子どもたちの主体的な学びこそが「学びに向かう力」を引き出す ——みんなの学習クラブが目指す「学び」の姿

2023.02.08 08:00
みんなの学習クラブは、学校内のパソコンやタブレット端末を活用し、子どもたちの主体性や対話を引き出すことで学力向上につなげるインターネット配信型の教材です。株式会社日本コスモトピアでは40年前の創業時から一貫して「自立学習」を提唱し、自立学習を通して学びをデザインし、社会を変えることを目指しています。みんなの学習クラブが生まれた背景や子どもたちの学びへの想い、今後目指す未来について、代表取締役社長の下向 峰子氏に話を聞きました。


私たちが向き合うべき課題は学校にもあるのでは?


日本コスモトピアは学習塾としてスタートし、創業7年目頃から学習塾向けの教材提供を開始しました。そこで下向氏が直面したのは、学習塾が「補習塾」になってしまっている現実。多くの子どもにとって、学校での基礎学習が定着していないがゆえに、学校で習ったことを学び直す場になっていたのです。


「塾は学校が終わってから通うので、子どもたちにとって肉体的な負担も大きい。そもそも学校で基礎基本を定着させることができれば、有効に学習の時間が使えて、かつ深い学びに繋がります。そして復習だけにとどまらず、もっと応用・発展的な内容に取り組むこともできます。そういうことから、私たちが向き合うべき課題は学校にもあるのでは、と感じるようになりました。」


開発当初(2000年頃)は、教員向けの授業用プリント作成ツールとして、一部の学校に採用されました。当時は英語と数学の二教科のみだったところ、ある教育委員会から全教科で導入したいと相談を受け、みんなの学習クラブの前身が誕生します。その頃、文部科学省で大きく掲げられていたのは、『学力向上』『自学自習力の育成』『教員の資質向上』の3つでした。


その後2005年に、枚方市の中学校の、ある校長先生との出会いがきっかけで、放課後学習向けに大きく展開していきました。枚方市では特に「自学自習力育成」に力を入れており、生徒たちの意欲を引き出すために、学校内塾『ご縁塾』として放課後学習が始まりました。
「この中学校では新たに放課後の学習室を開くことになり、弊社に教材の相談がありました。それは、卒業間近の中学3年生に、学びを通して何かを掴んで卒業してほしいという校長先生の熱い想いからでした。参加した生徒は、公立高校に不合格判定を出された中学3年生が20名ほど。現場で一番感じたのは、生徒たちの学びに対する姿勢の変化です。もともと、教室ではじっとしていられない、勉強ができないと『ダメ』レッテルを貼られていた生徒たち。実際に教室が始まってみると、不思議なことに生徒たちはどんどん学習に向かうようになっていきました。いつもは一緒にふざけているような友達が遊びに来ても、今は集中してるからと追い返す場面もあったり。できない、と言われていた生徒たちが必死に取り組む姿を見て、本当は彼らも学びたい、理解したい気持ちでいっぱいなんだと改めて気づかされました。」


与えられた課題ではなく、生徒自ら学びをデザイン
決められた時間に学校に行き、決められたカリキュラムに従って勉強をする。そんな勉強を強要される生徒たちには自由がなく、勉強をつまらないものと感じている生徒も少なくありません。この放課後教室では、生徒たちは自分で学びたい内容を選び、取り組みます。中には中学3年生の時点で中学1年生の単元から学びたいという子も現れました。


「彼女は授業中に配られたプリントはすぐに無くしてしまうような子。それがこの教室では3ヶ月で600枚ものプリントに取り組めたのです。人から与えられた宿題と、自分でやると決めた課題。ここには大きなモチベーションの差が生まれます。それこそが、自立学習(=自学自習)の姿だと私たちは考えます。」


結果、3ヶ月後には全員が公立高校の合格判定が出るまでに学力が向上。しかし変化が起きたのは生徒たちだけではありませんでした。


「教室には先生たちもかわるがわる見学に訪れました。普段の授業中とはまるで違う生徒たちの様子に驚く先生が多かったようです。
そこから、『3年生だけではなく1、2年生にも』という保護者の声にも後押しされて、放課後教室の次は、全員が使える学習室へと発展。
そして更に先生方の授業改善にも一緒に取り組むようになりました。研修に参加したり、先生の進めやすいように教材を工夫したり。最初から全ての先生が乗り気だったわけではありませんが、生徒たちが結果を出すにつれ、先生たちも徐々に変化していきました。」


その後、みんなの学習クラブは放課後学習のみならず、授業用のツールとしても幅広く、全国の学校現場へ広がっていきました。
そして実践している内容が、毎年各地から寄せられるようになり、「実践報告集」(2006〜2015年)が誕生しました。2016年からは、取材を踏まえて新たに「学クラ新聞」となり、今も1年に3〜4回発行されています。


※実践報告集2006 (各学校での実践事例の報告集)
※学クラ新聞25号
学校は、基礎基本を学ぶ場でもあります。分からなかった箇所は繰り返し取り組むことで定着させることができます。そのために大切なのが、自分で分からないところを発見すること。みんなの学習クラブには、基礎が学べるプリント「iプリ」、そこから学びを定着させる「発展」や「演習」プリント、そして授業の要点をまとめた3分動画の「マルチメ」といったコンテンツがあります。これらのコンテンツを生徒自身が選び、学習することで、自主的に学ぶ力が自然と身につきます。


「今までの教育ではずっと、間違えることはよくないこと、と教えられてきたように思います。だからつい正解探しをしてしまう子が多い。本当は、間違えることで自分の現在地を知ることができ、何をやるべきかが自らわかると思います。近道の正解だけ教えられてしまうと、深い思考が育たない。やる気がある子とそうでない子の違いは、学習の仕方を知っているかどうかだと思うのです。なので、みんなの学習クラブでは、あえてオートマティックになりすぎず、様々なところで生徒が考えるポイントを作っています。」


便利さで本質を見失わず、大切な思いを根幹にこれからも学びを変えていきたい
今や学校現場では、生徒に一人一台タブレットが配られていますが、未だ活用は試行錯誤が続いています。昨今テクノロジーが進化し、学校現場にもAIが浸透しつつあります。
しかしながら、下向氏はAIで完結する学習だけに留まることには疑問があると言います。


「AIを活用することにより、先生方の仕事が効率的になる側面は確かにあります。その結果、生徒に向き合う時間が増えるというメリットも、もちろんある。しかし生徒は、AIの指す通りにやるだけでは、考える力がどんどん失われてしまいます。与えられた課題をただ解いて、正解を目指すだけ、という学習になってしまうからです。私たちは何よりも、生徒自らが考え決断することを大切にしたいと考えています。


私たちの一番の強みは、現場の先生と一緒に作っているということ。教育に対する想い、向かう方向が一緒だと感じる先生方に支えられてきました。さらに今後は、子どもたちも教材作りやコンテンツ作りに加わってもらいたいと思っています。子どもにはアイデアがたくさんあるし、想像力も豊か。子どもたち自身が『学びに向かう力』に気づき、意欲的に課題に取り組み、創造力を発揮することができるような教材づくりと仕組みづくりをしていきたいと考えています。


今後目指すのは、私たちの大切にしている本質的な思いが広がること。学びの根源にあるのは自立学習、そこに共感いただける仲間を増やしていきたいです。その上で、みんなの学習クラブという学習ツールを通して子どもたちの学びを後押しし、未来に向かって希望を持って変革してきたいと思っています。」


みんなの学習クラブ:
日本コスモトピア:
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