児童養護施設の子どもの未来を、社会の大人たちが支える。新時代の社会の在り方へ、HUG for ALLは挑戦しています。

2022.11.29 15:00
NPO法人HUG for ALLは、「すべての子どもたちに安心できる居場所と生きる力を」という願いをもって、2016年から児童養護施設の子どもたちのまなび支援をしている団体です。


このストーリーではHUG for ALL代表理事の村上綾野が、私たちの活動内容と今後の展望についてお話をします。
全国で約2万5千人が児童養護施設でくらしている
児童養護施設でくらしているのは、さまざまな事情で家族と離れてくらす子どもです。全国に600か所ある施設で、約2万5千人の子どもたちが生活しています(※)。


※厚生労働省子ども家庭局家庭福祉課による
https://www.mhlw.go.jp/content/000833294.pdf


主な入所理由は、虐待や親の精神疾患、経済的困窮などです。過去の苦しい体験から、自分の可能性を信じられなくなってしまい、自分の未来をあきらめてしまう子どももいます。


進学率の低さ、進学後の中退率の高さや、就労後の1年以内の離職率の高さなど、施設を出たあとも、厳しい生活に陥りがちな現実もあります。


さらに、将来的にも親や家族の支えが望めないケースも多く、児童養護施設を出た後に孤立し、社会からドロップアウトしてしまう若者が少なくないのが現状です。
子どもたちに、未来を生きる力を
実は10年ほど前まで、私は「児童養護施設」という存在を知りませんでした。知るきっかけになったのは2012年。Teach for Japanの松田悠介さんの講演会で「日本の子どもの7人に1人が貧困」という話を聞いたことです。


そこで初めて厳しい家庭環境にある子どもの存在を知り、これまで知らなかったことに猛烈な恥ずかしさを感じました。そこからさまざまな子ども支援の活動に参加するようになり、2013年に児童養護施設出身の若者の進学支援のボランティアを始めたのです。


活動をしていく中で、児童養護施設を巣立つ若者たちが多くの困難に直面することを知りました。多くの自立支援の団体がある中で、そこにつながることができない若者も一定数いるという話も聞きました。


児童養護施設を退所してから新たにつながった人に頼ることは、若者たちにとって確かに難しいことなのかもしれない。だったら、施設にいる間に子どもたちとつながり、将来に備えることはできないだろうか。そんな思いがだんだん強くなってきて、施設の中の子どもたちの支援をする団体として活動をスタートしたのがHUG for ALLです。


児童養護施設でくらす子どもたちは、みんなそれぞれつらい過去を持っています。施設に入所する子どもの約7割は虐待を受けていたという調査結果もあります。虐待を受けていなくても、親との離死別など、施設に入所するに至る様々な理由があり、みんなそれぞれの心の傷を抱えています。


それでも、子どもたちは毎日懸命に、前を向いて生きています。学校に通い、成績や友人関係に悩み、日々学んだり遊んだりしながら、成長しています。大きな心の傷を抱えながら、日々の生活に向き合うことは、大きな苦しみを伴うこともあると思います。それを乗り越えようとしている子どもたちは、本当に強くて、たくましい存在です。


それなのに、過去の苦しい体験や、頼る人がいない状況のせいで、児童養護施設を退所したあとの人生に負の影響が出てしまう。そんな今の社会を、学びとつながりの力で変えていきたい。それがHUG for ALLの目指す未来です。
3つの「クエストプログラム」
HUG for ALLでは、子どもたちの「生きる力」を育むために、年代別の3つの「クエストプログラム」を提供しています。施設の状況に合わせて、オンラインと訪問を組み合わせ、月に1回、各プログラムを実施しています。
この「クエストプログラム」で私たちが大切にしているのは、対話や体験を通して、これからの社会を「自分らしく」生きる力を育むことです。


小学生の間は、「まなびクエスト」と「あそびクエスト」で、子どもたちの未来に向けた力を育み、強みを発見していきます。
まなびクエストでは、子どもたち一人ひとりに合ったまなびの体験を通して、成功体験を積み重ねて「まなぶ意欲」を育むと共に、大人たちとの対話を通して、自分の考えを伝える練習をしていきます。


あそびクエストでは、アートやサイエンスなどの多様な体験を通して、その子が夢中になるものや、興味関心を示すもの、得意なことや強みを探していきます。
そして、中学生になると「はたちクエスト」のプログラムが始まります(※)。中学生から退所後の25歳くらいまで、約12年間をかけて、自分自身と社会を結び付けて、社会で一人立ちしていくための準備をしていくプログラムです。
※「はたちクエスト」は2022年度からスタートしたプログラムで、現在中1〜高2までの子どもたちにトライアルとして提供しています。施設職員の方々とご相談しながら、子どもたちに必要なプログラムを作りながら、実施しています。今後子どもたちの成長に合わせて、25歳までのプログラムを完成させていく予定です。
複数年にわたり続く、担当者と子どもとの関係性
まなびクエスト・あそびクエスト・はたちクエストを実施するにあたり、土台となっているのが「担当制」という考え方です。


子どもたちを継続的に見守り、その子らしさを大切に育んでいくために、一人の子どもを2名以上のボランティアメンバーが担当し、複数年にわたって関係性を築いていきます。


子どもたちにとって「この人は自分のことをわかってくれている」「昔からずっと見守ってくれている」と感じる存在がいることは、とても心強いことです。月に1回であっても、長く子どもたちとの時間を積み重ねていくことで、親戚のおばさん・おじさんのような、信頼できる存在になっていく。施設を出てからも、25歳を超えて支援対象でなくなっても、個人と個人としての関係性が続いていく。そういうつながりによって、子どもたちが孤独や孤立に苦しむことがない未来をつくっていきたいと思っています。


HUG for ALLのボランティアのほとんどが社会で自立している大人たちで、企業人として第一線で活躍されている方も多くいます。そんな方々との接点を持つことは、子どもたちにとっては新しいロールモデルの発見にもなると考えています。
もちろん、子どもたちにとって、ボランティアのメンバーは最初は「知らない大人たち」です。関係性を築くのに時間がかかる場合もありますが、年月を重ねることでだんだんと関係性は深まっていきます。


最初はタオルで顔を覆って「あっち行って」「もう来ないで」と、半年以上にわたってボランティアメンバーと話そうともしない子もいました。当時小学校1年生だったその子に担当のボランティアメンバーが5年間寄り添い続けた結果、今では彼女のお誕生日の日には「何か言うこと忘れてない?」とお祝いメッセージのリクエストが来るほどの関係になりました。


一人ひとりのペースに合わせて、ゆっくりと関係性を築いていくこと。それが子どもたちの安心感や信頼感につながっていくのではないかなと思います。
児童養護施設を「卒業したあと」の支援のしくみづくり
2016年に1施設で小学生10名を対象に始めた活動も、現在は2施設で幼児〜高校生までの39名を対象とするようになりました。


現在関わっている子どもたちの最年長世代は、現在高校2年生。あと1年と少しで施設を退所する予定です。これまでは「児童養護施設の中にいる子どもたち」を支える活動を進めてきましたが、次は「施設を出たあとの子どもたち」を支える活動も進めていくことになります。


施設の中にいる間に、施設職員の方々と社会の大人たちが協力して、子どもたちの生きる力を育み、未来につながる関係性を育んでいく。施設を出たあとは、大人たちが子どもたちを見守りながら、嬉しい時に一緒に喜び、困ったときに手を差し伸べる。


私たちが目指すこの形は、大人たちがみんなで子どもたちを社会に受け入れ見守っていく、新しいアフターケアのしくみとなると思います。まずは現在支援している2つの施設で、このしくみをつくっていくこと。それが当面の私たちの目標です。
HUG for ALLで出会った子どもたち
これまで6年間の活動を通して、合計で50名以上の子どもと出会ってきました。一人ひとりそれぞれ違う個性を持っていて、とても素敵な子どもたちです。


もちろんみんなそれぞれの背景があって児童養護施設でくらしていますが、私たちが接する中で、それを意識することはほとんどありません。もちろん大人側の配慮は必要ですが、子どもたち自身はいろんな事情を乗り越えて、前を向いていつも笑顔で過ごしています。


そんな彼らは「かわいそうな子どもたち」ではなく、これからの未来を担う「希望の光」なのだと思います。


HUG for ALLは「かわいそうな子どもたち」を支援する団体ではありません。次世代を支える子どもたちの可能性を伸ばし、それぞれが自分自身の力を発揮して生きていくことができるように、支えていく団体だと考えています。


彼らの未来には無限の可能性が広がっています。活動開始当初小2だった子が中2になり、小5だった子は高2になりました。みんなこの6年で大きく成長し、それぞれの年代に応じた形で自分自身のこと、将来のことを考え始めています。


エンジニア・大工・保育士・美容師・デザイナー・飼育員・経営者など、子どもたちが描く自分の未来は本当に様々です。彼らはこれから何にだってなれるし、どんな道だって選んでいける。彼らを支える方法は、きっとそれぞれ違うと思います。まずは、一人ひとりにしっかりと寄り添いながら、子どもたちを支えるために必要なことを都度考え、実行していく。その繰り返しの中で、徐々に「多くの信頼できる大人たちで子どもたちを見守り、支える社会」を作っていきたいと思います。
さいごに
私たちが目指すのは「たくさんの信頼できる大人たちで、子どもたちを支える未来」です。日本中の信頼できる大人同士がつながり、子どもたちを見守り、将来ピンチになったときに手を差し伸べられるような、そんなあたたかいコミュニティをつくっていきたいと考えています。


多くの方に子どもたちのことを知っていただき、私たちの活動を応援いただきたいという想いで、noteにて定期的に子どもたちとの活動の様子を配信しています。多くのかたに読んでいただけると嬉しいです。
そして、HUG for ALLは2022年12月6日に団体設立から5周年を迎えます。5周年を記念して、HUG for ALLの1年間の活動を振り返るオンラインイベント「HUG Meet」を、12月3日(土)の午後に開催します。


当日は活動に参加しているボランティアメンバーや、支援先施設の職員の方々にもご参加いただき、活動についての感想などを伺いながら、アットホームに進めて行きたいと考えています。


はじめましての方も、そうでない方も、どなたでもご参加いただけます。もしよろしければぜひお気軽にご参加ください。途中参加・耳だけ参加も大歓迎です。たくさんの方にご参加いただけるとうれしいです。皆様のご参加をお待ちしています!


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 開催概要
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■日程:2022年12月3日(土)14:00~15:30
■会場:オンライン(Zoom)
■参加費:無料チケット / お祝い寄付付チケット(500円・5000円)
■定員:100名程度
■参加方法:下記リンクよりお申し込みをお願いします。

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