この記事をまとめると
■東京オートサロン2023には自動車大学校の学生たちが製作したクルマも展示された
■いずれも完成度が高く、プロの作品にも負けず劣らない仕上がり
■学生たちの自由な発想による学生スピリッツがあふれたいくつかのモデルを紹介する
自動車大学校の学生たちによる作品が力作ぞろい
国内最大級となるカスタムカーの祭典、東京オートサロン2023がその幕を閉じましたが、数百台もの素晴らしいカスタムカー、チューニングカーが展示されました。
自動車メーカーがガチで作ったカスタムカーや有名ファクトリーの作品などがスポットライトを浴びましたが、じつは学生さんたちが心血を注いだカスタムカーというのも少なからず出品されていたことご存じでしょうか。毎年、各地の自動車大学校などが独自のカスタムカーを製作、出品しているのですが、とにかく完成度が高い! 前述のワークスマシンたちに引けを取るどころか、プロの作品を追い越さんばかりの勢いです。そんな学生スピリットあふれる作品、いくつかご紹介しましょう。
東京自動車大学校 TOYOTA AE86レビン改
AE86のN2仕様を現代風にカスタムというと、ありがちなマシンを想像しがち。ですが、東京自動車大学校の作品はひと味違っていて、サンルーフを後付けしたり、オリジナルデザインのエアロパーツを装着したりと、なるほど令和っぽいAE86に仕上がっています。
また、このマシンは2023モデルと名付けられているのですが、じつは2018年の東京オートサロンに出品された先代モデル「TAUS86」なるモデルをレストア&カスタムしたリメイクモデル。なるほど、学生さんらしく、卒業生が残していったマシンを「放っておくには忍びない」という思いからのリイマジン=再解釈! そんなエピソードを聞くに及べば、ちょっとした胸アツストーリー、なんだかカスタムカーに温かみすら感じられます。
実際には、先代のサビやへこみを修正し、さらに全塗装というプロセスを経て、エアロやサンルーフの加工となり、まさにプロの仕事となんら変わることのない作業が重ねられているのです。その甲斐あって、仕上がりのよさは学生作品の域をはるかに超えた完成度!
同時に製作された「AE86 TAKUMI オイル 藤原とうふ店号」も名前のとおり、有名なドリフト漫画をリスペクトした作品。
面白いのは、AE86は学生さんたちが生まれる前に発売されたクルマであり、漫画そのものだってリアルタイムで読んだものではないところ。やっぱり、クルマが大好き、カスタム上等ってスピリットは老若男女あまり変わるものではないってことですね! 2台の86は大人世代を妙に嬉しくしてくれるものでした。
日産京都自動車大学校 フェアレディX
昨年リリースされたばかりのフェアレディZのパーツを使ったと思われるカスタムSUVは、日産京都自動車大学校の作品です。なるほど日産の系列らしく、最新モデルのパーツをふんだんに使いつつ、ベースとなったムラーノ(TZ51)のボリューム感をさらにふくらませた魅力的な1台。
世の中のすべてのお父さんに捧げます、というメッセージが込められており、これこそお父さん世代に根強い人気を誇るZを真正面からとらえた理由かと。ムラーノを使うことで、家族みんなをZに乗せてあげられますよ! という思いやりあふれたカスタムは、やっぱり学生さんならではのアイディアといえるのではないでしょうか。
また、作品の仕上がりも極上で、Zのパーツ以外はすべて発泡ウレタンによる造形とするなど、プロ顔負けの作業がなされています。注目すべきはボディカラーで、Z Customised Protoで採用されていたオレンジをアレンジしたもの。特徴的なZの顔にもしっくりと馴染んでいるあたり、学生さんたちもZが大好きなんだろうなと感じた次第です。
トヨタ東京自動車大学校 Jジェット90&美しい野生
レビンやZに続いて、昭和世代にはグッとくるのがマークIIやチェイサーでしょう。こちらもトヨタ系列の自動車学校による作品で、1台目は当時の大人気ハイソカー、90系マークIIをご紹介しましょう。「Jジェット90」と名付けられたカスタムカーは、フェンダーやタイヤを見ればお分かりの通りドリフトマシン。戦闘機風のペイントは、リヤタイヤが巻き上げるタイヤスモークをジェットエンジンの白煙に見立てたという抜群のセンス!
そして、もう1台が、1978年モデルのチェイサーを昭和テイスト満載でカスタムした「美しい野生チェイサー」。こちらのネーミングは当時のキャッチコピーそのものですが、車高を当時のカスタムセオリーどおりひたひたに下げ、またエンジンを現代の路上でもカリカリ走ってくれるようレストア。
その仕上がりはすでにプロフェッショナルレベルで、中古車店に並んでいたら秒で売れそうなもの。旧車マニアの心を鷲掴みするようなセンスだけでなく、技術の確かさも感じられる2台でした。
日産愛知自動車大学校 セレナもくもくキャンパー
カスタムカーの神髄はなにもスポーツカーにとどまるものではありません。馴染みやすいファミリーカーやSUVも、自動車好きな学生の手にかかれば驚くようなカスタムが完成するというサンプルがこちら!
「セレナもくもくキャンパー」と名付けられ、フロントまわりのフルカスタムに加え、左右のドアを跳ね上げ式に改造。さらには室内も完全キャンパー仕様という1台。とにかく、実車の出来栄えは驚くほど自然な仕上がりで、セレナのカタログに載っていても不思議じゃないほど。
ボンネットの新造をはじめ、フェンダーのパテ埋め、そして全体の塗装まで製作期間は2.5ヵ月、実稼働52日というデータ、時間がかかることで有名なイタリアのカロッツェリアに教えてあげたいくらいです。
また、ボンネットやフロントバンパーのラプター風ペイント(キズが付きづらいもの)や、クロカンを意識したタイヤ&アップサスなどディテールの仕上げにも手抜かりが見当たりません。自動車整備・カーボディマスター科という学生さんたちの力作を見る限り、日本のクルマ業界の将来は明るそうです!