たった13台のみのディーノがオークションに登場! 美しすぎるレーシングマシン「ディーノ206S」とは

2023.02.12 17:30
この記事をまとめると
■ディーノ206SはF1/F2用に開発されたV6エンジンを搭載するレーシングカー
■クーペとスパイダーが存在し、とりわけスパイダーは13台が存在するのみ
■2023年2月15-17日に開催されるオークションに出品
苦境に立たされたエンツォはV6エンジンに活路を見出した
  1960年代半ば、あの250GTOの活躍をひとつのピークとして、フェラーリはコンペティツィオーネ(レーシングスポーツカー)とストラダーレ(ロードゴーイングカー)を、各々独自の方向へと進化させる戦略を採ることになった。その決断を下したのは、すでにこの頃にはストラダーレの世界には興味を失っていたフェラーリ社の総帥、エンツォ・フェラーリその人であり、結果的に250GTO以降、コンペティツィオーネは250LMに、そしてストラダーレには275GTBという後継車が生み出されることになった。
  前後してフォードからの買収策を提案されていたエンツォは、しかしながらレース活動における最終決定権が自分に残らない内容であることをおもな理由にそれを拒否。だが、モータースポーツの世界においても、エンツォはさまざまな困難に直面する。
  それは1965年、現在のFIAの前身組織ともいえたCSIが、1967年からF2に搭載されるエンジンを、V型6気筒を上限とする量産エンジンに限ることを表明したことに始まった。当時のフェラーリは、F1はもちろんのことF2にも積極的な体制で臨んでおり、少なくとも年産で500基の生産を必要とするという量産エンジンの開発とその搭載車を現実のものとすることなど夢のような話だったのである。
  ちなみに当時のフェラーリが年間に生産していたストラダーレの台数は約700台程度であったことを知れば、それがいかにエンツォにとって絶望的な条件であったのかは、さらに明確なものとなるだろう。
  とはいえフェラーリは、過去にV型6気筒エンジンを開発した経験がないわけではなかった。最初のV6フェラーリは1957年にランチアからそれを受け継ぐことで登場した、1.5リッターのV型6気筒エンジンを搭載するD50 F1。このエンジンの開発者はかのヴィットリオ・ヤーノであり、エンツォの息子であるアルフレード・フェラーリ(ディーノの愛称で知られる)もそれに関係したとされる。
  このV型6気筒エンジンは、その後さまざまな形式へと進化を遂げていくが、1965年のレーシングスポーツカー、166P用に開発された1.6リッター仕様をさらにボアアップすることで排気量を2リッターへと拡大。これを搭載した206Pは、同年のヨーロピアン・ヒルクライム・チャンピオンシップを獲得するなどの大活躍を見せたのである。
  そしてそもそもの1.6リッター仕様を搭載するモデルをフィアットの力を借りて量産すれば、例のF2の新レギュレーションにも対応できる。エンツォはここに活路を見出したのだ。
13台のみが生産された貴重な206Sのスパイダー
  その166Pと前後して、1966年には今回紹介するスポーツカーレース用の206Sにも進化を遂げることになる。
  206Sに用意されたボディはクーペとスパイダーの2タイプ。今回RMサザビーズが、同社のパリ・オークションに出品したモデルは、画像からも明確にわかるとおり、わずかに13台が製作されたのみとされるスパイダー仕様の206S。
  その流麗なボディデザインは、スポーツ・プロトタイプカーの330Pのスケールダウン版とも表現できるじつに魅力的なもの。
  実際の製作はモデナのピエロ・ドロゴ率いる、カロッツェリア・スポーツカーズの手によって行われた。その核となるセミモノコックシャシーに、アルミとファイバーグラスを組み合わせたボディの性能も秀逸で、1966年シーズンに206Sはタルガフローリオで2位、ニュルブルクリンクで2位と3位、またスパでも6位という好成績を残している。
  フェラーリの歴史家として知られるマルセル・マッシーニ氏の研究によると、出品車のシャシーナンバー032は、1966年から1967年にかけてイタリアのヒルクライムに参戦するなど、こちらも確かなレース履歴が残っているほか、2000年代にはフェラーリ・ヒストリック・チャレンジにも何回かエントリーした実績があるという。
  そして、2014年にはフェラーリ・クラシケでフルレストアの作業を受け、いわゆるフェラーリからのお墨付きであるレッドブックも取得された由緒正しきモデルだ。
  はたしてパリ・オークションで、このフェラーリの華やかなモータースポーツ・ヒストリーを彩ったディーノ206Sはどれだけの高値で落札されることになるのだろうか。それは世界中のフェラーリ・ファン、そしてクラシックカーの愛好家たちが熱い視線を注ぐところだ。

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