東京モーターショーはもはや「価値」を失った!? 「ジャパンモビリティショー」への名称変更は何を意味するのか?

2022.12.02 20:00
この記事をまとめると
■東京モーターショーが2023年開催から「ジャパンモビリティショー」に名称変更
■先進国のモーターショーは勢いがなくなってきている
■世界からの注目度が薄れてしまっているのが近年の東京モーターショーの現状
今やモーターショーの絶対的人気がなくなっている
  東京モーターショーが、2023年開催から“ジャパンモビリティショー”として装いも新たに再出発を図ることになった。
  かつては、IAA(国際モーターショー/通称:フランクフルトショー/現ミュンヘンショー)、NAIAS(北米国際オートショー/通称:デトロイトショー)そして東京モーターショーは、“世界三大モーターショー”などともいわれたが、いずれも近年は衰退の一途をたどっていると表現するのがふさわしい状況となっている。
  近年ではドイツを含む西ヨーロッパ諸国では気候変動問題が大きく取り上げられており、直近では、自らの主張を行うために美術館で名画を汚したり、空港に立ち入って騒ぎを起こすなど、行動がエスカレートしているようにも見える。フランクフルト開催であった最後(2019年)とその前の回あたりのIAAでは、会場入口近くで環境保護団体がシュプレヒコールをあげていたり、開催中の会場内で展示車両の天井などにのぼり自動車メーカーを批判するような言動を発するなど、かなり荒れた状況のなかで開催されている。従来のような形式での自動車ショーの開催では出展メーカーにとって、販売促進どころか参加することがリスクの高いものとなった。
  デトロイトショーはかつてビッグ3と呼ばれたアメリカンブランドの凋落とともに、ショーの情報発信力が弱まり、もともとデトロイトとその近郊の人口も少なく、集客にも問題があったことから、近年では出展をとりやめるメーカーが続出している。直近の2022年開催では、完成車メーカーはほぼアメリカンブランドのみの出展となっていた。
  東京モーターショーは、まず世界一の自動車市場となったお隣中国で開催される上海や北京そして広州モーターショーなどが台頭し、中国系以外のメーカーの出展も多く、その情報発信力の高さから一気にアジアを代表するモーターショーの地位を事実上奪われてしまった。また日本国内でのクルマに対する消費者の興味が薄れた、つまり“クルマ離れ”も大きく影響しているともいわれ、ショーの衰退が止まらない状況が続いていた。
  筆者が見る限りは先進国開催のオートショーは全般的に勢いを失っているように見える。とくに欧州は前述したように、クルマ(内燃機関車)を“気候変動を起こした要因のひとつ”と捉え敵視するグループが台頭しており、前述したとおり、コロナ禍前から抗議活動も活発に行われメーカーもショーへの参加はリスクが高いと見る動きが目立っていたなか、新型コロナウイルス感染拡大が起こり、ショーの開催自体ができないようになり、一気にメーカーのショー離れが加速しているように見える。
モーターショーの目的が明確化されていることが重要
  アメリカでは、デトロイトのような衰退していくオートショーがあるなか、集客力が高く投資家などへのアピールにもなるニューヨークショーや、ZEV(ゼロエミッション車)普及に熱心なカリフォルニア州での開催でZEVの出品などに主軸を置くロサンゼルス・オートショーなどは、ほぼ従来どおりに開催していけるのではないかといわれており、オートショーの“選択と集中”というものが加速してきているのが現状である。
  中国や東南アジアのオートショーは、先進国のオートショーに比べればまだまだパワーがある。その最大の理由はショー会場内で積極的に販売促進活動が行われているからである。各地区から選ばれた多数のセールスマンが会場におり、自発的にショー会場を訪れる人だけでなく、会場にいるセールスマンが馴染み客や購入見込み客を会場に呼び込んでいるので、来場者数もまだまだ多い。各メーカーブースには広大な商談スースと臨時のファイナンス会社の与信コーナーがあり、その場で契約ができる準備が整っている。ショー会期中に限った特別値引きなども用意されており、会場に人が集まりやすい環境が整っているのである。主催者は来場者数も気になるところだが、会期中の成約台数もかなり気にしているのである。
  またあるショーでは、連日地元の有名芸能人のリサイタルなどを行っており、クルマにそれほど興味のない人も会場にきてもらえるような仕掛けも用意されていた。
  ちなみにアメリカでも、地元ディーラーが“オートショー特別価格販売”など会期中だけのキャンペーンを用意して盛り上げをはかっていた。また、アメリカや新興国のオートショーでは、新車の試乗が積極的に行われるケースも目立つ。ディーラーで試乗するよりはしがらみも少なく、試乗車も豊富に用意され、多くのメーカーのモデルを一カ所で試乗できるので、購入希望車種を絞り込むのに大変役立つ。特設コースで性能テストができたり、一般公道で試乗できるなど、その内容はさまざまである。
  つまり、単に“最新モデルや技術が展示してありますよ”だけでは、おそらく新興国でも客足は伸びないのだろう。そこへいく目的やメリットが明確に存在すれば多くの人が足を運ぶはずである。
  東京モーターショーでも、過去には会場にセールスマンが配置され、メーカーブースには商談コーナーも用意されていた。輸入車にいたっては、展示車の即売も行われていた。しかし、日本車が世界的に高い評価を受け、その優れた環境性能や燃費性能に注目を浴びるようになると、トレードショーというよりは見本市という側面の目立つショーとなっていった。しかし、ここ数年は日本車は世界的に高い評価を受け続けているが、注目すべき先端技術がわずかになってきたともいわれている。ある海外ブランドが東京モーターショーへの出展をやめると決めた理由のひとつに、出展しても日本メーカーの展示などから得る情報価値がそれほど高くなくなった一方で、中国のオートショーが情報収集面でもより高くなったというものがあったとも聞く。つまり、ショー会場へ行ってもクルマが買えるわけでもない、しかも世界の注目を浴びるような驚くべき先端技術をたくさん見ることもできなくなってしまったのが、ここ最近の東京モーターショーの現状である。
  世界的にBEV(バッテリー電気自動車)をメインとしたZEV(ゼロエミッション車)がトレンドとなっているなか、日本車はその分野では出遅れているイメージが広く浸透している。そのなかで、ジャパンモビリティショーはどのようにして、世界、いや国内においても新たな注目を集めようとするのか、2023年の開催が楽しみである。

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