ジムニーやアルトなどでヒット連発のスズキにだって苦手なジャンルが!? スズキの普通乗用車セダンは苦難の連続だった

2023.01.25 17:00
この記事をまとめると
■スズキが販売していた普通乗用車のセダンモデルを振り返る
■スズキ初のセダンは1965年登場のフロンテ800だったが、その販売不振がスズキを軽自動車に走らせた
■以降もカルタス、エリオ、SX4などのハッチバック車を3ボックス化してセダンとして販売していた
1965年には普通乗用車セダンを発売していたスズキ
  現在、多彩なジャンルの軽自動車や小型SUV、マイクロミニバンなどをラインアップするスズキですが、過去にはセダンを販売していたことをご存知でしょうか? もちろんアルトなど、現在「軽セダン」と呼ばれるものではなく、3ボックスでトランクが備わった正統派セダンです。
  今回はスズキが過去に販売していた軽セダンではない普通乗用車の3ボックスセダンを紹介していきましょう。
改めて振り返る、軽自動車のパイオニアメーカー「スズキ」とは
  スズキが誕生したのは1920年。もともとは足踏み式織り機を製造する「鈴木式織機製作所」がルーツとなります。創業者の鈴木道雄氏は100以上の特許や実用新案を所得した発明王で、戦争が終結した後、1952年に自転車にエンジンを搭載したパワーフリー号を販売。その後もオートバイの製造・販売を続け1954年に社名を「鈴木自動車工業」へと変更します。
  その後、1955年にスズキ初となる自動車(軽自動車)「スズライト」の販売をスタート。
  四輪車メーカーとなった同社は1965年に初の小型乗用車「フロンテ800」を発表。フロンテ800は今回のテーマとなるスズキ初のセダンでもありました。
  その後、軽自動車を中心に販売を続けてきた同社は1990年に「スズキ株式会社」に改称。GMやフォルクスワーゲンと資本提携を結ぶも、現在はいずれも提携解消。2020年に創業100周年を迎えるなど、国内外で存在感を誇る自動車メーカーとなっています。
歴代スズキセダン
・フロンテ800(1965〜1969年)
  ボディサイズ:全長3870mm×全幅1480mm×全高1360mm
  スズキは1963年に開催された「第10回全日本自動車ショー」に2ドアセダンを参考出展。その参考出展車と同じコンセプトのまま1965年に販売したのがフロンテ800でした。2サイクル800cc直3エンジンを搭載し4速MTと組み合わせ、サスペンションはフロントがウイッシュボーン式トーションバー、リヤはトレーリングアーム式トーションバーを採用。ボディはモノコック構造とし曲面ガラスを採用するなど当時としては先進的なセダンとして登場しました。
  このようにスズキとしては意欲的なモデルでしたが、販売は低迷。1969年まで販売が続けられましたが、フロンテ800の販売が成功しなかったことで、スズキは小型乗用車の生産から手を引き軽自動車の販売に力を入れていくことになりました。フロンテの名も軽自動車として引き継がれています。
・カルタスエスティーム(1989〜1995年)
  ボディサイズ:全長4075mm×全幅1600mm×全高1380mm
  スズキは1981年からGMと提携。そのGMとジョイントし誕生したのがカルタスです。カルタスは1983年に初代が登場し北米市場ではシボレー・スプリントとして販売されました。
  2代目カルタスは1988年に登場しましたが、1989年に4ドアセダン「カルタスエスティーム」を追加しています。
  ハッチバックをベースとして4ドアセダン化したエスティームは、3ドア&5ドアハッチバックに搭載されていなかった1.6リッター直4エンジンをはじめ、1.3リッター直4、また後に1.6リッターは1.5リッターエンジンへ変更されています。
  セダンのトピックスではないですが、2代目カルタスには海外専売モデルだったコンバーチブルの国内販売が行われるなど、話題が豊富なモデルでした。
  エスティームは1995年に、この後に紹介するカルタスクレセントが販売されたことで生産を終了。ただし、2代目カルタスのハッチバックは2000年まで販売が続けられています。
・カルタスクレセント(1995〜2002年)
  ボディサイズ:全長4195mm×全幅1690mm×全高1395mm
  1995年に登場したカルタスクレセントは、3代目カルタスではありましたが、カルタスよりひとつ上の上級モデルとして登場しています。ハッチバックとともに登場したセダンはエスティームよりひとまわり大きいボディを備え、とくにリヤシートまわりの空間が拡大しました。
  カルタスクレセントのセダンは1.5リッターエンジンを搭載。ハッチバックに用意された1.3リッターエンジンは設定されていません。すべてのエンジンが4バルブ化されていたことも特徴といえるでしょう。また、セダンに搭載されるエンジンですが後に1.6リッターエンジン搭載車も追加されています。
  このモデルにはセダンをベースとしたステーションワゴンが新たに設定されたことも話題を呼びました。セダンより上級化が図られたステーションワゴンはルーフレールを標準装備したほか、ルーフエンドスポイラー、イタリアOZ製アルミホイール、電動サンルーフ、樹脂製フロントグリルバーなどを装備。パワーユニットもハッチバックやセダンにはない1.8リッターエンジンもラインアップされています。
  カルタスクレセントのセダンは2001年に販売が終了。ステーションワゴンは2002年まで販売が続きますが、販売終了とともにカルタスがブランド消滅となりました。
もっとも最近のスズキのセダンは警察車両としても有名
・エリオセダン(2001〜2007年)
  ボディサイズ:全長4350mm×全幅1690mm×全高1545mm
  失礼ながらスズキファン以外に車名を聞いても思い出せない方が多いと思われるエリオ。エリオはカルタスクレセントの後継モデルとして2001年にデビュー。5ドアハッチバックが先に登場し、その後にセダンが追加されました。
  ハッチバックはミニワゴン的なフォルムを備えていましたが、セダンは“らしい”オーソドックスな3ボックススタイルを採用。ただ、5ドアハッチバックをベースにしただけあり、ややずんぐりした見た目になりました。
  ハッチバック、セダンともにパワーユニットは1.5Lリッターエンジンのみを用意。可変バルブタイミング機構を備えた1.5リッターエンジンは、最高出力110馬力を発揮。5速MTと4速ATが組み合わされています。
  ただ、2003年のマイナーチェンジで1.8リッターエンジンを追加。この1.8リッター搭載車は、ボディにフェンダーモールを採用したことなどによって全幅が1700mmを超え、3ナンバーサイズとなりました。
  機能や装備が充実しつつリーズナブルな価格を売りにしたエリオでしたが販売は成功せず、2007年に販売を終了。1代限りのモデルになってしまいました。
・SX4セダン(2007〜2014年)
  ボディサイズ:全長4490mm×全幅1730mm×全高1545mm
  SUVが人気を集めつつあった2006年、エリオの後継モデルとして登場したのがSX4でした。デビュー時は高めの最低地上高を備えた5ドアハッチバックのみをラインアップしていましたが、2007年にセダンを追加しています。
  2代目スイフトをベースに開発されたSX4のハッチバックはワイドな全幅や4WDを備えるSUVらしいモデルでしたが、セダンの駆動方式はFFのみ。パワーユニットもハッチバックが設定していた2リッターエンジンは搭載されませんでした。ただ、ハッチバックをベースにしつつも、イタルデザインが手掛けたエクステリアは、オーソドックスながらもエリオセダンのようなずんぐり感はおさえられていました。
  SX4はSUVブームにうまく乗ったことでまずまずの販売を記録しましたが、セダンは人気を得ることができず2014年に販売を終了。後継モデルとして2015年にSX4 S-CROSSが登場しましたが、同車にはセダンがラインアップされませんでした。
・キザシ(2009〜2015年)
  ボディサイズ:全長4650mm×全幅1820mm×全高1480mm
  スズキ初となるミドルクラスセダンとして2009年に登場したキザシ。欧州市場をターゲットにしたことで全幅は1820mmとワイドボディを採用しました。キザシは2009年にデビューしましたが、驚くのが完全受注生産で販売されていたこと。販売開始当時はすでに国内でのセダン離れが加速していた時期ではありましたが、それでも完全受注生産だったことは驚きです。
  キザシに搭載されるパワーユニットは2.4リッター直4。エスクードに搭載されていたものでしたが、実用面などを重視した改良が施されています。国内仕様にはCVTが組み合わされました。
  エクステリアはワイドな全幅を備えたことでなかなかスタイリッシュ。セダン好きにとって魅力を感じるフォルムだったことは確かです。ただ、キザシと聞いて自動車ユーザーがイメージするのは乗用車としてではなく警察車両としてのそれ。捜査車両や覆面パトカーとして数多くの車両が導入されたキザシは、ある種、天敵として捉えられた車両でもありました。
  そんなキザシは2015年に生産終了。総販売台数のうち約30%が警察車両となっています。
まとめ
  数は多くありませんがセダンの販売を行ってきたスズキ。改めて振り返ると、どの車種も販売的に成功しなかったことで地味な存在です。ただ、警察車両として数多く利用されてきたキザシは別。
  良いか悪いかは別として、自動車ユーザーを「ドキっ」とさせるセダンとして、ある意味、存在感が高いセダンであることは間違いありません。

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