1台売ったらテスラはトヨタの8倍儲かるはホント? 自動車業界を騒がせるテスラの正体とは

2022.12.07 10:00
この記事をまとめると
■テスラは2003年に設立されて以来まだ20年程度という自動車業界では新興メーカーだ
■新興メーカーでありながらトヨタと比較して1台あたりで8倍ほど高い利益を出している
■パーツの共通化やシンプルな構成などが高い利益率に繋がっていると考えられている
新興メーカーがトヨタ以上の利益を出せる納得の理由
  日本経済新聞が2022年11月7日、「トヨタとテスラ、『1台の格差』8倍に 初の純利益逆転」と題する記事を掲載した。
  その内容は、2022年7〜9月期決算で、トヨタの連結純利益4342億円をテスラが4542億円で抜いたことをベースに、販売総数ではトヨタがテスラより8倍多いのだから、1台あたりの利益を単純計算すれば、テスラはトヨタより8倍高いと指摘したのだ。
  こうした単純計算での2社比較に対しては、さまざまな意見があるだろう。ただし、少なくともテスラはトヨタよりもかなり効率が良い商売をしていることは確かである。
  では、その背景に何があるのか?
  テスラは事業内容の詳細について定常的に情報開示していないため、トヨタとテスラの事業の差を明確に示すことは難しい。
  そこで、あくまでも一般論として、トヨタとテスラの事業の進め方の違いについて紹介してみたい。ちなみに、筆者はテスラが2003年に設立されて以来、その後テスラが紆余曲折を経て現在の形に至るまでの経緯をアメリカで定常的に詳しく見てきている。
  まず最初に言えるのは、テスラにこれまで直接携わってきた多くの人たちにとって、また自動車産業界の全ての人たちにとって、テスラがこれほど短期間に急成長し、現在の企業体系に”大化け”することは極めて大きな驚きだと思う。
  その上で、テスラがこれまで何をしてきたかだが、それは「ユーザーのニーズに対して、必要十分な”ほどよい”こと」なのだと思う。
  つまり、商品の先進性を突き詰め過ぎるのではなく、また奇抜なことをするのでもなく、EV(電気自動車)を求める人たちからの声をそのまま、商品に反映されているだけだと思う。それを、イーロン・マスク氏が上手く広報している。
  これが結果的に、トヨタなど既存の自動車メーカーの商売の仕組みと違うことになった、と言えるのではないだろうか。
構成部品が少なく各車における部品の共通性が高いのがメリット
  具体的には、まず製品(商品)企画としては、車種展開の大きな差だ。言わずもがな、テスラは「モデルS」「モデルX」、「モデル3」、そして「モデルY」という4車種しかなく、部品の共通性も極めて高い。 一方、トヨタの車種はグローバルで極めて多く、車体のTNGAなどでの部品の共通性はあるものの、テスラと比べると圧倒的に部品の共通性は低く、部品の調達コストは必然的に高くなる。
  また、調達する部品点数もトヨタはテスラに比べて圧倒的に多い。ガソリン車やハイブリッド車などに比べて、EVの構成部品はかなり少なく、トヨタはまだEV車種展開が少ない。
  そのうえで、トヨタは系列部品メーカーが多く、それら各社関係性を維持するためにさまざまなコストもかかるが、テスラは電池など一部の部品を除いてテスラが直接相手の経営に関与するような部品メーカーは、ほぼない。
  そして、販売網については、トヨタは日本の一部で直接資本の販売会社を持つが、その他がいわゆる地場資本の企業だ。それらに対して、トヨタは新車を製造して卸売り販売を行う。一方、テスラは基本的にユーザーに対してテスラからの直接販売の体系を取るため、販売における中間マージンが必要ない。
  こうした中、2010年代後半からのESG投資(財務情報だけではなく、環境、社会性、ガバナンスを重視した投資)というグローバルでの大嵐が吹き荒れて、テスラの事業を大きく後押ししたのだ。
  以上、簡単だが、一般論としてトヨタとテスラの商売の仕組みの違いを紹介した。

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