーキングなクルマ、eKクロスEVは2022-2023日本カー・オブ・ザ・イヤーを軽自動車として初めて獲得した。前輪を駆動するFFレイアウトのBEV(バッテリーEV)として登場。20kWhのリチウムイオンバッテリーはアウトランダーPHEV同様にキャビンフロア下に配置されている。軽自動車として企画されただけに最高出力は64馬力に抑えられているが、最大トルクは195Nmを発進した瞬間から発揮させられる。これはガソリンエンジン車で言えば2リッターエンジンに相当するほどのトルクで、軽自動車であるeKクロスEVを驚くほど力強く走らせるのだ。
  今回はアウトランダーPHEVとeKクロスEVの2台を冬の三菱自動車十勝研究所テストコースに持ち込み、電動車の優れた雪上性能を試そうと企画した。
  一般的に雪道は滑りやすく、駆動や制動、旋回性能を安全確実に発揮させるのが難しい。雪道専用タイヤであるスタッドレスタイヤ装着は必須だが、そのグリップを最大限に引き出す制御が極めて重要だといえる。
  一般的なガソリンエンジン車であれば駆動力はエンジンのスロットル制御によるトラクションコントロールで過大な駆動輪の空転を抑えることでなされ、制動力は摩擦ディスクブレーキのロックを制御するABSに頼ることになる。
  それでも4WD車であれば十分な駆動力を得ることができるが、止まる性能、曲がる性能に関して言えばFFも4WD車も大差なくなる。冬の北海道でもっとも多い事故のパターンは4WDのトラクション性能で速度は上がるが、減速が十分行えず、速度超過でカーブを曲がりきれずにコースアウトしてしまうパターンだといわれている。ドライバーは4WDであることを過信せずに、低速で走ることを常に心がけなければならない。
  今回の試乗は、こうした問題に対して、じつは電動車が優れた適合力を持っていることを確認するのが狙いだ。
ランエボのDNAが息づくアウトランダーPHEVの走り
  電動車は主に駆動/回生を電動モーターにより行う。その制御はコンピュータで緻密にコントロールされ、ガソリンエンジンやブレーキでは引き出せない微小なスリップコントロールが可能になる。
  たとえば発進加速シーン。ガソリンエンジンでアクセルを踏み過ぎると駆動輪が空転してしまう。車輪速センサーが空転を感知するとコンピューター制御でエンジンのスロットを絞るのだが、エンジンの出力制御はモーターほど緻密には行えない。減速時も同様で、ブレーキを強く踏み過ぎるとホイールロックを感知してABSがブレーキ液圧をリリースするのだが、ディスクブレーキとブレーキパッド間の摩擦力コントロールは極めてアナログな制御となっている。
  これをモーター駆動に置き換えると、駆動制御は電流量制御で連続的に行え、応答性も素早い。それを極微小な領域で連続的に行えば、さも自然に駆動力として引き出せることになる。減速回生制御も理屈は同じで、電流の緻密制御がドライバーのペダル操作を遥かに凌ぐ制動コントロールを行い、雪道とは思えないほどの制動力を発揮させるのである。
  アウトランダーPHEVで圧雪路のスラローム走行を行う。発進はスムースでホイールの空転を起こさない。パイロンに向けてステアリングを切り込むと、駆動モーターの駆動力配分が後輪寄りとなり、前輪は操舵応答性を高めてスムースなターンインができた。さらに切り返しではヨーレートを大きく引き出し向きを転換するため前後車輪の内輪にブレーキをかけるブレーキAYC(アクティブヨーコントロール)が作動し、スムースにライントレースして向きを変えてくれるのである。
  POWER、ECO、ノーマル、ターマック、グラベル、スノー、マッドとドライブモードはさまざまな路面コンディションに高度に適合するように用意されており、雪道ではスノーがもっとも適しているが、逆に圧雪路でターマックを使用したり、深雪ではマッドが適合したりと乗り味の変化を楽しむことも可能だ。
  アウトランダーPHEVは悪路走破性も高いSUVだが、雪道では縦横無尽なコントロール性に富んだ走りを堪能することができた。
  同じコースをeKクロスEVでも走ってみる。こちらはFFの2輪駆動だが、車体が小さく軽いのでフラットな雪上路面では舗装路と同様な発進性能が引き出せる。もちろん駆動モーターが微小領域の制御を自然に行っていることでドライバーは車輪の空転を意識することなく安心してステアリング操作に集中できるのだ。
  スラローム区間でステアリングを操舵するとモーターの駆動トルクが抑えられ旋回応答性を高める。ドライバーはハンドル操作だけで向きが変わるフィーリングでいるが、じつはモーターが旋回に適した駆動力制御を気付かれないように行っている。その結果、ライントレース性に優れ、EVの静かさとモータートルクの力強さで、軽自動車であることを意識させない質感の高い走りを実現していた。
  減速時の回生も同様で、ブレーキペダルを踏んでもモーター回生による制動Gが高まるのだが、イノベーティブペダルオペレーションモードスイッチを選択するとアクセルペダルだけで加速/減速制御が可能になる。アクセルをリリースする速度が速いと回生強度が高まり、雪上とは思えないほど強い制動Gが発揮される。イノベーティブペダルオペレーションモードは雪道でこそ、その真価が発揮できる装備だと認識させられた。それはアウトランダーPHEVにおいても同様だ。
  テスト走行のクライマックスとして、圧雪のワインディング路をアウトランダーPHEVで攻め込んだ。ここはWRCのラリーカーのテストでも使用されるグラベル路で、冬季は積雪によりフラットで状態のよい圧雪路となる。
  本来、アウトランダーPHEVのようなSUVが得意とするコースではないはずだが、アウトランダーPHEVはここで感動的な走りを体験させてくれた。
  ASC(アクティブスタビリティコントロール)機能をオフにし、ドライバーのスキルを最大限発揮できる状態にしてアタック開始。直線で加速させS字コーナー手前でスロットルオフにすると減速Gが高まり前輪荷重が増す。そこでステアリングを操舵しフェイントモーションを引き起こすとアウトランダーPHEVは見事なドリフト姿勢となり、コーナー出口に向けてアクセルオンすれば強大なトルクでゼロカウンターの4輪パワードリフト状態に持ち込めるのだ。
  とくにスノーやマッドのモードではASCオフ時にも後輪駆動寄りの駆動力配分となりアクセルでリヤスライド量をドライバーがコントロールできる。こうしたドライバー主体の走りを楽しめるのが三菱自動車4WDの魅力で、それは世界のラリーシーンを席巻したランサー・エボリューションの時代に培われたDNAそのものだった。
  電動車=環境性能という認識が多く浸透しているなかで、三菱自動車の電動車は走行特性もより緻密に制御し進化させているのだ、ということを改めて認識させられたのである。

あわせて読みたい

【試乗】ソルテラ改良モデルの進化を改良前モデルと乗り比べでチェック! 楕円ステアリングに渋滞時手放しに「寒冷時の充電効率」まで上がっていた
WEB CARTOP
復活の兆しあり!? スキルがなくても「それなり」に走れる&楽しめる「4WDスポーツ」5選
ベストカーWeb
エディブルフラワーを使用した上生菓子「カーネーションボックス」を数量限定で発売
PR TIMES Topics
【プロトタイプ試乗】レクサスのいま一番ホットな最新電動ラインナップを一気乗り!「レクサス・RZ300e&UX300e/300h」
CARSMEET WEB
積雪・凍結・低気温…厳しい自然環境が育んだボルボのピュアEV「EX30」の走行安定性を本国スウェーデンで実感した
&GP
これがにんじんジュース? 驚きのカゴメ新商品を体験レポート
antenna
【試乗】雪道で見せつけられた電動車の優位性! レーシングドライバーが最新日産車を雪上で一気乗り!!
WEB CARTOP
日産の四駆技術はひと味違う! 「e-4ORCE」がもつ圧倒的な強みとは?
WEB CARTOP
人気声優・小野賢章が「自分をアップデートさせる」ドライブ旅へ! @江ノ島〜葉山
antenna
ZR-Vが最も安定!? CX-60は雪上でドリフトできる!? 雪道で最も頼れる最新SUVはどれ?
ベストカーWeb
【雪上試乗】雪上でのアリアのバランスに優れた走りに魅了された!「日産インテリジェント・ウインタードライブ」
CARSMEET WEB
ビジネス界の未来を拓く 「STEVIE®️ AWARDS」の魅力にせまる
antenna
お…おおお…これカッコいいぞ…新型エクスパンダークロスに待望の新開発HV追加!! タイで発表、日本でも売ってよーー!!
ベストカーWeb
アテーサからe-4ORCEまで……脈々と受け継がれる日産4WDの系譜は「R32GT-R」から今の「アリア」に伝承!
ベストカーWeb
新TVCM「アニメとススメ!」篇放送開始
antenna
後輪駆動は雪道が苦手……の通説は昔の話!? 苦手と言われてきた理由とイマドキの後輪駆動車の真実
WEB CARTOP
何回言えばわかるんだよ!!! 「ちょっとそこまで」が命取り……夏タイヤで雪道を運転するのは「違法行為」です
ベストカーWeb
世界最高峰のヨットレース「アメリカズカップ」が追い求める「人の可能性」
antenna*
エンジンで発電するならそのままエンジンで走ったほうが効率いいんじゃない!? シリーズハイブリッドはなぜエコなのか?
WEB CARTOP
【試乗】素直にカッコイイ! 走りは上質! 燃費もスゴイ! クラウン・スポーツPHEVに死角らしい死角が見当たらない
WEB CARTOP
【ロクシタン】春もうるおうボディ「アーモンド」シリーズの限定アイテムを発売
PR TIMES Topics