オールシーズンタイヤって「本当に使える」? ヨコハマ「ブルーアース4S AW21」を試したジャーナリストにド直球質問をぶつけた

2022.12.12 07:00
ドライもウェットもスノーもしっかり走れるオールシーズンタイヤ
  日本ではここ数年、冬を前にするとオールシーズンタイヤがクローズアップされるようになりました。欧米では比較的ポピュラーな、夏タイヤとしても冬タイヤとしても機能してくれる、季節にかかわらず使えるタイヤ。一度でも試してみるとその有用性がはっきりと理解できるのですが、未体験の人はちょっと懐疑的な気持ちになるところがあるのかも知れません。
  そこでオールシーズンタイヤに関する皆さんの率直な疑問を、自動車ジャーナリストの嶋田智之さんに訊ねてみることにしました。
 編集部:オールシーズンタイヤって、普通のタイヤとどう違うんですか?
 嶋田:その呼ばれ方からも察せられると思いますが、シーズンを問わず使えるタイヤです。普段は夏タイヤと同じように使えて、雪が降っても走れる冬タイヤの領域もカバーできるタイヤ、と思っていただいていいでしょう。
  サーキットやワインディングロードなどのドライ路面でハイパフォーマンスタイヤのような強力な食いつきを見せてくれるわけではありませんし、凍結路や新雪が深く積もった場所でスタッドレスタイヤ並みの性能を発揮してくれるわけでもありませんが、乾いた路面も濡れた路面も、雪道でさえも結構しっかり走れます。もちろんすべての路面環境において注意深く走るべき、というのは大前提ですが。
 編集部:積雪が多い地域に住んでるのならオールシーズンタイヤでも問題はないですか?
 嶋田:推奨はしません。また、タイヤの販売店のスタッフの方も同じことをおっしゃることでしょう。たくさん雪が降る地域の方は、冬には雪道に特化して開発されたスタッドレスタイヤを履くことを強くオススメします。というのも、そもそもオールシーズンタイヤは、簡単にいってしまえば「普段は雪の降らないエリアのドライバーが年に何度か雪に見舞われたときの安全性を飛躍的に高めるタイヤ」として開発されてるようなもの。
  たとえば東京で雪が降ったときなど、予報が出ていたというのに夏タイヤのまま走ってスタックする人も少なくなく、交通は大混乱を起こします。もちろん降雪の程度にもよりますが、そんなときでもオールシーズンタイヤを履いていれば、スタックする可能性をかなりゼロに近づけられます。
  オールシーズンタイヤの雪道での性能は年々向上していますが、基本、そういうものだと思っていただくのがいいでしょう。
 編集部:普通の夏タイヤと較べてコストが高いように思うのですが?
 嶋田:一般的な夏タイヤの売価と比較すると、高価に感じることもあるかと思います。が、降雪地帯でもなければ滅多に使わないスタッドレスタイヤをもう1セット用意することを考えたら、いかがでしょう? タイヤの組み替えや交換、スタッドレスタイヤの保管サービスを利用している場合には保管料。そうした諸々の費用も省けます。コストは大幅に安上がりになると思いませんか?
  また、外したタイヤの保管に悩む必要もないので、気持ちもずいぶん軽くなるはずです。オールシーズンタイヤには、メリットがたくさんあるのです。
 編集部:オールシーズンタイヤは走行音がうるさいって本当ですか?
 嶋田:つい最近、ヨコハマの“ブルーアース4S AW21”というオールシーズンタイヤをテストしてきましたので、ここから先はそのときの印象をまじえながら進めていきたいと思います。確かにオールシーズンタイヤは、一般的な夏タイヤと較べて走行音が大きいといわれがちです。
  が、ブルーアース4S AW21は、都内の一般道でも雪道めがけて走っていった高速道路でも、意外なほどに静かでした。あれ? これってタイヤを履き替えてるんだよね? と、編集スタッフに確認してしまったほど。
  雪道を目指しての移動だったので当たり前ですが、じつはこのとき、別のブランドのオールシーズンタイヤを履いたクルマが同行していたので乗り較べてみたのですが、ブルーアース4S AW21は、はっきりと違いがわかるくらい静かでした。
  世の中にはこれより走行音が耳障りな夏タイヤだってあるのです。おそらく何も知らされずに走り出していたら、普通の夏タイヤだと思えたことでしょう。
 編集部:まっすぐ走らない、曲がり方がだらしない、と聞いたことがあるのですが……?
 嶋田:オールシーズンタイヤからそうした印象を感じられた時代というのが、確かにあったかのかも知れません。けれど、現在のオールシーズンタイヤには、そのあたりの性能に不満を覚えるようなものはあまり多くありません。
  ブルーアース4S AW21に関していうならば、まったく問題なしのレベルでした。高速道路の巡航はもちろん、追い越しをかけるときの一段階速いスピードでも、まったくリラックスしたまま走っていられます。
  路面が荒れてる場所にさしかかっても、姿勢が乱されることは少なく、またそんなときにも望外に乗り心地がよかったのです。乾いたワインディングロードでも、印象のよさは変わらず。しっかりとグリップして、きっちりと曲がってくれます。
  さすがにスポーツタイヤと較べればジワジワと滑り出す速度域は低めですが、その動きはちゃんと伝わってきてわかりやすいし、その後のコントロールもしやすく、ちょっとばかりスポーティに走りたい気持ちに応えてくれる懐の深さも見せてくれます。
  また、あらゆる局面で、スタッドレスタイヤでは感じがちなタイヤが路面と接するあたりでクニャクニャするようなフィーリングを感じることはまったくありませんでした。ますます一般的な夏タイヤを履いてるような気分にさせられたものでした。
スノーフレークマーク付きなら冬用タイヤ規制があっても走行OK
 編集部:雪道では本当にちゃんと走れるのですか?
 嶋田:オールシーズンタイヤには、サイドに“M+S”というマークが刻まれたものと、その脇に山のかたちと雪の結晶のかたちを組み合わせたスノーフレークマークというものが刻まれたものが存在します。
  M+Sはマッド+スノーの意味で、一般的な夏タイヤと較べれば雪道でも優れていますよ、くらいのもの。そしてスノーフレークマークは、ASTM(米国試験材料協会)という世界最大級の規格設定機関が定める諸条件をクリアしたものだけが提げることを許されたマークで、つまりは雪道においても十分な性能を発揮できるタイヤとして認証されている証です。
  このマークがついているタイヤは、高速道路の冬用タイヤ規制がかかってる区間でも通行することが可能です。ブルーアース4S AW21にも、もちろんスノーフレークマークが刻まれていますので、臆することなく積雪地帯の山へと向かう峠道へと滑り込みました。
  最初は雪解け水によるウエット路でした。ここでは普通の夏タイヤと何ひとつ変わらない安定っぷり。次第に足もとはシャーベット状へと変わり、さらに登っていくと路面はアスファルトとシャーベットと圧雪が入り混じった路面へと装いを変化させていきましたが、排水性と排雪性に優れてるのでしょう、無謀な運転を試みない限りはきっちりとしたグリップを見せてくれました。安心感がとても高かったのです。
  その印象は、完全な雪道になってからも変わらず。コーナーでも登り坂でも、嫌な汗をかくことなど一度もなかったほどスムースに、そしてイージーに走ることができました。
  誰もいない広い駐車場でいろいろと試してみたのですが、思い切りブレーキペダルを踏んでみてもABSを作動させつつしっかりと速度を落としてくれましたし、さほど深くなければ雪が踏みしめられていないところでもなにごともなく走れました。雪道もちゃんと走れるか? という問いには、はっきりと頷くことでできますよ。
  ただし、オールシーズンタイヤは、凍結路に関しては得意分野とはいえません。都市部であっても雪が降った翌朝の凍結には最大限の注意を払うべきですし、路面のすべてが雪と氷とシャーベットなんてことになりかねない季節の積雪地帯に突入するには、やっぱり荷が重いです。その場合には迷わずスタッドレスタイヤをチョイスするべきでしょう。
  最後に、ごく個人な想いを少々。時代が進んで、オールシーズンタイヤもどんどん進化を重ねています。今回はヨコハマのブルーアース4S AW21を引き合いに出してお話を進めましたが、単に“転ばぬ先の杖”というのにとどまらない実力の高さに、正直なところ感服させられました。
  雪の降る可能性がある季節に、都内を走るクルマのすべてがこうしたタイヤを履いていれば、クラッシュやスタックに見舞われる車両が減って、悲しい想いをする人も少なくなるし、地獄のような渋滞に巻き込まれる可能性もかなり減らせるのに……と思います。
  僕は今、趣味のクルマしか所有してないのでそもそも雪が降りそうなときに乗って出ることもないのですが、暮らしの日常的な相棒といえるクルマを手に入れたら間違いなくオールシーズンタイヤだな、とあらためて思わされました。今、僕の中ではブルーアース4S AW21が候補の最右翼です。

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