レックス復活……もスバルファンは「違うじゃん」! 俺たちが愛した「やりすぎ軽自動車」レックス3代の歴史

2022.11.29 07:00
この記事をまとめると
■スバルのラインアップに「レックス」が復活
■ただし現行レックスはダイハツ・ロッキーのOEM供給車
■この記事では元祖スバル・レックスの魅力を振り返る
スバルの軽自動車「レックス」の歴史を振り返る
  スバルのラインアップに「レックス」の名が30年ぶりに復活。一部スバルファンの間では大きな話題となっている。車名が復活したといっても、ダイハツ・ロッキーのOEM供給車なので、往年のスバル・レックスとはなんの関連性もない。かつてのレックスは軽自動車だったのに、新しいレックスはSUVであるなど、往年のレックスから継承されたものがなさすぎるのを残念がる声が噴出しているが、是非に及ばずといったところ。スバル店で買える小型車が増えたこと自体は歓迎すべき話だ。
  ごく一部からとはいえ、予想以上に多くの不満の声が飛び交ったのは、レックスは今も古参のスバルファンから愛されているからだろう。スバルオリジナルの軽自動車というと、ヴィヴィオやサンバーのほうがはるかに人気があるものの、レックスもまた、スバルらしさに満ち溢れた名車だったのだ。
  スバルオリジナルのレックスの魅力を簡単に振り返ると、まず1972年デビューの初代モデルの斬新さが際立つ。エクステリアは、カウンタックなど当時のスーパーカーでも主流のウェッジシェイプを強調したデザインを採用。当初、ボディは2ドアのみで、当時のラインアップのエントリー層を担う軽自動車でありながら、スタイリッシュさと高性能を追求したスポーツモデルとして生み出されている。
  当時の競合車、スズキのフロンテがスティングレー・ルックを採用するなど、軽自動車にもスポーツ性が求められる時代でもあったが、初代レックスのスポーツ性は群を抜いている。最上級グレードのGSRは、砲弾型ミラーやコンケープ(湾曲型)ダッシュボード、デュアルスポークハンドルなどで内外装を武装。37馬力ソレックスツインバレルキャブレターやスタビライザー付きハードサスペンション採用など、高いスペックでグランドスポーツを強く意識していた。
  もちろん、レックスは日本のモータリゼーションを支えた歴史的な名車、のちに機械遺産として認定されるスバル360の系譜を引き継ぐスバルの主力の軽自動車だ。稀代の名車スバル360も、1960年代後半になると後発の軽自動車との競合に苦戦を強いられるようになり、その対策を盛り込んだ次世代モデルのR-2は、「運転のしやすいクルマづくりのために工夫の限りを尽くす」などと、今のキャッチコピーにも通じる信念を表現。
  R-2は内装の豪華装備にも力を入れ、「ハイバックシート」という見た目のゴージャス感とホールド性の高さを両立させたシートを強く訴求。内外装がかなりスポーティで豪華な雰囲気のグレードも設定されるも、わずか3年で次世代レックスへ移行したわけだが、初代レックスは時代を先駆けて一気にスポーツ路線を強めることになる。
  競合車がFFを採用して対抗してくるなか、あくまで軽自動車ではRRにこだわり、ホイールベースの延長などでFFに負けない居住性を確保。逆反りリヤウインドウがRRとしてはかなり広い室内をもたらした。キャビン後方に配置された水冷エンジンと電動ファンは騒音が少なく、スバル独自のアイドル・サイレンス・バルフなどの採用でトップレベルの静粛性を実現している。室内空調は頭寒足熱を強く意識したもので、無段階調節レバー付きであるなど、細部の使い勝手も凝っていた。
  ボディラインアップは年々豊富になり、オートクラッチ付きも追加。1975年には昭和51年排ガス規制を軽自動車で初めて適合するなど、エコ性能面でも時代をリードしていたのだ。
3代目レックスはモータースポーツの場に進出!
  そんな力作も、スズキ・アルトやダイハツ・ミラなど実用性重視の軽自動車の人気が高まる時代に合わせ、1981年発売の2代目モデルでは、一般的なFFレイアウトの実用ハッチバックスタイルに変更。当時のレオーネと同じく、市場に迎合した凡庸なイメージがつきまとってしまったが、当時の資料をみると、FFと4WDのパイオニアならではの軽自動車であることを強く訴求しており、当時の競合車とはひと味もふた味も違う孤高の存在だったことが伺える。
  室内長はほかのFF軽自動車を上まわるクラス最長を実現。身長180cmの大柄な体格でも快適に過ごせる運転環境や、フロア全面に敷き詰められた二重構造、一体成型のボード付きサイレンサーによる水準を超えた静粛設計、フロントゼロスクラブの4輪独立懸架により女性でも扱いやすい軽いステアリングなど、マニア受けする訴求ポイントに溢れている。この時代でも「0次安全」をしっかりアピールしているし、4WD仕様の追加時には、豪雪や砂漠を激走するシーンで走破性の高さを演出。カタログにはパワートレイン&駆動系の写真を大きく掲載し、メカニズム面の優秀さをアピールするところもじつにスバルらしい。
「ビッグミニ」と自ら表現したとおり、荷室容積は最大で600リットルもあるので、キャンプなどのアウトドアレジャーにも対応。2代目レックスは、アクティブライフ向けRV車の先駆け的な存在でもあった。
  1986年登場の3代目モデルは、ツインビスカス式フルタイムAWDや、ジャスティに初めて搭載したばかりのE.CVTを採用。ハイパワースポーツグレードはターボではなくスーパーチャージャーを採用するなど、やはり他銘とは違うメカニズムが際立つ。マイナーチェンジで2気筒から3気筒ではなく4気筒を搭載したところも極めて独創的だ。もちろん、サスペンションは4輪独立懸架式。さらに電動オープントップ仕様も追加するなど、豪華さの充実にも抜かりはなかった。
  また、3代目モデルではモータースポーツの場で走りを磨く意識が強められたのも大きな特徴だ。栃木県のスバル研究実験センター(通称SKC)はまだなく、走行テストを行える環境が整っていなかったので、気候や路面状況が過酷な海外での競技参戦を重視。
「小関オヤブン」の名で知られるスバルモータースポーツの礎を築いた小関典幸氏の発案により、3代目レックスは過酷なヒルクライムとして知られるコロラド州のパイクスピークヒルクライムレースに参戦している。レックスの後継モデルであるヴィヴィオは、WRCサファリラリーでクラス優勝を遂げたことで伝説となったが、その礎はレックス時代に培われたのだ。
  スバル360やヴィヴィオという、つねに不朽の名車として称えられる傑作軽自動車のイメージが強烈すぎて、今の時代にあってはいまいち印象が薄いレックス。しかし、よく見るといずれもスバルらしさが満載の力作ぞろいで、20年3世代にわたり個性的なベーシックカーとして愛されたのだった。

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