ブランド大変革のEV SUV ジープ・アベンジャーへ試乗 欧州に向け新開発 航続408km 前編

2023.02.01 00:00
公開 : 2022.12.12
全長4080mmとコンパクトなEVのジープが登場。欧州市場に向けて開発された新型の実力を、英国編集部は高く評価します。
欧州にフォーカスした小型クロスオーバー
ジープ・ブランドは、欧州では余り大きな支持を得ていない。現在はステランティス・グループへ統合されたものの、それ以前はフィアット・クライスラー・オートモービルズ傘下だったこともあり、イタリアだけは例外のようだが。

近年の欧州市場では、SUVやクロスオーバーが売れ筋車種になっている。ところが、ジープが占める割合は1%程度に留まっている。
【画像】 大変革の新型EV ジープ・アベンジャー 兄弟モデルと内燃エンジン版を含む競合を比較 全154枚
そんな状況を打開すべく、ステランティス・グループが大きな期待を寄せているのが、今回ご紹介する新モデル。バッテリーEV(BEV)のジープ・アベンジャーだ。

欧州市場に合わせて設計からデザインまで進められた初めてのジープで、生産自体も欧州の工場で行われる。アベンジャーは、北米市場では販売される予定がないという。

全長は4080mm、全幅が1780mm、全高が1530mmとコンパクトなSUVで、ルノー・キャプチャーやフォルクスワーゲンTクロスなどと同じBセグメントに属する。しかも、時代を先取りしたBEVでもある。

購入時のユーザーの悩みを少なくするため、トリムグレードなどの設定はシンプルなものになるという。お好みで数種類のオプションパッケージと、ボディカラーを選べば済むらしい。

ジープの欧州部門を率いるアントネッラ・ブルーノ氏は、「適正なタイミングでの適正なクルマ」だとアベンジャーを表現する。その実、競争力はなかなか高そうだ。
クラスではトップクラスの走破性
駆動用モーターはフロント側に1基が載り、最高出力156ps、最大トルク26.4kg-mを発揮する。駆動用バッテリーは実容量で51kWh。航続距離は最長408kmがうたわれ、急速充電は最大100kWに対応する。ジープだが前輪駆動となる。

エアコンには、効率に優れるヒートポンプ式を採用。10%ほど航続距離に違いが出るそうだ。
ジープ・アベンジャー(欧州仕様)
イタリアやスペインはBEVを受け入れられる態勢が充分に整っておらず、ガソリンエンジンを搭載したアベンジャーも販売される。だが、英国には導入予定がない。

コンパクトな前輪駆動でBEVと聞くと、どこへでも目指せるというブランドの製品イメージへ合致しないように感じるかもしれない。ところが、アベンジャーの実力はこのクラスではトップクラスといっていい。

悪路でモノをいう路面とボディとの角度は、フロント・オーバーハング側のアプローチ・アングルで20度、ホイールベース間のブレークオーバーが20度、リア・オーバーハング側のデパーチャーで32度もある。最低地上高は200mm確保されている。

走破性を高めるため、ステランティス・グループのeCMP2プラットフォームを採用した同クラスのモデルより、前後のオーバーハングは30mmほど短い。各アングルは、ひと回り大きいジープ・レネゲードに匹敵するという。

ちなみに、全長4236mmのレネゲードもBセグメントのSUVではある。アベンジャーは後継モデルではなく、補完し合う関係になるとのこと。このカテゴリーの人気ぶりを考えると、個性の違うモデルが2台並んでもユーザーは見つかるだろう。
ジープらしくタフな印象のスタイリング
BEVにも対応したeCMP2プラットフォームは、同じグループに属するプジョーe-2008やオペル・モッカ・エレクトリックを生み出している。アベンジャーが誕生することがてきたのも、このプラットフォームが持つ高い汎用性とスケールメリットにある。

車格が小さいモデルほど販売価格は低くなり、メーカーの利益率も低くなる。一般的には開発コストを回収しにくいが、多様なモデル展開でそれをカバーできる。
ジープ・アベンジャー(欧州仕様)
スタイリングは、e-2008やモッカ・エレクトリックなどと充分な差別化が図られている。7つに別れたフロントグリル・カバーが、ジープらしさを演出。シャープなボディサイドのライン構成も好印象だ。

フェンダーアーチやボディ底面はブラックの樹脂製カバーが覆い、タフな印象を強めている。無塗装のカバーとすることで、所有期間の維持費を約850ポンド(約14万円)節約できるという。岩へぶつけてバンパーの修理に迫られても、塗装する必要がないためだ。

車内には、フロントシート側だけで34Lの収納スペースが用意されるなど、欧州市場に合わせた気配りも利いている。ジープの資料によれば、580個の卓球ボールをしまうことができるとか。

インテリアで筆者が特に便利そうに感じたのが、ダッシュボードの6割以上の幅を占めるワイドな小物トレイ。メガネや自宅の鍵、スマートフォンなどを置くのに丁度いい。

この続きは後編にて。
記事に関わった人々
執筆:マーク・ティショー
英国編集部ライター


翻訳:中嶋健治
1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。
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